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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科66巻4号

2012年04月発行

雑誌目次

特集 第65回日本臨床眼科学会講演集(2) 原著

Hughes変法による悪性眼瞼腫瘍の治療

著者: 後藤浩

ページ範囲:P.427 - P.432

要約 目的:眼瞼の悪性腫瘍に対するHughes変法の記述と成績の報告。対象と方法:上または下眼瞼の50%以上の全層切除が必要と判断された12例を対象とした。男性と女性ともに6例で,年齢は60~92歳(平均73歳)である。上眼瞼が4例,下眼瞼が8例で,全例で生検が行われ,脂腺癌10例,基底細胞癌1例,粘表皮癌1例である。腫瘍を切除した後に,瞼板と結膜弁(Hughes flap)および周囲の眼瞼皮膚の伸展皮弁で眼瞼を再建した。4~5週後にflapを切り離し,瞼縁組織をトリミングした。結果:瞼板と結膜弁に血行不全が生じた例はなく,平均18.3か月の観察期間中に再発または転移はなかった。整容的にも良好な結果が得られた。結論:眼瞼の悪性腫瘍に対するHughes変法は,侵襲が小さく,合併症が少ない。下眼瞼だけでなく,上眼瞼の腫瘍にも応用できる。

眼内レンズ縫着術(ab externo法)におけるポケットフラップ埋没法の効果

著者: 松島博之 ,   並木滋人 ,   塙本宰 ,   妹尾正

ページ範囲:P.433 - P.436

要約 目的:眼内レンズ(IOL)縫着術(ab externo法)における手技の簡便化を試みた。対象と方法:対象は,獨協医大病院において水晶体・IOL脱臼のためにIOL縫着術を施行した14例15眼。四角フラップを作製して縫着後にフラップを縫合し糸を埋没したフラップ縫合群7眼と,強膜ポケットを作製しポケット内に縫合糸を埋没したポケットフラップ埋没群8眼について,フラップ作製時間,IOL縫着+フラップ縫合時間,総手術時間を比較した。結果:フラップ作製時間,IOL縫着+フラップ縫合時間とも短縮し,総手術時間も統計学的有意に短縮した。結論:ポケットフラップ埋没法はIOL縫着手技の簡便化に有効である。

水晶体囊内前房内フラッシュ法(BCフラッシュ)―モキシフロキサシン前房内注入変法

著者: 松浦一貴 ,   魚谷竜 ,   井上幸次

ページ範囲:P.437 - P.441

要約 背景:白内障手術中に抗菌薬を前房に投与する従来の方法では,かなりの高濃度を要し,しかも眼内レンズの後方まで抗菌薬が到達しない。目的:150倍モキシフロキサシンで前房と眼内レンズ(IOL)の後方を洗浄し置換する方法の報告。方法:先端を曲げたハイドロ針をサイドポートより挿入し,モキシフロキサシンを1.1ml注入する。IOLの縁を持ち上げ,その後方も灌流させる。豚眼での前房内濃度を測定し,トリアムシノロンを注入して水流動態を観察した。結果:IOL裏を含めた前房内が予定濃度(33μg/ml)の抗菌薬によってほぼ全置換された。結論:BCフラッシュではIOL裏を含めた前房内の洗浄,安定した薬液投与だけでなく手術終了時の再汚染リスクが少ない利点がある。

近赤外ハイパースペクトルイメージング装置を用いたポリープ状脈絡膜血管症の画像化

著者: 村松大弐 ,   山内康行 ,   阿川毅 ,   三嶋真紀 ,   川上摂子 ,   後藤浩 ,   天野優 ,   中野克洋 ,   田中俊輔 ,   中村厚 ,   宗田孝之

ページ範囲:P.443 - P.448

要約 背景:ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の診断にはインドシアニングリーン(ICG)蛍光造影が必要であるが,薬剤アレルギーなどの問題があり,より低侵襲な検査が望まれる。目的:造影剤を使わない近赤外ハイパースペクトル画像化装置を作製し,PCVの検出を試みた結果の報告。対象と方法:PCV 11例11眼を対象とした。男性8例,女性3例で,平均年齢は71歳である。本装置で得られたスペクトルの相対反射率を計算,画像化し,ICG蛍光造影画像と比較した。結果:ポリープのスペクトル反射率は正常部よりも低く,相対反射率も測定光の長波長化に伴って低下した。この特徴を利用して開発した彩色方法では,10眼でICG蛍光画像が示すポリープと彩色部が一致した。結論:近赤外ハイパースペクトル画像化装置はPCVの検出に有望である。

