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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科67巻4号

2013年04月発行

雑誌目次

特集 第66回日本臨床眼科学会講演集(2) 原著

網膜静脈分枝閉塞に伴う黄斑浮腫に対するベバシズマブ連続注射と光凝固併用療法

著者: 村松大弐 ,   若林美宏 ,   木村圭介 ,   川上摂子 ,   馬詰和比古 ,   石井茂充 ,   三嶋真紀 ,   権藤さやか ,   後藤浩

ページ範囲:P.443 - P.448

要約 目的:網膜静脈分枝閉塞症に併発した黄斑浮腫を,ベバシズマブ硝子体注射と光凝固で治療した結果の報告。対象と方法:3か月以上経過しても黄斑浮腫が軽快しない網膜静脈分枝閉塞11例11眼を対象とした。1か月の間隔でベバシズマブ硝子体注射を3回行ったあと,黄斑格子状光凝固を実施した。網膜厚が20%以上増加した場合と,2段階以上の視力低下があったとき,再治療をした。初回治療から12か月までの成績を前向きに検索した。視力はlogMARとして評価した。結果:平均視力は治療前0.58,12か月後0.16で,有意に改善した(p<0.05)。網膜厚は治療前558.5μm,12か月後277.8μmで,有意に減少した(p<0.01)。治療開始から6か月後と12か月後の小数視力は,各7眼(64%)で0.7以上であった。ベバシズマブ硝子体注射の追加回数は平均0.27回,光凝固の追加は平均0.18回であった。結論:ベバシズマブ硝子体注射とこれに続く光凝固は,網膜静脈分枝閉塞症に併発した黄斑浮腫に有効であった。

都立駒込病院におけるヒト免疫不全ウイルス感染者の眼合併症

著者: 川口龍史 ,   山本成径 ,   岩﨑優子 ,   尾碕憲子 ,   村上喜三雄

ページ範囲:P.449 - P.452

要約 目的:東京都エイズ治療中核拠点病院である都立駒込病院(以下,当院)におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者の眼合併症について解析する。対象と方法:2000年1月~2009年12月に当院眼科を受診したHIV感染者について,診療録を後方視的に調査した。結果:544例(男性488例,女性56例)が受診し,年齢は18~75歳(平均43.3歳)であった 。HIV感染に関連する眼合併症は188例(34.6%)にみられ,HIV関連網膜微小血管症が95例,サイトメガロウイルス網膜炎が41例であった。490例で多剤併用療法が施行され,13例で免疫回復ぶどう膜炎が出現した。結論:HIV感染者では,約3割に眼合併症が出現する。全身の免疫状態に伴って眼病変は変化するため,全身管理を行う診療科と連携することが重要である。

HIV関連網膜微小血管症とHIV脳症との関連

著者: 岩﨑優子 ,   山本成径 ,   川口龍史 ,   尾碕憲子 ,   望月學 ,   味澤篤 ,   村上喜三雄

ページ範囲:P.453 - P.457

要約 目的:HIV関連網膜微小血管症とHIV脳症の関連について検討する。対象と方法:2000~2009年の間に都立駒込病院において抗HIV治療の開始時に眼科を受診した383例を対象とし,HIV関連網膜微小血管症の有無とHIV脳症の有無を後方視的に調査し,2つの疾患の関連を検討した。結果:HIV関連網膜微小血管症は85例,HIV脳症は9例でみられた。2つの疾患の間には有意な関連があった(p=0.0013,Fisherの正確確率検定)。結論:HIV関連網膜微小血管症が存在する症例ではHIV脳症の合併頻度が高い。HIV関連網膜微小血管症は,HIV脳症合併の危険因子である可能性がある。

緑内障におけるOCT黄斑部網膜内層厚3年間の変化

著者: 藤本尚也 ,   横山暁子

ページ範囲:P.459 - P.462

要約 目的:緑内障眼での乳頭周囲網膜神経線維層,網膜神経節細胞層と内網状層の厚さの3年間の変化の報告。対象と方法:原発開放隅角緑内障50例50眼を対象とした。男性27例,女性23眼で,年齢は29~82歳(平均60歳)である。全例が矯正視力0.6以上であった。網膜厚の測定にはCirrus光干渉断層計(OCT)を用い,3年間に4回以上検索した。結果:乳頭周囲網膜神経線維層厚の平均値は3年間に72.3μmから69.1μmに有意に減少した(p<0.0001)。網膜神経節細胞層と内網状層の厚さの平均値は3年間に67.2μmから65.4μmに有意に減少した(p=0.0001)。両者の変化値は有意に相関した(p=0.0313)。結論:緑内障眼での乳頭周囲網膜神経線維層と黄斑部網膜内層厚は3年間に有意に減少し,両者の変化値は有意に相関した。OCTで測定した黄斑部網膜内層厚値は緑内障の進行の指標として期待できる。

全国の眼科教授におけるロービジョンに対する意識の変遷(2011年)

