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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科66巻10号

2012年10月発行

雑誌目次

特集 第65回日本臨床眼科学会講演集(8) 原著

小児重症筋無力症の症状と治療成績

著者: 出口絵梨子 ,   稲山裕美 ,   石坂真美 ,   江田祥平 ,   初川嘉一 ,   鈴木保宏

ページ範囲:P.1473 - P.1476

要約 目的:小児重症筋無力症の眼科的な臨床症状と治療成績の報告。対象と方法:過去21年間に小児重症筋無力症として当センター小児神経科から紹介された18例を対象とした。男児11例,女児7例で,12例は眼筋病変のみで,6例が眼病変を伴う全身型であった。受診時の年齢は0~12歳で,14例が3歳未満であった。2か月~7年までの経過を追跡した。結果:全18例中17例に眼瞼下垂があった。11例に斜視があり,うち10例は外斜視であった。全身型6例中4例で抗アセチルコリン抗体が陽性であった。眼筋型には副腎皮質ステロイドの全身投与が奏効したが,全身型では他の免疫抑制薬を必要とした。再燃までの期間は,眼筋型よりも全身型が短かった。眼病変に対し外科治療を必要とする症例はなかった。結論:小児重症筋無力症の眼症状は,全例が内科的治療で改善した。

ミトコンドリアDNA点変異を有する3例の非典型的視神経症

著者: 設楽恭子 ,   若倉雅登

ページ範囲:P.1477 - P.1482

要約 背景:Leber遺伝性視神経症では,ミトコンドリアDNA(mtDNA)に点変異があり,mtDNA11778,14484,3460変異が報告されている。目的:既報にないミトコンドリアDNA点変異があり,非典型的な臨床所見を呈する視神経症の報告。症例:1例は女性,2例は男性で,年齢はそれぞれ47,63,29歳である。第1例は1か月前の発症で,矯正視力は左右とも0.3であった。巨大乳頭があり,mtDNA15258変異があった。第2例は,8年前に左眼,1年前に右眼の視力低下があり,矯正視力は右0.05,左0.02で,視神経乳頭が蒼白化していた。右眼の発症時には右眼の乳頭が腫脹し,過蛍光を呈した。mtDNA9041変異があった。第3例には二分脊椎があり,矯正視力は右0.3,左0.6で,中心暗点と視神経萎縮があり,mtDNA15204変異があった。結論:典型的なLeber病とは異なる両眼性の視神経症がある女性1例と男性2例に,それぞれ異なる部位のmtDNA点変異があった。

圧迫性視神経症を呈した甲状腺眼症の3例

著者: 黛豪恭 ,   鹿嶋友敬 ,   秋山英雄 ,   池田史子 ,   山口由美子 ,   岸章冶

ページ範囲:P.1483 - P.1490

要約 目的:甲状腺眼症による圧迫性視神経症に対し,ステロイドパルス療法と放射線療法を行った3症例の報告。対象:3症例とも女性で,年齢は43歳,70歳,76歳である。いずれも甲状腺機能亢進症の治療中に視機能障害が両眼に生じた。全例にメチルプレドニゾロン1,000mgを3日間投与する2コース後に放射線照射を行った。1例は本治療で治癒し,1例は本治療後に再発し,パルス療法の再施行で軽快した。1例は本治療後の再発に対するパルス療法が奏効せずに悪化し,眼窩減圧術が行われた。結論:甲状腺眼症による圧迫性視神経症に対し,ステロイドパルス療法と放射線療法が奏効することがある。再発悪化例には眼窩減圧術が有効であった。