再発を繰り返し治療に苦慮した慢性腎不全患者の急性網膜壊死の1例

著者: 岡本宏美 ,   渡邊一郎 ,   深見光樹 ,   桐生純一

ページ範囲:P.449 - P.452

要約 目的:治療中に再発を頻繁に手術した急性網膜壊死の症例の報告。症例:慢性腎不全があり,11年前から血液透析中の49歳男性が,2週前からの左眼の眼痛で紹介され受診した。右眼は幼少時に外傷で失明していた。所見と経過:左眼の矯正視力は0.2で,前房に炎症所見,下方網膜に白色混濁と裂孔原性網膜剝離があり,急性網膜壊死と診断した。腎不全を考慮し,少量のアシクロビル(2.5mg/kg/日)を投与し,網膜剝離手術を行った。網膜は復位したが,治療開始から32日後に網膜剝離が再発し,手術で復位し,その3週後に急性網膜壊死が再発した。ガンシクロビルの硝子体注射で鎮静化した。さらに4か月後と7か月後の再発も軽快し,発症から1年後の現在,低眼圧ながら0.4の視力を維持している。結論:再発が多発したのは腎不全のために抗ウイルス薬の投与量が低かったためであり,抗ウイルス薬の硝子体注射が奏効した。

Coats病精査を契機に眼底所見から先天性上斜筋麻痺を診断した1例

著者: 馬場高志 ,   石倉涼子 ,   金田周三 ,   山本由紀美 ,   唐下千寿 ,   石田博美 ,   平中裕美 ,   山崎厚志 ,   井上幸次

ページ範囲:P.453 - P.457

要約 目的:Coats病の精査を契機に眼底所見から先天性上斜筋麻痺が診断された症例の報告。症例:8歳男児が右眼視力の低下で受診した。所見:矯正視力は右0.9,左1.5であり,右眼の下鼻側に白斑沈着を伴う網膜剝離があり,Coats病と診断した。眼底写真から右眼の外方回旋があり,上斜筋麻痺と診断した。頭位異常はなかった。左眼遮蔽と右眼への光凝固を行ったが,牽引性網膜剝離が増加した。6か月後に局所バックリングを行い網膜は復位した。右眼の外方回旋は牽引による中心窩偏位で増加した。結論:小児の網膜疾患では,ほかに別の問題があることがあるので注意が必要である。

非典型的な臨床経過を示した重症筋無力症の1例

著者: 佐久間雅史 ,   久保田敏信 ,   廣瀬浩士

ページ範囲:P.459 - P.461

要約 目的:眼球運動障害のみで初発した重症筋無力症の症例の報告。症例:23歳男性が5日前からの複視で受診した。裸眼視力は左右とも1.5で,左眼の上転障害と軽度の外転障害のみがあった。血液検査と画像検査所見には異常がなかった。5週後に右眼に眼瞼下垂が生じ,アイステストが陽性であり,抗アセチルコリン受容体抗体が陽転し,重症筋無力症と診断された。結論:重症筋無力症は眼球運動障害で初発することがある。原因不明の眼球運動障害では,重症筋無力症を鑑別する必要がある。

先天性鼻涙管閉塞症に対するブジー治療法の検討

著者: 松村望 ,   石戸岳仁 ,   平田菜穂子 ,   伊藤竜太 ,   伊藤大藏 ,   井上康

ページ範囲:P.463 - P.466

要約 目的:先天鼻涙管閉塞のブジーによる治療効果と顔面奇形が及ぼす影響の報告。対象と方法:過去3年間に先天鼻涙管閉塞の疑いで受診した120例中,ブジーを行った3歳未満の63例69側を対象とした。男児36例,女児27例で,年齢は3~35か月(平均11.1か月)である。4例7側には顔面奇形があった。結果:ブジーによる成功率は,顔面奇形がある7側中3側(43%),奇形がない62側中60側(97%)で,有意差があった(p=0.001)。顔面奇形がない症例でのブジーを必要とした回数は,13か月未満では平均1.58回,13か月以上では1.60回で,有意差がなかった。12例12側では自然治癒した。結論:先天鼻涙管閉塞のブジーによる治療は,顔面奇形がある症例では成功率が低かった。治療の時期は成功率と施行回数に影響しなかった。先天鼻涙管閉塞には自然治癒例があった。