著者: 鶴岡三惠子 ,   安藤伸朗 ,   永井春彦 ,   川瀬和秀 ,   西田朋美 ,   仲泊聡

ページ範囲:P.463 - P.467

要約 目的:眼科教授のロービジョン(low vision:以下,LV)ケアに対する意識変化の調査の報告。対象と方法:146人の眼科教授を対象に郵送による12項目のアンケート調査を行った。2008年に同様の調査をしており,2011年の結果とχ2検定で比較検討した。結果:63人(43%)から回答を得た。LVケアを行っている65%,LVへの関心がある88.5%,LVケアの教育指導は必要72%,紹介できるLV外来が近隣にある44%,であった。いずれも2008年と2011年の調査間に有意な差はなかった。結論:眼科教育機関附属病院のLVケア状況は,3年間で変化はないが,LVケアの教育や普及が困難な現状が示された。

コンタクトレンズ装用を発症誘因とする感染性角膜潰瘍の検討

著者: 松原倫子 ,   小出良平 ,   高橋春男

ページ範囲:P.469 - P.473

要約 目的:コンタクトレンズ(CL)装用により発症し,入院加療を必要とした感染性角膜潰瘍の報告。対象と方法:2012年までの9年間にCL装用で発症した感染性角膜潰瘍82例86眼を対象とし,診療録の記述を解析した。結果:男性48眼,女性38眼で,年齢は15~69歳(平均31歳)であった。78眼にソフトCL,8眼にハードCLが使われていた。82例中8例が定期的な眼科検査を受け,41例が定期検査を受けず,33例が不明であった。CLまたはその保存ケースの管理は82例中64例(78%)で不適切であった。86眼の角膜病巣から63眼(73%)に病原微生物が検出され,うち28眼(33%)に緑膿菌が同定された。保存ケースから69例中32例(46%)で緑膿菌が検出された。結論:CLまたはその保存ケースの不適切な管理で感染性角膜潰瘍が発症しやすくなる。管理についての教育と定期的な眼科受診が望まれる。

小児のStickler症候群に伴う裂孔原性網膜剝離に対して硝子体手術を行った1例

著者: 渡部大樹 ,   岡本史樹 ,   杉浦好美 ,   大鹿哲郎

ページ範囲:P.475 - P.479

要約 目的:Stickler症候群に併発した網膜剝離の治療例の報告。症例:13歳男児が右眼の網膜剝離として紹介受診した。乳児期にPierre Robin症候群と診断され,口蓋裂の手術を受けている。所見と経過:両眼に約-5Dの近視があり,矯正視力は右0.5,左1.2であった。右眼に網膜剝離と硝子体液化があった。顔面と鼻根部が平坦化し,指関節の屈曲制限があり,Stickler症候群と診断した。SF6を併用した硝子体手術により網膜は復位し,15か月後の現在まで再発はない。結論:Stickler症候群の小児に裂孔原性網膜剝離が発症することがある。

近視性網膜分離症の手術成績とガスタンポナーデの検討

著者: 尾崎弘典 ,   中村友子 ,   矢合隆昭 ,   岡都子 ,   加藤剛 ,   御手洗慶一 ,   柳沢秀一郎 ,   林篤志

ページ範囲:P.481 - P.484

要約 目的:近視性網膜分離症の手術成績の報告。対象と方法:過去40か月間に硝子体手術を行った近視性網膜分離症20例23眼を対象とした。男性5眼,女性18眼で,平均年齢は64歳である。光干渉断層計(OCT)で術前の黄斑形態を検索し,中心窩剝離型9眼にはガスタンポナーデを併用し,中心窩分離型14眼には最初の9眼のみにこれを行った。黄斑円孔がある症例は除外した。視力はlogMARで評価した。結果:矯正視力は術前0.88±0.59,術後0.68±0.64で,有意に改善した(p<0.01)。術後12か月間の観察で,網膜分離症は過半数で治癒した。中心窩分離型2眼と中心窩剝離型1眼に黄斑円孔が生じた。ガスタンポナーデの使用と不使用で術後成績に差はなかった。結論:近視性網膜分離症に対する硝子体手術で視力が有意に改善し,特に中心窩剝離型に有効であった。ガスタンポナーデの併用は手術成績に関係しなかった。

特発性黄斑円孔術後ガス下の光干渉断層計撮影:眼内レンズの種類とうつぶせの有無による比較

著者: 伊藤浩幸 ,   八木文彦 ,   高木誠二 ,   榎本暢子 ,   富田剛司

ページ範囲:P.485 - P.490

要約 目的:黄斑円孔術後にOCT撮影が可能になるまでの日数を眼内レンズの種類,術後うつぶせの有無で比較した。対象と方法:対象は過去34か月間に手術した31例31眼。球面レンズ挿入群(球面群)16眼,非球面レンズ挿入群(非球面群)15眼,術後うつぶせなし群(0日群)17眼,術後うつぶせ1日群(1日群)14眼に分けた。術当日から円孔の状態が確認できるまで毎日OCT撮影を行った。結果:OCT撮影可能な日数は全体で平均1.97日,球面群で1.94日,非球面群で2.00日,0日群で1.71日,1日群で2.29日であり,各群間に有意差はなかった。結論:黄斑円孔術後のOCT撮影は術後早期から可能であった。

