今月の表紙
網膜動脈ループ形成症
著者:
上野拓洋1
今井章1
保谷卓男1
根木昭2
所属機関:
1長野赤十字病院
2神戸大学
ページ範囲:P.431 - P.431
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症例は54歳,女性。前医より網膜血管異常を指摘され受診した。視力は右(1.0),左(0.7)で,両眼底の網膜動脈の著明な拡張・蛇行を認めた。蛍光眼底造影検査で網膜動脈のループ形成を認めたが,明らかな毛細血管床の脱落や血流の途絶,流入遅延はなかった。血液検査では過粘稠度症候群は否定的で,皮膚,外表に明らかな異常所見はなかった。頭部磁気共鳴血管造影(MRA)を施行したところ,脳動脈末端にもループ血管の形成を認めた。単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)を施行したところ,血流の左右差,血流低下部位はなかった。網膜電図,視野検査でも異常はなかったため,合併症に注意し,経過観察としている。
撮影はHeidelberg社のSpectralis® HRA+OCTとトプコン社のTRC 50DXを使用した。造影剤流入初期には流入遅延の有無を確認するため,Spectralis®の動画モードで撮影した。中期,後期には末梢血管の蛇行を観察するため,より広範囲を撮れるTRC 50DXでパノラマ写真を作製した。