カリフォルニア症候群の7例

著者: 木村徹 ,   武田哲郎 ,   前田訓志 ,   木村格 ,   横山光伸 ,   正化圭介 ,   木村亘 ,   木谷聡

ページ範囲:P.1491 - P.1496

要約 背景:カリフォルニア症候群とは,交通事故後に視機能の障害を訴えるが,裏に経済的な補償を求める非器質的疾患である。目的:カリフォルニア症候群7例の報告。症例:過去12年間に経験した7例12眼を対象とした。男性3例,女性4例で,年齢は30~55歳(平均39歳)である。視覚障害を訴えるが,眼科的に非器質的であること,精神科での診断,諸検査への協力性などを総合的に判断し,カリフォルニア症候群と診断した。初診から1~54か月の経過を追った。結果:視機能障害が全例にあり,7例中5例は両眼性であり,6例10眼では重篤であった。全例で受傷から1週以後に発症し,対光反射に異常がなく,視力,視野,眼位,眼球運動障害などが進行または変動した。6例は検査に協力的で,全例で補償は未解決であった。結論:カリフォルニア症候群が疑われる症例では,対光反射,視機能障害の発症時期と変動,検査への協力性などが診断の手がかりになる。

慢性進行性外眼筋麻痺の口腔粘膜からの遺伝子診断

著者: 鳥居薫子 ,   根岸貴志 ,   細野克博 ,   澤田麻友 ,   彦谷明子 ,   佐藤美保 ,   堀田喜裕

ページ範囲:P.1497 - P.1502

要約 背景:遺伝性進行性外眼筋麻痺ではミトコンドリア遺伝子(mtDNA)の欠失のあることが知られている。目的:非侵襲的に検体が採取できる口腔粘膜からの遺伝性進行性外眼筋麻痺の遺伝子診断の報告。対象と方法:斜視手術を希望して受診した内転障害と眼瞼下垂のある外斜視患者3例を対象とした。2例は男性,1例は女性で,年齢はそれぞれ26,74,71歳である。採取した口腔粘膜からDNAを抽出し,m.4621とm.16449を挟むプライマーを設計し,PCR法で増幅した。欠失が疑われる領域は,PCR法を追加した。結果:症例1の26歳男性に約5kbのミトコンドリア遺伝子の欠失があった。PCR法で正常と異常なバンドがあり,ヘテロプラスミーが疑われ,遺伝性進行性外眼筋麻痺と診断した。この症例には外斜視と眼瞼下垂があり,眼球運動は外転のみが可能であった。他の2症例には欠失はなかった。結論:外斜視と眼瞼下垂があり,外転以外の眼球運動が制限されている男性の口腔粘膜からミトコンドリア遺伝子の検査を行い,遺伝性進行性外眼筋麻痺と診断した。

少年野球選手の視力と動体視力と屈折度数について

著者: 枝川宏 ,   望月誠子 ,   松原正男

ページ範囲:P.1503 - P.1508

要約 目的:少年野球選手の視機能の報告。対象と方法:野球塾に通う8~15歳の29人を対象とした。男子27人,女子2人で,有意な平均年齢は13.2歳である。競技中の状態で,静止視力,動体視力,屈折,眼位,眼球運動,輻湊を測定した。結果:全員が眼位は正位で,眼球運動と輻湊は正常であった。静止視力は58眼中52眼(90%)が1.0以上で,両眼視力は29人中28人(97%)が1.0以上であった。動体視力については視力1.0以上の者では単眼で37.9%であり,0.6と0.8が多かった。両眼では20.7%であり,0.9が多かった。静止視力と動体視力との間には有意な相関があった。静止視力と動体視力は,いずれも年齢と相関しなかった。静止視力は球面度数と相関があり,動体視力と屈折との相関はなかった。結論:少年野球選手のほとんどに屈折異常があるが,多くは矯正されたよい視力で競技をしている。静止視力と動体視力との間には有意な相関がある。