鈍的外傷後の黄斑円孔に対する硝子体手術成績

著者: 太田聡美 ,   馬場隆之 ,   山本修一

ページ範囲:P.491 - P.495

要約 目的:硝子体手術を行った鈍的外傷後黄斑円孔症例7例7眼の手術成績を報告する。方法:対象の年齢は平均24.9(9~55)歳であった。全例に対して経毛様体扁平部硝子体切除術,内境界膜剝離,SF6ガスタンポナーデを施行した。受傷から手術までの期間は平均6.6(2~11)か月,術後観察期間は平均9.3(3~24)か月であった。結果:5眼は初回手術後,1眼は2回の手術で円孔が閉鎖した。1眼は術前に網脈絡膜萎縮がみられ受傷後2か月で手術を行うも円孔閉鎖には至らず,視力は最終観察時0.09にとどまった。円孔閉鎖症例では術前平均視力0.26から最終観察時平均0.84に改善した。結論:網脈絡膜萎縮の有無と手術による円孔閉鎖が視力改善のために重要である。

半側網膜中心動脈閉塞症を呈したもやもや病の1例

著者: 深澤みづほ ,   楠本欽史 ,   國分沙帆 ,   鎌田光二

ページ範囲:P.497 - P.501

要約 目的:基礎疾患のない若年女性の片眼の半側網膜中心動脈閉塞症の経過観察中にもやもや病が発見された症例の報告。症例:28歳の女性が左眼上半分の視野欠損で受診した。所見:矯正視力は右1.2,左0.01(矯正不能)で,左眼に網膜中心動脈閉塞症の所見を認めた。頭部磁気共鳴血管造影でもやもや病が発見され,血管造影検査にて左網膜動脈の描出は不良であった。点滴治療・高圧酸素療法などを施行し,視力,視野ともに改善した。結論:若年者の網膜中心動脈閉塞症では,もやもや病のような血管異常をきたす疾患の合併を考慮する必要がある。

眼内レンズ毛様溝縫着術の手術成績

著者: 加藤睦子 ,   中山正 ,   細川海音 ,   熊瀬有美 ,   高畠まゆみ ,   寺石友美子

ページ範囲:P.503 - P.509

要約 目的:眼内レンズ(IOL)を毛様溝に縫着した症例群の報告。対象:過去52か月間に白内障手術を行った3,055眼のうち,水晶体脱臼は35眼(1.1%)にあり,17例19眼にIOL毛様溝縫着をした。縫着が必要になった原因は,偽落屑症候群7眼,医原性5眼,外傷3眼,アトピー性皮膚炎2眼,Marfan症候群2眼である。結果:術後平均26か月での視力は全例で良好であった。平均-0.71Dの屈折ずれがあった。角膜惹起乱視は,強角膜切開幅が7~12mmの7眼では平均1.38D,3~4mmの12眼では0.65Dであり,有意差があった(p=0.047)。角膜内皮減少率は平均11.8%で,前半の10眼では17.7%,後半の9眼では5.2%であり,有意差があった(p=0.029)。虹彩捕捉の合併が13眼中4眼にあり,これ以後の6眼では周辺部虹彩切除術を予防的に行ったが,1眼では再発を繰り返した。結論:水晶体脱臼へのIOL毛様溝縫着術は比較的小切開創で惹起乱視が減少し,周辺部虹彩切除術の併施で虹彩捕捉が予防できた。

白内障術後に生じた穿孔性強膜軟化症に対する治療経験

著者: 菅野彰 ,   難波広幸 ,   結城義憲 ,   西塚弘一 ,   山下英俊

ページ範囲:P.511 - P.514

要約 目的:白内障術後に発症した穿孔性強膜軟化症に対し強膜移植術が奏効した1例の報告。症例:78歳男性が2か月前からの頭痛と左眼の眼痛で受診した。4か月前に両眼の白内障手術を受け,2か月前から抗菌薬とステロイド点眼などを受けていた。所見と経過:矯正視力は右1.2,左0.5で,左眼上方の球結膜に充血と強膜の菲薄化があった。強膜菲薄化部に穿孔があり,保存強膜を移植した。症状は直ちに改善し,4か月後の左眼視力は0.8に改善した。結論:保存強膜の移植が白内障術後に発症した穿孔性強膜軟化症に奏効した。

網膜色素変性患者の白内障手術症例の検討

著者: 髙田幸尚 ,   白井久美 ,   岡田由香 ,   雑賀司珠也

ページ範囲:P.515 - P.520

要約 目的:白内障手術を受けた網膜色素変性患者の術前の期待や術後の感想の調査報告。対象と方法:過去5年間に両眼に白内障手術が行われた網膜色素変性患者7例を対象とした。男性3例,女性4例で,年齢は39~71歳である。手術に至る経緯と動機,術後の視機能や感想につき,手術から平均2年後にアンケートで調査した。客観的な視機能は診療録などで調べた。視力はlogMARで評価した。結果:平均矯正視力は術前1.25±0.71,術後1.11±0.85であった。5例が眼科医に手術を勧められた。全例が術後の視機能の改善を期待し,5例で視機能が改善した。手術を後悔している症例はなかった。結論:網膜色素変性患者での白内障手術では,高い満足度が得られた。術前に詳細な説明をすることで,満足度がより高くなることが期待される。

