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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科66巻4号

2012年04月発行

やさしい目で きびしい目で・148

この20年―仕事と息子と,時々,夫

著者: 南野麻美12

所属機関: 1神楽坂みなみの眼科 2日本医科大学

ページ範囲:P.529 - P.529

文献概要

 最近は深刻な医師不足のため,また少子化問題もあいまって,各大学・医局に子供をもつ女性医師の仕事復帰を支援するさまざまな制度ができ,本当にうらやましい限りです。私が医師になった1980年代後半までは,女性は子供が生まれたら仕事は辞めるか,研究生になり外来の手伝いをするのが当然という時代でした。1985年に男女雇用機会均等法が改正され,世の中が徐々に変わり始めていましたが,医師の世界は,東京ですら,また女性医師の多い眼科ですら旧態依然としていました。産休明けに仕事復帰する人もまだまだ少なく,復帰できたとしても保育園の送り迎えで勤務時間に制限があったり,当直が難しかったり,地方の派遣に出られなかったり,肩身の狭い思いをしていました。結局,第一線を退いてしまうことが多かったようです。幸運にも家族の強力なバックアップ,健康というか頑丈な子供,何より本人の強靱な精神力と体力に恵まれ,頑張っておられる先輩方もおられましたが,超人的な存在でした。

 長男を産んだ1992年当時は,男女雇用機会均等法の改正以降の世間の流れにあと押しされ,医局内でも「産前6週,産後8週の産休以降は保育園に子供を預けて職場復帰」という選択が当たり前となりつつありました。私は,家族の強力なバックアップもなく,強靱な精神力も体力も持ち合わせていませんでしたし,長男,1997年生まれの次男とも健康体ではあるものの3歳までは月に一度は熱を出す軟弱者でしたが,何とか今まで大きなブランクを作らず,仕事を続けてくることができました。でも決して順風満帆にきたわけではなく,初めの頃は随分悩んだり,途方に暮れたりしました。すべて完璧にこなせる能力のある人はよいのですが,私のように体力,知力,気力に制限があれば,いろいろ切り捨てていくしかありません。そこで,「仕事」と「息子」,この2つをしっかり頑張れるように生活を立て直しました。まず,地方派遣と当直は難しかったため大学を辞め,当直がなく,9時~17時で仕事ができた都内の病院(数年後にはとても忙しくなりましたが)に就職し,さらに病院の近所に引っ越し,家,保育園,病院の移動距離を極力少なくして時間の捻出をしました。それでも息子の急な発熱で,遅刻・早退をさせてもらったことも一度や二度ではありません。逆に,急患で保育園のお迎えに遅れたり,学会前,仕事に集中して食事や世話が手抜きになり,息子たちが体調を崩したりということも多々ありました。「仕事」と「息子」,優先順位や力配分はその時々で変え,何とかこの20年間しのいできた感じです。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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