今月の表紙
Terson症候群
著者:
遠藤弘毅1
高橋光生1
横井匡彦1
根木昭2
所属機関:
1手稲渓仁会病院
2神戸大学
ページ範囲:P.1653 - P.1653
文献購入ページに移動
症例は52歳,女性。前交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血から1か月半後に当科初診。右矯正視力は眼前手動弁,硝子体出血で眼底透見不能。左矯正視力は0.06,眼底は多彩な層に出血が散在していた。画像は初診時の左眼底写真(a)と光干渉断層像(optical coherence tomograph:以下,OCT)である。黄斑部下方にニボーを形成した出血(☆)がある。同部位のOCT垂直スキャン(b)では,膜様組織がドーム状に隆起し,ニボーの上方に比べ下方は高反射で後方組織は測定光ブロックにより描出されていない。以上から,内境界膜血腫が発生し血液が沈降した所見と考えられる。下方に垂れ流れたような形(→)は,内境界膜下から後部硝子体膜下へと出血が移動した所見である。視神経乳頭と大血管周囲に網膜出血や淡い網膜下出血が散在している。中心窩耳側の半乳頭径大の出血(*)は,OCT斜めスキャン(c)より密閉された空間内にある内境界膜下出血で,網膜神経線維層以下の各層が圧排されているものと推察した。中心窩下には網膜色素上皮から外顆粒層へ広がる高反射像を認め,網膜外層の微細な出血と考えられた。
撮影はトプコン社製眼底カメラTRC-50LX,9カットのパノラマ合成画像。OCTはカールツァイスメディテック社製シラスHD-OCTを使用した。