中年のDown症候群患者に発症した円錐角膜急性水腫

著者: 大橋和広 ,   澤口昭一

ページ範囲:P.521 - P.525

要約 背景:角膜の急性水腫は比較的若年の円錐角膜に発症し,中高齢者では稀である。目的:中年のDown症候群患者に発症した円錐角膜急性水腫の報告。症例:47歳女性が右眼に突発した視力低下で受診した。3年前に両眼に白内障手術を受けた。Down症候群があり,眼を擦る癖があった。所見:矯正視力は右測定不能,左0.08で,右眼の角膜に混濁と浮腫があった。過去の所見の解析で,円錐角膜が徐々に進行していた。右眼の視力低下は,円錐角膜に急性水腫が生じたためと推定された。結論:円錐角膜があり,眼を擦る癖があるDown症候群患者では,中高齢者でも急性水腫が発症する可能性がある。

アマンタジンの長期内服で角膜内皮障害を生じた2例

著者: 石倉涼子 ,   井上幸次 ,   藤原裕丈 ,   木谷光博 ,   上野信也

ページ範囲:P.527 - P.532

要約 背景:Parkinson病にはアマンタジン(シンメトリル®)内服が奏効するとされている。目的:長期のアマンタジン内服で角膜内皮障害が両眼に生じた2例の報告。症例:66歳と76歳の男性が急激な両眼の視力低下で受診した。両名ともParkinson病があり,アマンタジンをそれぞれ5年前と10年前から服用していた。所見:矯正視力は1例では左右眼とも0.03,他の1例では左右眼とも0.02であった。両症例とも両眼に強い角膜浮腫があり,前房混濁はなかった。アマンタジン内服を中止し,ベタメタゾン点眼で両症例とも角膜浮腫が消失し,視力が0.8以上に改善した。角膜内皮細胞数は2例4眼とも1,000/mm2以下であった。結論:アマンタジンの長期内服で角膜内皮細胞が減少し,角膜内皮障害が生じることがある。

シクロスポリン点眼が奏効した抗悪性腫瘍薬エルロチニブによる角膜潰瘍の1例

著者: 林泰博

ページ範囲:P.533 - P.537

要約 目的:エルロチニブによる治療中に角膜潰瘍が生じた1例の報告。症例:73歳男性が右眼の充血と眼痛で受診した。5年前に肺腺癌の手術を受け,2年後に肺内転移が多発し,ゲフィニチブ(イレッサ®)の内服を開始した。8か月前に角膜辺縁部潰瘍が右眼に生じ,ベタメタゾン点眼で治癒した。その1か月後からエルロチニブ内服を開始した。所見:角膜辺縁部潰瘍が右眼にあった。ベタメタゾン点眼は奏効せず,2か月後にシクロスポリン点眼に変更し,1か月後に治癒した。さらに1か月後に角膜辺縁部潰瘍が左眼に生じたが,シクロスポリン点眼で治癒した。以後14か月間に角膜病変の再発はない。結論:悪性腫瘍に対するエルロチニブ内服で角膜潰瘍が生じる可能性がある。

涙囊鼻腔吻合術後に診断された涙囊部低分化型腺癌の1例

著者: 一色佳彦 ,   森寺威之 ,   栗山晶治

ページ範囲:P.539 - P.543

要約 目的:涙囊鼻腔吻合術後に涙囊の悪性腫瘍が診断された症例の報告。症例:52歳女性が再発性の慢性涙囊炎として紹介受診した。所見と経過:涙囊部に腫脹があり,通水試験で上下の涙点とも通水可能であったが,膿の逆流があった。涙囊鼻腔吻合術を行ったが通過障害が進行し,6か月後に涙道再建術を行った。吻合孔に涙囊原発と推定される腫瘤があり,生検で低分化型腺癌と診断した。画像診断で右内眼角に充実性の腫瘤と骨破壊像があり,拡大涙囊腫瘍摘出術と遊離皮弁移植術を実施した。17か月後の現在まで再発や転移はない。結論:涙囊に原発した腫瘍では,涙囊炎との鑑別が必要である。

静的視野でAZOORが疑われ動的視野で下垂体腺腫の診断に至った1例

著者: 後藤克聡 ,   水川憲一 ,   山下力 ,   三木淳司 ,   桐生純一

ページ範囲:P.545 - P.550

要約 目的:静的視野で急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)が疑われ動的視野で下垂体腺腫の診断に至った1例の報告。症例:38歳の女性が右眼霧視と耳側の視野障害を主訴に近医を受診した。右眼のAZOORまたは球後視神経炎疑いで当科を紹介され受診した。所見:矯正視力は右1.0,左1.5で,Goldmann視野で右眼にMariotte盲点の拡大と傍中心暗点,左眼にⅠ/1aで耳側半盲所見を認めた。Humphrey中心10-2視野で再検したが左眼に異常はなかった。多局所網膜電図で異常はなく,AZOORは否定的であった。頭部MRI検査で下垂体腺腫が明らかとなった。結論:AZOOR様の視野異常を呈する場合,頭蓋内疾患の可能性がある。

