臨床眼科66巻8号

2012年08月発行

特集 第65回日本臨床眼科学会講演集（6） 原著

片眼性網膜色素変性が疑われた症例の健眼の光干渉断層計所見

著者： 上野洋祐¹ 森脇光康¹ 米田丞¹ 宇根宏容¹ 白木邦彦¹

所属機関： ¹大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学

ページ範囲：P.1207 - P.1213

要約　目的：片眼性網膜色素変性と診断された症例の健側眼に光干渉断層計検査を行い，異常がみられた報告。症例：50歳女性が左眼の夜盲で紹介受診した。裸眼視力は左右とも1.2で，右眼の眼底，視野，蛍光眼底造影所見，網膜電図は正常であった。左眼には網膜色素変性に特有な眼底所見，輪状暗点があり，網膜電図は消失または振幅の低下があり，片眼性網膜色素変性と診断した。右眼の光干渉断層計検査で，上耳側血管アーケードの周辺部にIS/OSラインの不連続があり，この部位に視細胞層の菲薄化があると判断した。結論：本症例の健側眼にみられた光干渉断層計所見は，網膜色素変性の初期変化である可能性がある。

参考文献

1）横地みどり・岸　章治：網膜色素変性の検査（OCTによるIS/OS評価，網膜厚も含めて）．眼科　50：781-787，2008

2）山田教弘・岸　章治：網膜色素変性症．眼科　49：725-730，2007

3）岸　章治：OCTによる視細胞外節病変の観察．臨眼　64：657-665，2010

4）Paul AS, Rafael CC：Retinitis pigmentosa and related disorders. In：Myron Y, Jay SD（eds）：Ophthalmology. third edition. 550-559, Mosby Elsevier, Philadelphia, 2009

5）中澤　満：網膜色素変性．小椋祐一郎・根本　昭（編）：網膜．230-236，メジカルビュー社，東京，1999

6）Donald FF：Unilateral retinitis pigmentosa and cone-rod dystrophy. Clin Ophthalmol　3：263-270, 2009

7）佐渡一成・小林康彦・田中　稔・他：片眼性網膜色素変性症と思われる9例の検討．眼臨　88：866-871，1994

8）渡辺　朗・月花　環・神前賢一：片眼性から両眼性に進展した網膜色素変性の臨床所見．眼紀　57：744-748，2006