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『蘭室秘蔵』
著者: 中泉行弘1 林尋子1 安部郁子1
所属機関: 1研医会
ページ範囲:P.1774 - P.1777
文献購入ページに移動李東垣の残した治験記録は1249年までしかなく,『蘭室秘蔵』の成立は著者李東垣の亡くなった年,1251年とされている。『蘭室秘蔵』とは『素問』『霊枢』にみえる「霊蘭之室」という黄帝の書庫を指す言葉から作られた名であるが,真柳誠氏は『和刻漢籍医書集成』第6輯所収「『内外傷弁惑論』『脾胃論』『蘭室秘蔵』 解題」の中で,「本書名の謂は,東垣の「霊蘭の室」に秘蔵されていた書である。もちろん自らを黄帝に比すなど,たとえ東垣でもあろうはずはない。ならば本書の序に,「吾師弗自私蔵,以公諸人」と記す天益が,この書名を付けたと考えられる」と述べている。また,「先師」という言葉を使ってその治療について述べている部分を指摘して,この本は李東垣の命を受けた最後の弟子である羅天益が,師の死後1266年ごろまでにまとめ上げて1276年に刊行した書物である,と解説されている(参考文献2)。
当館には3つの『東垣十書』があり,それぞれ『蘭室秘蔵』を収載している。
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