文字や絵視標で固視検査ができる検眼鏡の開発―フィルターの効果について

著者: 高橋広 ,   吉田雅子 ,   田淵昭雄 ,   田辺厚

ページ範囲:P.551 - P.556

要約 目的:簡便に固視検査ができる検眼鏡の報告。対象と方法:文字と絵視標を内蔵した検眼鏡に,黄色,赤色,遮光用の3種のフィルターを組み込み,フィルターの有無による文字視認性と羞明の程度を,男性7名と女性5名が判定した。年齢は13~53歳で,網膜色素変性5名,錐体ジストロフィ5名,血管新生黄斑症1名,Leber視神経症1名を含み,7名に中心暗点,4名に求心性狭窄,1名に輪状暗点があった。結果:フィルターなしの状態では全例でまぶしさが強かった。黄色フィルター挿入ではまぶしさがあり,文字視認性が悪かった。赤色フィルター挿入で光量が減じ,視認性が向上した。遮光フィルター挿入で羞明がさらに減じ,視認性がよかった。結論:遮光フィルターを挿入した検眼鏡で,簡便に固視検査ができる見込みがある。

非典型的な経過の急性後部多発性斑状色素上皮症の1例

著者: 小林円 ,   井出尚史 ,   南早紀子 ,   浪川博美 ,   松原彩来 ,   布施恵理

ページ範囲:P.557 - P.561

要約 目的:非典型的な経過をとった急性後部多発性斑状色素上皮症(APMPPE)の1症例の報告。症例:46歳女性が2週間前からの両眼の霧視と頭痛で受診した。所見:矯正視力は左右眼とも1.2で,両眼に虹彩後癒着と前房に炎症所見があった。8日後に両眼の後極部に黄白色斑状病巣が多発し,左眼視力は0.6になった。フルオレセイン蛍光眼底造影で,斑状病巣は早期には低蛍光,後期には過蛍光を呈した。1か月後に斑状病巣は特発的に寛解し,左眼視力は1.2に回復した。夕焼け状眼底は生じなかった。初診から1か月後に頭部の脱毛が生じ,その6か月後に寛解した。1年後の現在まで経過は良好である。結論:本症例はAPMPPEと診断したが,虹彩炎,頭痛,脱毛などは原田病でのそれに類似し,両疾患の中間的な位置にある可能性がある。

若年発症サルコイドーシス/Blau症候群の1例

著者: 山中千尋 ,   江川麻理子 ,   林勇樹 ,   坂部和代 ,   三田村佳典

ページ範囲:P.563 - P.568

要約 背景:皮膚炎,関節炎,ぶどう膜炎が常染色体優性遺伝として発症する肉芽腫性疾患はBlau症候群と呼ばれる。目的:幼年で発症したサルコイドーシスとBlau症候群が疑われる小児の報告。症例:9歳男児が右眼視力低下で受診した。1歳で皮膚サイコイドーシス,2歳で関節炎を発症し,若年性特発性関節炎と診断された。3歳で汎ぶどう膜炎を発症し,サルコイドーシスと診断された。母がサルコイドーシス,兄が眼サルコイドーシスと診断されている。所見:矯正視力は右0.6,左1.5で,両眼に黄斑浮腫と乳頭の浮腫・発赤があった。プレドニゾロン内服で眼病変は軽快し,32日後には右眼視力が1.0に回復した。結論:若年で発症し,サルコイドーシスの家族歴がある症例では,サルコイドーシスとBlau症候群の可能性がある。

両眼に発症した劇症型急性網膜壊死の若年者例

著者: 三根正 ,   大野新一郎 ,   平田憲 ,   沖波聡 ,   牛山佳子

ページ範囲:P.569 - P.574

要約 目的:劇症型急性網膜壊死が両眼に発症した若年者の報告。症例:13歳男子が8日前からの左眼霧視と眼痛で受診した。矯正視力は右0.9,左手動弁で,左眼の前房に炎症所見があった。両眼に網膜静脈の拡張と蛇行,乳頭の発赤・腫脹,後極部の網膜剝離があった。左眼には眼底全面に黄白色滲出斑が多発し,急性網膜壊死と診断した。左眼の網膜剝離が拡大し,初診3日後にシリコーンオイル充塡を併用する硝子体手術と強膜輪状締結術を行った。左眼前房水から水痘帯状疱疹ウイルスが検出された。右眼は保存的に治療し,両眼の網膜は復位した。初診の4か月後に病状は安定し,右眼視力は1.2,左眼視力は0.03であった。結論:急性網膜壊死が疑われる症例では,両眼発症の可能性を考えて対処すべきである。

水痘ワクチン接種が奏効した再発性無疱疹性眼部帯状疱疹の1例

著者: 丸本達也 ,   小野浩一

ページ範囲:P.575 - P.579

要約 目的:再発を繰り返した無疱疹性眼部帯状疱疹(zoster sine herpete:ZSH)に対して水痘ワクチンが奏効した1例の報告。症例:65歳女性が2日前からの右眼深部痛で受診した。右側胸部に帯状疱疹の既往があった。所見:右眼のValleix圧痛点に強い圧痛があった。ZSHを疑い,抗ウイルス薬バラシクロビルを投与し,眼痛は軽減した。以後の1年間に3回の再発があった。水痘皮内反応が陰性で,特異的細胞性免疫の低下が判明した。水痘ワクチンを接種し,その7日後に眼痛が消滅し,3年後の現在まで再発はない。結論:ZSHで三叉神経痛が生じることがある。水痘皮内反応が陰性の場合には,水痘ワクチンが奏効する可能性がある。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