外傷性毛様体解離に対する毛様体縫着術の術中に超音波生体顕微鏡を使用した症例

著者: 田辺芳樹 ,   伊藤勇 ,   恩田秀寿 ,   笹元威宏 ,   小出良平

ページ範囲:P.1509 - P.1514

要約 目的:外傷性毛様体解離に対する毛様体縫着術の術中に超音波生体顕微鏡を使用した症例の報告。症例:4歳男児の右眼に友人が投げた本が当たり受傷した。翌日の矯正視力は右0.6,左1.2で,右眼眼圧は10mmHgであった。隅角検査で下方隅角に隅角後退があった。薬物で治療した。受傷76日後に矯正視力0.5,眼圧6mmHgとなり,低眼圧黄斑症が生じ,外傷性毛様体解離と診断した。その10日後に毛様体縫着術を行った。術中に超音波生体顕微鏡を使い,毛様体解離の位置と術後の毛様体の復位を確認した。手術の179日後に視力は0.9,眼圧14mmHgとなり,低眼圧黄斑症は改善した。結論:毛様体縫着術の術中に超音波生体顕微鏡を使い,毛様体解離の位置を同定し,術後の毛様体の復位を確認できた。

白内障術後のNocardia感染による結膜下膿瘍の1例

著者: 芹澤元子 ,   國重智之 ,   高橋浩

ページ範囲:P.1515 - P.1518

要約 目的:白内障手術後にNocardia属放線菌により球結膜下膿瘍が発症した症例の報告。症例:64歳男性が5週前に近医で右眼の白内障手術を受けた。強角膜切開,超音波乳化吸引術,眼内レンズ挿入が行われ,経過は良好であったという。3週後に充血,眼脂,疼痛が右眼に生じ,その2週後に当科に紹介された。所見と経過:矯正視力は右1.0,左1.2で,右眼に充血と眼脂のほか,手術切開創が離解し,結膜下膿瘍が多発していた。前房には炎症の所見がなく,眼底も正常であった。術後感染症を疑い,4種類の抗菌薬の点眼と,抗真菌薬の点眼と内服を開始した。初診から9日後に手術創から採取した検体からNocardia spp. が培養された。トブラマイシンに感受性があり,これを中心とする治療に切り替えた。初診から14日後に結膜下膿瘍は消退をはじめ,手術切開創は閉鎖し,2か月後に治癒した。結論:白内障術後に,放線菌であるNocardiaによる球結膜下膿瘍が発症することがある。

連載 今月の話題

緑内障手術の勘どころ

著者: 布施昇男

ページ範囲:P.1443 - P.1449

 緑内障手術は,症例の目標眼圧が低い場合,濾過手術が適応となることが多い。濾過手術は術中・術後の合併症が多い手術であり,その濾過量の推測は精密ではなく,濾過胞形成にも個人差が多い術式である。

 濾過手術において大事だと思われるものに,術前のデザイン(切開位置,濾過胞を作る位置),状況,形態に応じた臨機応変さが挙げられる。

網膜剝離ファイトクラブ・Round 12

次世代術者の教育―いま伝えたいこと―その1

著者: 喜多美穂里 ,   木村英也 ,   日下俊次 ,   栗山晶治 ,   斉藤喜博 ,   塚原康友 ,   安原徹

ページ範囲:P.1450 - P.1459

ようこそ,ファイトクラブに!

今回と次回は,ちょっと趣向を変えて,以前から話題になっていた,硝子体手術教育について取り上げてみたいと思います。どう教えたらよいか迷っている指導者のあなた,これから硝子体手術を習おうと思っている次世代術者のあなた,私たちの本音,教えます。さあ,手術教育について,みんなで考えてみましょう。

眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・34

―臨床編:各種眼疾患と生理活性物質とのかかわり―アレルギー性結膜炎

著者: 中澤満

ページ範囲:P.1462 - P.1464

はじめに

 アレルギー性結膜炎には急性炎症である季節性アレルギー性結膜炎と通年性アレルギー性結膜炎,そして慢性炎症であるアトピー性角結膜炎,春季カタルおよび巨大乳頭結膜炎とが知られている。これらの疾患に共通する炎症反応は,前回ご紹介した2型ヘルパーT細胞(Th2)が優位の免疫反応である。Th2は体液性免疫を促進する反応に関与する。これらのアレルギー性結膜炎に共通する体液性免疫の主役をなすのはIgE抗体とIgE抗体の受容体を表面に発現させている肥満細胞であり,さらには活性化された肥満細胞から分泌されるサイトカイン,ケモカインによって誘導される好酸球である。そしてその影響を受けるのは結膜上皮細胞と結膜下の線維芽細胞ということになる。これらの細胞どうしの情報伝達にはもちろん,生理活性物質が多数働いている。

