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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科66巻8号

2012年08月発行

文献概要

特集 第65回日本臨床眼科学会講演集(6) 原著

妊娠14週でステロイドパルス療法を施行した原田病の1例

著者: 富永明子1 越智亮介1 張野正誉1 高橋正2

所属機関: 1淀川キリスト教病院眼科 2たはかし眼科

ページ範囲:P.1229 - P.1234

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要約 目的:妊娠14週の女性に発症した原田病にステロイドパルス療法が奏効した報告。症例:31歳女性が3日前からの頭痛を伴う両眼の変視と視力低下で受診した。妊娠14週4日であった。所見と経過:矯正視力は右0.9,左1.0で,右眼に+2.5D,左眼に+0.75Dの遠視があった。前眼部に炎症所見はなく,両眼の眼底に漿液性網膜剝離があり,原田病と診断した。胎児に対する危険が大きい妊娠12週を過ぎているので,メチルプレドニゾロン1,000mg/日によるパルス療法を3日間行い,4日目からプレドニゾロン25mgの内服に切り替えた。治療開始から12日で漿液性網膜剝離は消失し,近視化した。妊娠38週4日で出産し,母子に異常はなく,13か月後の現在まで問題はない。結論:妊婦に発症した原田病に対し,眼外症状を重視したステロイドのパルス療法が奏効した。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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