眼科DNAチップ研究会

著者: 上田真由美 ,   木下茂

ページ範囲:P.580 - P.582

 多くの疾患は,個人のもつ遺伝的素因に環境因子が加わり,発症することがわかってきている。これらの疾患の発症にかかわる体質をつかさどる遺伝的な要因として,HLA型ならびに遺伝子多型が挙げられる。HLA解析は古くより行われ,多くのHLA型が疾患の発症と深くかかわっていることが明らかとされてきた。また,2000年のヒトゲノムプロジェクト完了後には,全ゲノム解析による遺伝子多型解析が精力的に行われている。日本国内の眼科領域に限っても,緑内障,加齢黄斑変性症,近視,Behçet病,サルコイドーシス,Stevens-Johnson症候群について疾患関連遺伝子ならびにその遺伝子多型が明らかとなってきている。

 2012年10月25日(金),第66回日本臨床眼科学会のSIGとして,第13回眼科DNAチップ研究会が開催された。本研究会では,京都府立医科大学の森和彦(以下,敬称略)が緑内障について,京都大学の山城健児が加齢黄斑変性症について,横浜市立大学の水木信久がサルコイドーシスについて,京都府立医科大学の木下茂がStevens-Johnson症候群について,その遺伝子多型解析の現状を講演し,それぞれについて白熱した討論が行われた。ここでは4講演の講演要旨を報告する。

日本強度近視眼底研究会

著者: 大野京子

ページ範囲:P.584 - P.585

 本年の日本強度近視眼底研究会では,病的近視診療における基礎と臨床の融合をテーマにし,活発な討論が行われた。一般講演は6題あり,特別講演は1題行われた。

連載 今月の話題

人工角膜の進歩

著者: 宮田和典 ,   南慶一郎

ページ範囲:P.419 - P.423

 人工角膜は1700年代から使用されていたが,さまざまな合併症により普及しなかった。しかし,最近では,マテリアルやデザイン,手術手技の改良により,臨床的に有用な人工角膜が開発され,複数回の移植片不全,Stevens-Johnson症候群,瘢痕性角結膜上皮症,角膜化学熱傷といった全層角膜移植が困難な症例に対する有効な治療となりつつある。

何が見える? 何がわかる? OCT・第4回

網膜が厚くなる疾患2―黄斑浮腫

著者: 志村雅彦

ページ範囲:P.424 - P.430

Point

◎黄斑浮腫は厚みよりも形態を重視しよう

◎黄斑浮腫の形態から浮腫の病態を推測しよう

基礎からわかる甲状腺眼症の臨床

「甲状腺眼症って何ですか?」の巻!―その2

著者: 柿﨑裕彦

ページ範囲:P.432 - P.437

はじめに

 今回は,前回に引き続き「甲状腺眼症」に関する一般的な知見の解説です。つれづれなるままに書いてゆきますが,何のなんの,なかなか深い内容です。重症筋無力症の合併率の高さなど,ぞ~っとしてしまいます……。

つけよう! 神経眼科力・37

神経眼科疾患の薬物治療

著者: 中馬秀樹

ページ範囲:P.438 - P.442

 神経眼科疾患には3種類ある。治療しないと悪化するもの,治療してもしなくてもあまり変わらないもの,治療しなくてもよくなるもの,である。治療しないと悪化するものの代表は動脈瘤による動眼神経麻痺であり,治療しなくてもよくなるものの代表は虚血性の末梢性眼球運動神経麻痺であろう。そのような疾患は実は限られており,多くの疾患は,その治療が本当に効果的なのか(例えば非動脈炎性虚血性視神経症に対するステロイド治療),薬物治療とそれ以外の治療のどちらが効果的なのか(例えば甲状腺眼症に対するステロイド治療と放射線治療)明らかにされておらず,投与量や投与方法について統一したものがなく,またその効果についても常に討論となる。

 今回は,そのなかで,多施設ランダム化治療トライアルにてその効果が明らかにされた特発性視神経炎に対する薬物治療についてまず述べる。続いて,多施設ランダム化治療トライアルは行われていないが,多くの神経眼科医により効果が賛同されている動脈炎性虚血性視神経症に対するステロイド治療と顔面領域の痙攣性疾患に対するボトックス治療について述べる。

今月の表紙

網膜動脈ループ形成症

著者: 上野拓洋 ,   今井章 ,   保谷卓男 ,   根木昭

ページ範囲:P.431 - P.431

 症例は54歳,女性。前医より網膜血管異常を指摘され受診した。視力は右(1.0),左(0.7)で,両眼底の網膜動脈の著明な拡張・蛇行を認めた。蛍光眼底造影検査で網膜動脈のループ形成を認めたが,明らかな毛細血管床の脱落や血流の途絶,流入遅延はなかった。血液検査では過粘稠度症候群は否定的で,皮膚,外表に明らかな異常所見はなかった。頭部磁気共鳴血管造影(MRA)を施行したところ,脳動脈末端にもループ血管の形成を認めた。単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)を施行したところ,血流の左右差,血流低下部位はなかった。網膜電図,視野検査でも異常はなかったため,合併症に注意し,経過観察としている。