つけよう! 神経眼科力・31

高次視機能障害

著者: 中馬秀樹

ページ範囲:P.1466 - P.1470

 視機能は,光に対する眼の働きのさまざまな要素がうまくかみ合って初めて成立します。われわれ人間の眼は,大脳が最も発達しているため,生態系の頂点に君臨しますが,そのために最も複雑な視覚特性をもっています。したがって,大脳の高次視機能を学習するのも取っ付きにくくなります。しかし,より単純な生活環境や生活様式をもつ,人間以外の生物はその中の一部を使っていますから,その立場になって考えてみると,逆に理解しやすいかもしれません。われわれの中に組み込まれているその中の1つは,動いている物体に対する反応です。つまり,“どこにあるか?”です。生物にとって,動いている物体は,敵か,餌か,つがいになるべきものか,です。したがってその認識は大切で,われわれの大脳の中にも組み込まれています。それが,どこ経路です。

今月の表紙

急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)における眼底自発蛍光

著者: 齊藤沙宝 ,   根木昭

ページ範囲:P.1471 - P.1471

 42歳,男性。左眼視力の低下を自覚し北海道大学病院眼科を初診した。矯正視力は右1.2,左0.4で,前眼部,中間透光体に異常はなく,網膜も検眼鏡的に異常所見はなかった。フルオレセイン蛍光眼底造影では後期で軽度の網膜血管炎様の所見があった。Goldmann視野検査では両眼に約70°×70°の輪状暗点があり,多局所網膜電図では視野異常部位に一致して振幅が低下していた。AZOORと診断されたが,左眼視力が0.01へ低下し中心暗点となったため,ステロイドパルス療法が開始され,ステロイド薬内服は18か月続けられた。治療後早期から視力と視野は著明に改善し,視力は両眼1.5に回復した。発症2年後,網膜アーケード血管に沿って,網膜色素上皮レベルの帯状の萎縮病巣が出現した。初診から5年後の現在まで再発はない。

 眼底自発蛍光は,網膜色素上皮の機能不全で過蛍光,萎縮あるいは消失すると低蛍光を示す。本症例でも萎縮病巣に一致して,左右対称性に低蛍光を示した。この所見は,網膜所見と比較してもより明瞭に観察できた。

書評

ボツリヌス療法アトラス

著者: 有村公良

ページ範囲:P.1521 - P.1521

 日本のボツリヌス治療の草分けであり,第一人者である徳島大学臨床神経科学分野教授の梶龍兒先生の監訳による『ボツリヌス療法アトラス』が発刊された。ボツリヌス療法の実地臨床に役立つ待望の書の登場である。

 これまで数多くのボツリヌス療法の解説書が出版されたが,その内容は対象疾患の解説,ボツリヌストキシンの作用機序・投与法・効果,および予後まで幅広くボツリヌス療法に対する基礎知識を述べたものが中心であった。本書の特徴は『ボツリヌス療法アトラス』というその名の通り,ボツリヌス療法を行う実地の場で,手元に置きながら利用できる,まさに実用的な教科書である。

OCTアトラス

著者: 天野史郎

ページ範囲:P.1542 - P.1542

 京都大学眼科の𠮷村長久教授と板谷正紀准教授の執筆によるOCTアトラスが発行された。光干渉断層計optical coherence tomography(OCT)は1997年に眼底疾患の診断装置として国内に導入され,網膜の3次元構造を簡単に観察できる装置として急速に臨床の場に普及した。その後,ハード,ソフト両面での改良が大幅に進み,現時点での最新鋭のspectral-domain OCTでは深さ分解能5~7μmが実現されている。