当院における小児涙道閉塞性疾患の原因と治療成績

著者: 鬼頭勲 ,   廣瀬浩士 ,   伊藤和彦 ,   服部友洋 ,   田邊和子 ,   鶴田奈津子 ,   高山和子 ,   佐久間雅史 ,   辻恭子

ページ範囲:P.467 - P.470

要約 目的:3歳未満の乳幼児の涙道閉塞性疾患についての原因と治療成績の報告。対象:過去3年間に当院を受診した3歳未満の乳幼児165例を検索した。140例が片側性,25例が両側性で,計190側であった。月齢5か月以上の症例にはプロービングを行った。結果:流涙症の原因は,先天性鼻涙管閉塞154側,涙囊下部閉塞11側,涙小管閉塞6側,涙点閉塞6側で,13側では閉塞部位が不明であった。150側は最初のプロービング,20側は2回以上のプロービング,13側は非侵襲的に,2側はシリコーンチューブ涙道形成で治癒した。結論:3歳未満の乳幼児の涙道閉塞は,涙点閉塞を除き,生後2年以内に適切なプロービングをすることで治癒する可能性が高い。

獨協医大式滑車型マイボーム腺鑷子が有効であった涙小管炎の1例

著者: 緒方希 ,   安倍紘子 ,   ジェーンファン ,   内尾英一

ページ範囲:P.471 - P.474

要約 目的:涙小管炎に対し滑車型マイボーム腺鑷子を使って菌石の排出に成功した症例の報告。症例:80歳女性が7か月前からの右眼の目頭の疼痛と腫脹で受診した。同様の病変は3年前から悪化と寛解を繰り返していた。所見:右眼の涙点下に腫脹と硬結があり,その他に異常所見はなかった。CTで硬結部に15mm×10mm大の低信号の結節性病変があった。涙小管炎と診断した。獨協医大式滑車型マイボーム腺鑷子で多数の菌石が容易に排出された。菌石の嫌気培養で,Actinomyces israeliiPeptostreptococcusが検出された。病状は軽快し,以後1年後の現在まで再発はない。結論:陳旧化した涙小管炎の涙小管内に多数の菌石が存在し,鑷子による菌石の除去で治癒が得られた。

肺腺癌の脈絡膜転移に全身化学療法を施行し視力の改善が得られた1例

著者: 三條さなえ ,   渡邉洋一郎 ,   稲崎紘 ,   竹前久美 ,   光武智子 ,   小林志乃ぶ ,   井上麻衣子 ,   山根真 ,   荒川明 ,   門之園一明 ,   金子明博

ページ範囲:P.475 - P.479

要約 目的:肺腺癌の脈絡膜転移に対し,全身化学療法で視力が改善した症例の報告。症例:60歳女性が左眼視力低下で受診した。3か月前から咳,痰,頸部腫瘤があり,肺癌が疑われていた。所見と経過:矯正視力は右1.2,左0.4で,左眼の乳頭から上方に3.5乳頭径大の白色の隆起があり,乳頭鼻側に4乳頭径大の漿液性網膜剝離があった。全身検査で肺腺癌と肝,骨,リンパ節への転移があり,stage Ⅳと判定された。2か月間のTS-1®の経口投与は原病巣には無効で,カルボプラチンとパクリタキセルに切り替えた。2か月後に肺病変は縮小し,網膜剝離が消失し,視力は0.8に回復した。治療開始から14か月後の現在まで経過は良好である。結論:肺腺癌の脈絡膜転移に対し,全身化学療法が原発巣と眼転移巣の双方に奏効した。