 撮影はHeidelberg社のSpectralis® HRA+OCTとトプコン社のTRC 50DXを使用した。造影剤流入初期には流入遅延の有無を確認するため,Spectralis®の動画モードで撮影した。中期,後期には末梢血管の蛇行を観察するため,より広範囲を撮れるTRC 50DXでパノラマ写真を作製した。

書評

日野原重明ダイアローグ

著者: 髙久史麿

ページ範囲:P.561 - P.561

 本書は日野原重明先生の講演録,インタビュー,座談会などを中心にまとめたもので,話の内容は,W・オスラー博士の数々の言葉の紹介,医学教育,研修制度,プライマリ・ケア,ホスピス,診療録,臨床疫学のあり方,EBM,看護教育など極めて広範囲にわたっている。

 日野原先生はさまざまなシステムを日本に導入された医学・医療の先駆者として,日本で最も尊敬されている医師である。本書を通読して痛感したのは,私たちが常日ごろ感じている医学教育や医療のあり方に関するさまざまな問題点を,1973年の座談会「英国の医療とプライマリ・ケア」(J. Fry氏,紀伊國献三氏,小林登氏)に始まり,2005年の座談会「誰がために記録はある」(児玉安司氏,阿部俊子氏)に至るまで,一貫して日野原先生が指摘されておられることである。「医療はscienceをベースにしたartである」ということをたびたび強調されていることも印象深い。

日本近現代医学人名事典【1868-2011】

著者: 早石修

ページ範囲:P.583 - P.583

 本書は,1868(明治元)年3月に明治政府が欧米医学を公式に採用して以来,2011(平成23)年末までに物故された医療関係者で,特にわが国の医学・医療の発展に貢献された3,762名を選んで,物語風に記録されたユニークな人名事典であります。何分にも膨大な内容であり,私自身,生化学という限られた基礎医学が専攻分野なので,医学・医療全体の問題を議論したり,評価することには必ずしも適任ではありません。それでもまず本書を通読して,最も重要な“人選”がきわめて公正で妥当であるという印象を受けました。

 次に個々の記載について,個人的に親しかった方々について詳しく調べました。いずれもおおむね正確な情報に基づいており,しかも専門的な記述以外に本人の性格,趣味,交際,家族など私的な紹介も多く,読み物としても興味深いものでした。以下,幾人かを収載人物の例として挙げます(敬称略)。

やさしい目で きびしい目で・160

外来診療で感じる「高齢化社会」

著者: 佐藤さくら

ページ範囲:P.587 - P.587

 日常の外来診療の中で次回の予約日を取る際,患者の都合が悪い場合の理由に変化が出てきたように思います。

 以前は「この曜日はショートステイ/透析/他院の受診etcがあるから」「習い事があるから」「友達と温泉に行くから(注:山形県は全市町村に温泉があり,日帰り温泉旅行は高齢者の間ではポピュラーな行事です)」など,患者自身の予定によって別の日に予約を取り直すことが大半だったように思います。最近は「病院に連れてきてくれる人の都合がつかないから」という理由が目立つようになりました。

臨床報告

ブリモニジン点眼液の眼圧下降効果と安全性

著者: 林泰博 ,   北岡康史

ページ範囲:P.597 - P.601

要約 目的:緑内障に対するブリモニジン点眼液の効果と安全性の報告。対象と方法:2012年7月までの3か月間に0.1%ブリモニジン点眼液を1日2回点眼した30例53眼を対象とした。男性10例,女性20例で,平均年齢は78歳であった。21眼ではプロスタグランジン製剤への追加,32眼ではブリンゾラミドからの変更であった。結果:追加群では眼圧が12.4±3.4mmHgから4週間後に10.2±2.4mmHgに有意に下降した(p=0.00005)。変更群では眼圧が15.9±3.1mmHgから4週間後に13.4±2.8mmHgに有意に下降した(p=0.00002)。充血,瘙痒感,点状表層角膜炎には両群とも変化はなかった。収縮期血圧は有意に下降した(p=0.04)。アレルギー性結膜炎と眼瞼炎が各5例に生じた。結論:緑内障に対するブリモニジン点眼で,4週間後に有意な眼圧下降が得られた。局所または全身的な副作用には注意が必要である。

インフリキシマブ中止後,ぶどう膜炎の再燃と神経Behçetの顕在化を認め,再導入した1例

著者: 岩嵜茜 ,   酒井勉 ,   谷口洋 ,   森田昌代 ,   常岡寛

ページ範囲:P.603 - P.607

要約 目的:Behçet病性ぶどう膜炎がインフリキシマブ投与で寛解し,その中断後に再燃し,神経Behçetが顕在化したために治療を再開した症例の報告。症例:65歳女性が左眼ぶどう膜炎で紹介され受診した。7年前にBehçet病と診断され,コルヒチンの投与を受けていた。所見:矯正視力は右0.9,左0.07で,両眼に虹彩後癒着と白内障,左眼に眼圧上昇があった。経過:左眼への濾過手術で眼圧は正常化した。1年後に前房蓄膿が左眼に生じた。網膜血管炎が生じ,初診から4年後にインフリキシマブ投与を開始した。ぶどう膜炎の再発はなくなり,14か月後に投与を中断した。その後ぶどう膜炎が再燃し,神経Behçetの所見が生じた。インフリキシマブの再投与で眼と神経所見は寛解した。結論:インフリキシマブの全身投与がBehçet病のぶどう膜炎と神経所見に奏効した。