 最新鋭のspectral-domain OCTによる画像が多用されている本書では,まずOCT読影の基礎として,細胞層が低反射,線維層や境界が高反射という原則,正常網脈絡膜のOCT像の解説,スペックルノイズと加算平均による除去,アーチファクトなどの事項がわかりやすく解説されている。次いで,各論として,黄斑円孔・黄斑上膜など網膜硝子体界面病変,糖尿病網膜症,網膜血管病変,中心性漿液性脈絡網膜症,加齢黄斑変性,網膜変性症,ぶどう膜炎,病的近視,網膜剝離の各疾患が論じられている。疾患ごとにまず概要としてそれぞれの疾患メカニズム研究のこれまでの歴史が語られ,次いで最新のOCT所見を基にした各疾患の発症機序が詳細に述べられている。そしてそれに続く180超の症例でのOCT像が本書の最大の見せ場である。各症例の病態が経時的に変化していく様子がOCT像,眼底写真,造影写真を用いて詳細に示されている。そして,各疾患における典型例はもちろんのこと,バリエーション例も多数示されている。これらの症例をすべて読んでおけば,臨床で出合う上記疾患におけるほとんどのバリエーション症例を経験したのと同じだけの知識を身につけることができるであろう。

やさしい目で きびしい目で・154

眼科キャリアネット「主体はあなた!」

著者: 宮崎千歌

ページ範囲:P.1523 - P.1523

 大学医学部で学ぶ間,私たちは多額の税金を使っています。人として,自分に投資された税金を世の中に返すまで,働き続けましょう。そのためには,働き続ける環境を探すことが大切です。その際に助けとなる「眼科キャリアネット」を紹介します。

 大学・市中病院がタッグを組んで大学病院・市中病院のオープン化を目指した新たな眼科医キャリア形成システムが眼科キャリアネットです。

臨床報告

下眼瞼に発生した単発性脂腺囊腫の1例

著者: 杉田公洋 ,   小松敏 ,   西井奈々 ,   井戸正史

ページ範囲:P.1527 - P.1529

要約 背景:単発性脂腺囊腫(steatocystoma simplex)は良性の皮下腫瘍で,頻度は小さい。顔面に好発するが,眼瞼に生じた報告は3例しかない。目的:下眼瞼に発生した単発性脂腺囊腫の1症例の報告。症例:16歳女性が右の下眼瞼腫瘤で受診した。1か月前からこの部位に違和感があったという。所見:視診では下眼瞼に病変はなく,触診で腫瘤が存在した。下眼瞼の反転で,瞼結膜円蓋部に境界明瞭な隆起があった。類表皮腫を疑い,腫瘤を摘出した。術中に薄い被膜がみられ,被膜とともに全摘出した。腫瘤の大きさは12mm×9mm×6mmで,病理組織学的に単発性脂腺囊腫と診断された。結論:結膜円蓋部には毛根が存在しないため,脂腺囊腫の発症に毛包の関与はなく,脂腺由来であることが推定される。

乳頭上に生じた巨大な網膜細動脈瘤に対しベバシズマブ硝子体注射が奏効した2例

著者: 吉山慶三 ,   橋本佐和子 ,   田原義久 ,   田原かすみ ,   上野一郎 ,   江内田寛 ,   上野暁史 ,   石橋達朗

ページ範囲:P.1531 - P.1536

要約 目的:硝子体出血で発見された乳頭上の巨大な網膜細動脈瘤にベバシズマブの硝子体内注射が奏効した2症例の報告。症例:症例はいずれも男性で,年齢は77歳と90歳である。両症例とも硝子体出血で受診した。硝子体手術が行われ,術中に乳頭上の巨大な網膜細動脈瘤が発見された。1例では黄斑に及ぶ網膜下出血,他の1例では硝子体出血の再発を繰り返した。両症例にベバシズマブの硝子体注射を行った。両症例とも網膜細動脈瘤が退縮し,再出血はなく,それぞれ0.8と0.5の最終視力を得た。結論:硝子体出血を伴う乳頭上の巨大な網膜細動脈瘤には,ベバシズマブの硝子体注射が奏効することがある。