視覚障害者に適合した機能的自立度評価表の改変

著者: 仲泊聡 ,   西田朋美 ,   飛松好子 ,   小林章 ,   吉野由美子 ,   小田浩一

ページ範囲:P.481 - P.485

要約 目的:わが国で広く使用されている日常生活動作評価表である機能的自立度評価表を視覚障害者の評価に適するように改変すること。対象と方法:対象は,視力または視野に障害をもつ155名(平均年齢55.5歳)であった。「自宅や慣れた場所」と「初めての場所」という2つの環境条件での視覚障害者の日常生活動作評価を試みた。結果:両条件における得点が大きく乖離する項目は「歩行による移動」と「階段での移動」であった。また,よいほうの眼の矯正視力と視野は,日常生活動作評価との間に大きな相関がみられた。結論:この結果は,視覚障害の評価基準によいほうの眼の矯正視力と視野を用いることが有効であるということを改めて強く示唆した。

エキシマレーザー治療的角膜切除術の治療成績

著者: 高橋博 ,   帯包敬太郎 ,   阿蘇仁志 ,   斉藤森 ,   飯島裕幸

ページ範囲:P.487 - P.490

要約 目的:エキシマレーザーによる治療的角膜切除術(PTK)の成績の報告。対象と方法:過去10年間に当院でPTKを実施し,1年以上の経過観察ができた51例69眼を対象とした。男性23眼,女性46眼で,PTK実施時の年齢は57~88歳(平均71歳)である。矯正視力,屈折,角膜厚を検索した。結果:原因疾患は,Avellino角膜ジストロフィ45眼,帯状角膜変性20眼,角膜白斑4眼であった。1年後の視力は42眼(61%)で改善した。視力改善は,Avellino角膜ジストロフィと角膜白斑で有意であった。角膜切除後に遠視化が生じた。結論:エキシマレーザーによるPTKは角膜表層疾患の治療に有効である。

眼内レンズ挿入眼での光干渉眼軸測定(OA-1000TM)の精度の検討

著者: 松浦一貴 ,   魚谷竜 ,   井上幸次

ページ範囲:P.491 - P.494

要約 目的:眼内レンズ挿入眼の眼軸長を光干渉測定法で計測した結果の報告。対象と方法:過去5か月間にアクリル製眼内レンズを挿入した84眼を対象とし,手術前と手術3か月後の眼軸長をOA-1000TMで計測した。術前の信号対雑音比(signal to noise ratio:SNR)が6以上の45眼を高SNR群,6未満の39眼を低SNR群として両群を比較した。結果:術後の眼軸長は術前よりも全体で0.11mm短くなった。高SNR群では0.11mm,低SNR群では0.10mmであり,ばらつきが小さかった。術前後での眼軸長差と術後の屈折誤差には各群間に有意差がなかった。結論:眼内レンズ挿入後には眼軸長が短くなるが,術前の眼軸長の値は,挿入する眼内レンズの決定に信頼できる指標となる。

多施設による緑内障患者の実態調査2009年度版―高齢患者と若年・中年患者

著者: 野崎令恵 ,   井上賢治 ,   塩川美菜子 ,   若倉雅登 ,   富田剛司

ページ範囲:P.495 - P.501

要約 目的:眼科病院または診療所に通院中の緑内障あるいは高眼圧症患者の薬物治療状況の報告。対象と方法:30施設に通院中の緑内障あるいは高眼圧症患者3,074例を調査し,65歳以上の高齢患者1,951例と65歳未満の若年・中年患者1,123例での薬物治療の相違を検討した。2007年に行った調査と比較した。結果:平均使用薬剤数は高齢患者(1.8±0.9剤)が若年・中年患者(1.6±0.9剤)に比べて有意に多かった。両群ともに単剤例ではプロスタグランジン関連薬が,2剤併用例ではラタノプロスト+β遮断点眼薬の組み合わせが最多であった。前回調査と比べて,単剤例でプロスタグランジン関連薬の使用が有意に増加していた。結論:高齢患者と若年・中年患者での緑内障薬物治療は似ていた。前回調査と比較してプロスタグランジン関連薬がますます使用されていた。