カラー臨床報告

色素血管母斑症Ⅴ型に合併した早発型発達緑内障の1例

著者: 越生佳世 ,   南部裕之 ,   城信雄 ,   舘野寛子 ,   髙橋寛二 ,   爲政大幾

ページ範囲:P.591 - P.595

要約 背景:色素血管母斑症(phakomatosis pigmentovascularis)は,皮膚血管腫と色素性の母斑症が併発した状態であり,1947年に命名された。これには4型があるとされていたが,大理石様の皮膚斑を伴うⅤ型が2003年に報告された。目的:早発型発達緑内障が併発した色素血管母斑症Ⅴ型の症例の報告。症例:生後5か月の男児が紹介され受診した。顔面に単純性血管腫があり,全身に蒙古斑様の青色斑と大理石様の皮膚斑があり,色素血管母斑症Ⅴ型と診断されていた。所見:角膜の横径は左右とも13mmで,視神経乳頭の拡大と陥凹があり,早発型発達緑内障と診断した。経過:両眼に線維柱帯切除術を行った。術中所見として,強膜とSchlemm管に色素沈着があった。2年後に左眼の眼圧が上昇し,再度線維柱帯切除術を行った。Schlemm管の内外壁と強膜を貫通する血管に,2年前よりも強い色素沈着があった。4歳7か月の現在,左右眼とも眼圧は正常域にある。結論:本症例ではSchlemm管の色素沈着が緑内障の進行に関与した可能性がある。

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欧文目次

ページ範囲:P.414 - P.415

べらどんな コピー論文

著者:

ページ範囲:P.430 - P.430

 いまから50年ばかり前に論文の盗作事件が日本で起こった。実際には盗作ではなかったが,眼科が関係した国際的な出来事になった。

 海外の雑誌に掲載されたある論文がなかなか面白い内容なので,某国立大学の眼科で追試が行われた。その大学には英文の「紀要」があり,定期的に発行されているので,その結果をこの紀要に発表することにした。

べらどんな 冠名疾患

著者:

ページ範囲:P.509 - P.509

 人名の付いた病名,いわゆる冠名疾患には稀有なものが多い。もちろんバセドウ病やマルファン症候群のように例外があるので,20世紀になってからに限定してもよい。高安病(1908)と小口病(1910)がその具体例である。

 円板状黄斑変性は現在の日本でも誰でも知っている疾患になったが,昭和50年(1975)以前には日本には存在しなかったと考えている。時代はもうすこし遡るが,欧米でも似た状況にあった。

ことば・ことば・ことば 錠剤

ページ範囲:P.590 - P.590

 医薬分業になってから,医師からもらった処方箋を持って薬局に行くのが普通になりました。最近どうも気になるのが,薬代のほかに「調剤料」がついていることです。

 少し前までは,粉薬が普通でした。いくつかの薬を上皿天秤で測って混合し,それを乳鉢で混ぜ,五角形に折った薬包紙に入れたのを貰ったものです。調剤するのにこのような手間をかければ,それに対する代価を払うのも納得できるのですが,近頃のようにカプセルか錠剤ばかりだと,気分的になんだか抵抗があります。

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.609 - P.616

投稿規定

ページ範囲:P.618 - P.619

希望掲載欄

ページ範囲:P.620 - P.620

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.621 - P.621

アンケート

ページ範囲:P.622 - P.622

次号予告

ページ範囲:P.623 - P.623

あとがき

著者: 根木昭

ページ範囲:P.624 - P.624

 4月になり今年も新学期を迎えました。医学部は相変わらずの難関ですが,7~8年前に比べると定員は約1,300人増加しています。1,300人のなかには地域枠の学生が多く含まれています。これは医師の偏在,地域医療の崩壊に対処するために設けられた制度で,地域が奨学金を出して授業料や生活費を支援する代わりに,卒業後は一定の期間,地域医療に従事することを課すものです。そろそろ卒業生が出てきますが,全員が総合診療医になるのか,眼科医や耳鼻科医にはなれないのか,専門医資格取得は遅れるのかなど,彼らのキャリア形成をどのようにしていくかが課題です。卒業と同時に奨学金を返済して都会に出て行ってしまっては困ります。

 眼科新専攻医数も気がかりです。昨年は眼科専攻医減少に歯止めをかけるため,眼科の現状を正確に伝え,眼科の魅力をアピールする眼科サマーキャンプを箱根で開催しました。日本眼科学会,日本眼科医会,眼科啓発会議の主催によるものです。すぐには効果が出ないかもしれませんが,じわじわと効果が発揮され,眼科医が増えることを期待しています。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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