線維柱帯切除術後の上脈絡膜出血にシリコーンオイルタンポナーデが奏効した2例

著者: 中崎徳子 ,   原田陽介 ,   戸田良太郎 ,   望月英毅 ,   木内良明

ページ範囲:P.1537 - P.1542

要約 目的:線維柱帯切除術後に発症した上脈絡膜出血に強膜切開を行い,血塊を除去したが再発し,シリコーンオイルタンポナーデで治癒した2症例の報告。症例:2症例とも男性で,年齢は66歳と79歳である。1例は先天白内障で乳児期に手術を受け,他の1例はペースメーカを使用中で抗凝固薬を内服していた。両症例とも線維柱帯切除術を受け,1例では翌日,他の1例では9日後の上脈絡膜出血に対して強膜切開が行われた。いずれも上脈絡膜出血が再発し,硝子体手術とシリコーンオイルタンポナーデで出血が吸収された。結論:線維柱帯切除術後に発症した上脈絡膜出血には,強膜切開による出血除去が無効であるときには,硝子体手術とシリコーンオイルタンポナーデが奏効することがある。

マイラゲル®が結膜穿破をきたした1例

著者: 福田宏美 ,   森秀夫

ページ範囲:P.1543 - P.1545

要約 目的:網膜剝離に対する強膜陥凹術で用いられたマイラゲル®が上直筋を断裂して結膜を穿破し,眼表面に脱出した症例の報告。症例:76歳男性が右眼表面の異物で紹介され受診した。19年前に右眼に網膜剝離手術を受け,その直後から上転障害があった。2年前に右上眼瞼に腫脹があり,マイラゲル®が移動してきたことが原因と考えられた。所見:矯正視力は右0.1,左1.2で,右眼は下転していた。瞼裂に亀裂し石灰化したマイラゲル®が露出していた。CT画像での直径は10mmであった。マイラゲル®の除去手術中の所見として,上直筋は確認できなかった。手術のあと右眼の第1眼位は改善し,複視は減少した。結論:マイラゲル®などが眼外に脱出した際には,その早期除去が望ましい。

スペクトラルドメイン光干渉断層計でうっ血乳頭を3次元的に評価できた特発性頭蓋内圧亢進症の1例

著者: 高橋淳一 ,   門正則 ,   水本桂子 ,   静川裕彦

ページ範囲:P.1547 - P.1552

要約 目的:スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)でうっ血乳頭の経過を追った特発性頭蓋内圧亢進症の症例の報告。症例:46歳男性が1か月前からの両眼の変視症で受診した。所見:視力は右1.2,左1.0で,視神経乳頭腫脹が両眼にあった。MRIで頭蓋内に占拠性病変はなかった。脳脊髄圧が300mmH2Oと亢進し,特発性頭蓋内圧亢進症と診断した。SD-OCTによる乳頭の容積は,右5.03mm3,左5.12mm3で,アセタゾラミド内服を行った。5か月後の乳頭容積は,右3.25mm3,左3.39mm3であった。結論:SD-OCTによる乳頭の3次元的検査で,特発性頭蓋内圧亢進症の治療効果を非侵襲的かつ客観的に評価できた。

文庫の窓から

『脾胃論』

著者: 中泉行弘 ,   林尋子 ,   安部郁子

ページ範囲:P.1554 - P.1556

「清明上河図」に描かれた都

 2012年1月,中国・故宮博物院が所蔵する北宋時代の「清明上河図」が日本で公開された。中国が神品と称して国家第一級の宝物とするこの画巻が,国外で展示されるのは初めてのことで,東京国立博物館において開催された「北京故宮博物院200選」の入場者は連日長蛇の列を作ってこの北宋の城市・開封を描いた絵を見学した。

 「清明上河図」には,開封の街の様子が細やかに描き込まれている。開封は賑やかで自由な雰囲気をもつ魅力的な都市であったようだ。この画巻が作られた経緯は謎に包まれているが,金に拉致された徽宗皇帝が昔を懐かしんで開封の街を描かせた,という説もあるそうだ。開封の街は宋から金そしてさらに元のものへと移り変わっていく。