網膜色素変性症の白内障手術に対する眼科医の意識

著者: 西田朋美 ,   鶴岡三惠子 ,   川瀬和秀 ,   仲泊聡 ,   安藤伸朗

ページ範囲:P.503 - P.508

要約 目的:網膜色素変性症がある患者の白内障手術についての眼科医の意識調査の報告。対象と方法:電子メールにより,全国の眼科医574名にアンケートを送り,10項目の設問に回答を求めた。結果:197名(34.3%)から回答があった。網膜色素変性症の患者に白内障手術を勧めるかについては,67.2%が勧めない,18.1%が勧めると答えた。手術の時期については,白内障の程度,患者の希望,視力の順に回答が多かった。術前の説明で,78.2%が「視機能改善に希望を抱かせない」と述べた。56.6%が白内障術後に病状が悪化する可能性があると答えた。結論:網膜色素変性症がある患者の白内障手術については,消極的な意見が多かったが,この問題についてガイドラインを出すことが望まれた。

Stickler症候群の姉妹例

著者: 末森晋典 ,   澤田明 ,   小森伸也 ,   宇土一成 ,   白木育美 ,   白木玲子 ,   望月清文

ページ範囲:P.509 - P.513

要約 目的:両Stickler症候群の姉妹例の報告。症例:発端者は9歳女児で,右眼の裂孔原性網膜剝離として紹介され受診した。両眼に軽度の近視と高度な硝子体液化があった。小顎症と鼻根部の平坦化があり,Stickler症候群と診断した。網膜剝離は強膜バックリングでは復位せず,11日後に25ゲージ小切開硝子体手術で復位した。妹の7歳女児には小顎症,鼻根部の平坦化と口蓋裂があり,Pierre-Robin症候群と診断されていた。両眼に約-9Dの近視と高度な硝子体液化があった。母親は17歳のときに網膜剝離手術を受けていた。結論:Stickler症候群が若年者の網膜剝離と関係することがある。本症例での網膜剝離に小切開硝子体手術が奏効した。

長期変化が観察できた両眼性網膜海綿状血管腫の1例

著者: 吉川大和 ,   石崎英介 ,   森下清太 ,   鈴木浩之 ,   佐藤孝樹 ,   植木麻理 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.515 - P.520

要約 目的:両眼性網膜海綿状血管腫の1症例の長期経過の報告。症例:58歳女性が両眼の視力低下で受診した。海綿状血管腫が脳と皮膚にあった。所見:視力低下の原因は遠視で,矯正視力は右1.2,左1.0であった。両眼の眼底白色囊状組織が混在するぶどうの房状の血管瘤があった。24年前の診療録の記述との比較では,両眼とも血管腫の面積には変化がなく,当初は赤色の血管腫であった部位が白色囊状組織になり,蛍光眼底造影で過蛍光を示していた赤色血管腫の一部が低蛍光化していた。結論:網膜海綿状血管腫に混在する白色囊状組織は,血管腫の血流が途絶したものである可能性がある。

専門別研究会

日本視野研究会

著者: 奥山幸子

ページ範囲:P.522 - P.523

 日本視野研究会は2011年12月1日に日本視野学会に移行した。第65回日本臨床眼科学会専門別研究会として行われた第31回日本視野研究会が,研究会としては最後の学術集会となった。以下に内容を要約する。

再生医療・生体材料研究会

著者: 河合憲司

ページ範囲:P.524 - P.525

 2011年は3題の特別講演を企画した。以下にその要旨をまとめる。

連載 今月の話題

白内障手術後の黄斑色素密度変化

著者: 尾花明

ページ範囲:P.395 - P.401

 白内障手術で透明眼内レンズを挿入した症例の約70%に,術後1年目で黄斑色素密度の減少があった。2年後はさらに低下した。青色光をカットする黄色着色眼内レンズ挿入例でも,程度は軽いが術後2年目に黄斑色素密度の低下があった。眼内レンズはヒト水晶体よりも光透過性が高いので,術後の網膜は強い光に晒される。このことが青色光に対する防御システムである黄斑色素を減少させる要因ではないかと推測した。

網膜剝離ファイトクラブ・Round 6

外傷性巨大裂孔網膜剝離

著者: 喜多美穂里 ,   木村英也 ,   日下俊次 ,   栗山晶治 ,   斉藤喜博 ,   塚原康友 ,   安原徹

ページ範囲:P.402 - P.408

ファイトクラブにようこそ!

今回は,若年の外傷性の巨大裂孔網膜剝離例を検討します。

このような症例に遭遇したら,どう対処するか一緒に考えましょう。

眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・28

―臨床編:各種眼疾患と生理活性物質とのかかわり―角膜実質創傷治癒

著者: 中澤満

ページ範囲:P.410 - P.413

はじめに

 前回は角膜上皮の創傷治癒,そして前々回は涙液の生理活性物質をみてきた。そして今回は角膜実質の創傷治癒にどのような生理活性物質がかかわっているのかをみてみたい。そして,角膜実質の病態に角膜上皮と涙液がいかに重要な働きを担っているのかを確認したい。

つけよう! 神経眼科力・25

頭位と神経眼科

著者: 三村治

ページ範囲:P.414 - P.422

はじめに

 神経眼科疾患というと,入力系の視神経疾患と出力系の眼球運動異常であり,特に後者の診断には眼位や眼球運動の検査が重要であると思われる方も多いはずである。しかし,眼球運動異常の検査といってもいきなり眼位・眼球運動を診てはいけない。まず,全身を診て,それから頭位を診ることがきわめて重要である。本稿では,頭位を診ることがいかに重要であるかを,代表的な疾患とともに解説する。

『眼科新書』現代語訳

その13

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.530 - P.539

『眼科新書』巻之五 (続々)

 以下が『眼科新書』巻之五「網膜と視覚」の後半部分で,次号に最終分として巻之六に相当する『眼科新書附録』が続き,これで『眼科新書』全5巻が完結する予定である。

今月の表紙

白血病網膜症

著者: 森隆三郎 ,   野田裕 ,   根木昭

ページ範囲:P.409 - P.409

 症例は37歳,女性。1か月前に左眼の歪視を自覚し,近医を受診した。眼底出血を指摘され,当院を受診した。初診時の視力は右(1.5),左(0.5)で,眼圧は左右とも14mmHgであった。前眼部,中間透光体に異常はなかった。全身的な自覚症状もなく,特記すべき既往歴もなかった。眼底検査にて,両眼にRoth斑を含めて網膜出血が多発していたため,全身検査を行った。血液検査では白血球増多と貧血を認め,内科を受診したところ,他の検査データを含めて慢性骨髄性白血病と診断された。

 写真は当院初診時のものである。撮影に際しては,TOPCON TRC・50DXを用い,画角50°にて中心窩上方のRoth班にピントを合わせ,同耳側・同下方が構図に入るようにした。

書評

神経眼科―臨床のために 第3版

著者: 若倉雅登

ページ範囲:P.448 - P.448

 外国の教科書などに倣い,記念すべき人名を冠して「藤野貞の図説臨床神経眼科」とでもタイトルしてほしかった待望の第3版である。その藤野貞氏は2005年12月12日,83歳でひっそりと自宅でその生涯を閉じられた。本書の初版は,藤野氏が丹精込めて1991年10月に刊行された。自らが描かれた数々のわかりやすいイラスト,簡潔明瞭な箇条書きの記載,何よりも視診を重視し,それに見合う付録と,どれをとっても藤野氏の静かな情熱と後進への思いやりが表れていた。日本人のための教科書だからと,参考文献も日本語のものを選択していた。しかし,内容は正確で,質は高かった。神経眼科の初学者だけでなく,専門だと自認する医師たちも大いに参考にした。

 神経眼科という,ともすれば敬遠されがちな領域だが,眼科の臨床上避けて通れぬ領域でもあることはすべての眼科医が知っていたし,神経内科など関連領域の医師たちもこの領域の大切さに気付いていた。だが,多くの教科書はやはり難しい記載になりがちで,読破できる人は多くなかった。本書の第1版はそのわかりやすさ,必要な所を読めばよろしいという編集スタイルで,神経眼科とそれに苦手意識を持つ医師との距離をぐっと縮め,医学書としては異例の5刷を重ね,「飛ぶように売れた」と表現してよい人気を博した。第2版は2001年に刊行された。これもよく売れた。