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欧文目次

ページ範囲:P.1441 - P.1441

べらどんな 血管アーケード

著者:

ページ範囲:P.1449 - P.1449

 蛍光眼底造影をするときには,フルオレセインまたはICGを被検者の左腕の正中静脈に静注する。最近では10万回に約1回の頻度でショックが起こる危険があるので,点滴用のカニューレを常置することが多い。

 左腕にするのは検者が右利きだかららしい。被検者は眼底カメラの前に座っているので,左腕のほうが検者には便利なのである。

べらどんな 髄液の出口

著者:

ページ範囲:P.1519 - P.1519

 眼は脳脊髄液(髄液)と密接な関係がある。視神経は視神経鞘との間にある髄液にたっぷり浸っているし,眼圧と脳脊髄圧とはほぼ等しい。側臥位ではあるが,髄液の正常圧180mm水柱を換算すると,約13mmHgになる。

 房水には血液房水関門,髄液には血液髄液関門があることになっている。この関門では限外濾過が行われるので,電解質は通っても,蛋白質のような大きな分子は通過できない。

ことば・ことば・ことば コンマ

ページ範囲:P.1526 - P.1526

 原稿の校正のことでFAXが届き,すぐ出版社に電話で連絡しました。担当者が留守だったので,FAXを送ってくれた若い人にお願いすることにしました。ところがコロン(:)のことをご存じないのです。「チョンチョンのあれです」と説明しましたが,出版関係の仕事をしているのにコロンを知らないとはびっくりしました。

 ところが考えてみると,こちらのほうもコロンやコンマの形はわかっていても,その由来は知らないのです。また,解剖学でcolonといえば「大腸」のことですが,これとコロンとの関係も医学部に入ってからの60年間,まったく気がつかずにいました。

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.1557 - P.1562

投稿規定

ページ範囲:P.1564 - P.1565

希望掲載欄

ページ範囲:P.1566 - P.1566

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1567 - P.1567

アンケート

ページ範囲:P.1568 - P.1568

11号(増刊号)予告

ページ範囲:P.1570 - P.1573

12号(11月号)予告

ページ範囲:P.1575 - P.1575

あとがき

著者: 根木昭

ページ範囲:P.1576 - P.1576

 今年の夏も厳しい暑さでした。原発事故の影響を受け計画停電も懸念されましたがなんとか乗り切れました。この酷暑のなか,第1回眼科サマーキャンプが箱根で開催されました。日本眼科学会,日本眼科医会,眼科啓発会議の主催によるもので約100名の初期研修医,学生が参加しました。このキャンプの目的は近年の眼科専攻医減少に歯止めをかけるため,眼科の現状を正確に伝え,眼科の魅力をアピールすることにあります。産婦人科学会が同様の催しを企画して奏功していることに倣い,眼科も学会を挙げて人材のリクルートに打って出たわけです。実行委員長の井上幸次 鳥取大学教授のもと,「メヂカラお見せしましょう」というテーマで企画されました。生物にとっての眼の重要性,神秘性を知る「メヂカラfundamental」という講義,眼科力を直接体験する「メヂカラencounter」というウェットラボや3D映像,視覚障害疑似体験,眼科の現況を詳しく知る「メヂカラin the present」,再生医学の最先端である「メヂカラin the future」,眼科医の日常生活を知る「メヂカラin the life」などのセッションが組まれ,夜遅くまで交歓の場がにぎわい大変好評でした。眼科のすばらしさが十分に伝わり,このなかから将来の日本の眼科を背負う人材が輩出されることを期待します。

 本号の特集は第65回日本臨床眼科学会講演集の8回目であり,今回で第65回学会原著の掲載が終了します。たくさんのご投稿をありがとうございました。本号が刊行される頃には第66回日本臨床眼科学会が京都で開催されます。今回も皆様方からの多くの原著投稿をお待ちしています。よろしくお願い申し上げます。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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