やさしい目で きびしい目で・148

この20年―仕事と息子と,時々,夫

著者: 南野麻美

ページ範囲:P.529 - P.529

 最近は深刻な医師不足のため,また少子化問題もあいまって,各大学・医局に子供をもつ女性医師の仕事復帰を支援するさまざまな制度ができ,本当にうらやましい限りです。私が医師になった1980年代後半までは,女性は子供が生まれたら仕事は辞めるか,研究生になり外来の手伝いをするのが当然という時代でした。1985年に男女雇用機会均等法が改正され,世の中が徐々に変わり始めていましたが,医師の世界は,東京ですら,また女性医師の多い眼科ですら旧態依然としていました。産休明けに仕事復帰する人もまだまだ少なく,復帰できたとしても保育園の送り迎えで勤務時間に制限があったり,当直が難しかったり,地方の派遣に出られなかったり,肩身の狭い思いをしていました。結局,第一線を退いてしまうことが多かったようです。幸運にも家族の強力なバックアップ,健康というか頑丈な子供,何より本人の強靱な精神力と体力に恵まれ,頑張っておられる先輩方もおられましたが,超人的な存在でした。

 長男を産んだ1992年当時は,男女雇用機会均等法の改正以降の世間の流れにあと押しされ,医局内でも「産前6週,産後8週の産休以降は保育園に子供を預けて職場復帰」という選択が当たり前となりつつありました。私は,家族の強力なバックアップもなく,強靱な精神力も体力も持ち合わせていませんでしたし,長男,1997年生まれの次男とも健康体ではあるものの3歳までは月に一度は熱を出す軟弱者でしたが,何とか今まで大きなブランクを作らず,仕事を続けてくることができました。でも決して順風満帆にきたわけではなく,初めの頃は随分悩んだり,途方に暮れたりしました。すべて完璧にこなせる能力のある人はよいのですが,私のように体力,知力,気力に制限があれば,いろいろ切り捨てていくしかありません。そこで,「仕事」と「息子」,この2つをしっかり頑張れるように生活を立て直しました。まず,地方派遣と当直は難しかったため大学を辞め,当直がなく,9時~17時で仕事ができた都内の病院(数年後にはとても忙しくなりましたが)に就職し,さらに病院の近所に引っ越し,家,保育園,病院の移動距離を極力少なくして時間の捻出をしました。それでも息子の急な発熱で,遅刻・早退をさせてもらったことも一度や二度ではありません。逆に,急患で保育園のお迎えに遅れたり,学会前,仕事に集中して食事や世話が手抜きになり,息子たちが体調を崩したりということも多々ありました。「仕事」と「息子」,優先順位や力配分はその時々で変え,何とかこの20年間しのいできた感じです。

臨床報告

MRSAによる内因性眼内炎の1例

著者: 秋澤尉子 ,   長岡奈都子 ,   廣渡崇郎

ページ範囲:P.541 - P.544

要約 目的:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による内因性ぶどう膜炎の症例の報告。症例:49歳男性が2型糖尿病のためインスリン治療を受けていた。一酸化炭素中毒のあと,高気圧酸素療法と副腎皮質ステロイドのパルス療法を中心静脈栄養(IVH)下で開始した。悪寒・発熱と白血球増加があり,94日後にIVHカテーテルが除去された。カテーテル先端からMRSAが検出され,その2日後に左眼の眼痛と視力障害が生じた。所見:左眼視力は指数弁で,前房蓄膿と虹彩ルベオーシスがあった。超音波検査で発見された網膜剝離に手術を行い,採取した硝子体からMRSAが検出され,これによる内因性眼内炎と診断した。患眼は眼球癆となった。結論:抵抗性が減弱した状態では,MRSAによる内因性眼内炎がIVHに続発することがある。

ステロイド大量療法に抵抗した視神経炎に対する血漿交換療法

著者: 松田隆作 ,   毛塚剛司 ,   松永芳径 ,   内海裕也 ,   増田眞之 ,   赫寛雄 ,   田中惠子 ,   後藤浩

ページ範囲:P.545 - P.551

要約 目的:血漿交換療法を行った視神経炎の成績の報告。対象と方法:視神経炎の急性増悪時にステロイド大量療法を行っても効果が乏しく,二重膜濾過血漿交換療法を行った連続8例12眼を対象とした。全例が女性で,年齢は30~72歳(平均48歳)である。病型は視神経脊髄炎が6例9眼,特発性視神経炎が2例3眼であった。全例で抗aquaporin-4(AQP4)抗体を検索した。治療効果は視力とGoldmann視野で判定した。結果:抗AQP4抗体は5例が陽性で3例が陰性であった。血漿交換療法後に7例9眼で2段階以上の視力の改善が得られた。抗AQP4抗体が陰性の症例では全例が改善し,陽性であった5例のうち再発回数が多かった2例3眼では視機能が改善しなかった。結論:二重膜濾過血漿交換療法は,抗AQP4抗体が陰性である視神経に奏効した。抗AQP4抗体が陽性で,過去の再発回数が多い視神経炎には,効果が限られていた。

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欧文目次

ページ範囲:P.391 - P.393

第30回眼科写真展 作品募集

ページ範囲:P.423 - P.423

 第66回日本臨床眼科学会(京都)会期中の2012年10月25日(木)~28日(日)に開催される「第30回眼科写真展」の作品を募集します。

べらどんな 色素性網膜炎

著者:

ページ範囲:P.432 - P.432

 長いあいだ慣れてきた名前が急に変わると当惑し,迷惑する。

 そのひとつが「印刷物」である。郵政省の時代はこれでよかったが,誰が考えたのか「冊子小包」に変更された。原稿を送るときには「本綴じ」ではなく,バラバラなので,「冊子」にはならないのではと心配だった。

べらどんな 接着剤

著者:

ページ範囲:P.479 - P.479

 郵政省が郵便事業株式会社になって,よくなったことが2つある。ひとつは濡らさずに貼れる切手,もうひとつはレターパックである。

 この切手は粘着テープのように裏に糊がついているので,台紙から剝がすだけで封筒にピタッと圧着できる。今のところ,特殊な記念切手にしか使われていない。しかし現在は実験の段階で,いずれは切手全部がこのスタイルになるのではとみている。

ことば・ことば・ことば 球

ページ範囲:P.540 - P.540

 「眼球」は英語ならeyeball,ラテン語だとbulbus oculiです。古代ローマにはサッカーも野球もなかったはずなので,羅英辞典でbulbusを引いたら,「英語ではbulb」となっていました。

 英語のbulbには「電球」の意味もあります。しかし,エジソンが白熱電球を発明したのは1879年,すなわち明治12年なので,当時は新語でした。

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.553 - P.566

アンケート

ページ範囲:P.567 - P.567

投稿規定

ページ範囲:P.568 - P.568

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.569 - P.569

希望掲載欄

ページ範囲:P.570 - P.570

次号予告

ページ範囲:P.571 - P.571

あとがき

著者: 根木昭

ページ範囲:P.572 - P.572

 入学式の季節になりました。本年度の医学部定員は8,991人ということで,平成19年に比して約1,300人増加しました。定員100人の医学部が13校増えたことになります。しかし,教員の定数は増えませんから,大学教員の負担が増しています。新入生の30~40%が女性です。女性医師の労働環境を改善し,常勤ポストへの定着率を上げないと医師不足問題も解決しません。男女共同参画社会の実現が提唱されて久しいですが,いまだその実現は遠いです。そのあたりは本誌で連載されている「やさしい目で きびしい目で」の項で現実を垣間みることができます。女性医師の待遇改善は単に女性医師の問題ではなく,勤務医全体の環境改善に繋がるという視点でこの問題に取り組む必要があります。

 眼科専攻医の減少傾向が続きます。新臨床研修制度が義務化される平成16年までは,新規専攻医の数はそれまでの4年間の平均で389人でしたが,平成18年度から激減し,昨年はついに183人と過去最低を記録しました。女性医師の比率は46%です。医師の大学院進学も減少しています。眼科医数全体としては,引退される眼科医数より新入の眼科医数のほうがまだ上回っているため累積人数は微増していますが,10年,20年してこれが逆転しだすと急速に眼科医は減少していきます。その頃は超高齢社会で眼科臨床は超多忙化することでしょう。眼科教育,眼科研究が心配です。教育,研究がなければわが国の眼科の発展はありません。今年から,日本眼科学会は医学生や初期研修医を対象に眼科の重要性やおもしろさを啓蒙する活動を強化します。このような活動が結実し,眼科学を目指す人が増えることを祈ります。眼科医全体で眼科の重要性を社会にアピールしていきましょう。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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