臨床眼科67巻4号

2013年04月発行

特集 第66回日本臨床眼科学会講演集（2） 原著

文字や絵視標で固視検査ができる検眼鏡の開発―フィルターの効果について

著者： 高橋広¹ 吉田雅子² 田淵昭雄³ 田辺厚⁴

所属機関： ¹北九州市立総合療育センター眼科 ²吉田眼科医院 ³川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科 ⁴株式会社ナイツ

ページ範囲：P.551 - P.556

要約　目的：簡便に固視検査ができる検眼鏡の報告。対象と方法：文字と絵視標を内蔵した検眼鏡に，黄色，赤色，遮光用の3種のフィルターを組み込み，フィルターの有無による文字視認性と羞明の程度を，男性7名と女性5名が判定した。年齢は13～53歳で，網膜色素変性5名，錐体ジストロフィ5名，血管新生黄斑症1名，Leber視神経症1名を含み，7名に中心暗点，4名に求心性狭窄，1名に輪状暗点があった。結果：フィルターなしの状態では全例でまぶしさが強かった。黄色フィルター挿入ではまぶしさがあり，文字視認性が悪かった。赤色フィルター挿入で光量が減じ，視認性が向上した。遮光フィルター挿入で羞明がさらに減じ，視認性がよかった。結論：遮光フィルターを挿入した検眼鏡で，簡便に固視検査ができる見込みがある。

参考文献

1）石子智士：SLOを用いたリーディング検査．日本の眼科　75：1119-1122，2004

2）陳　進志・涌澤亮介・阿部俊明・他：微小視野計MP-1で測定した偏心固視症例における固視と視力，読書能力の関係．臨眼　62：1245-1249，2008

3）藤田京子：Preferred Retinal Locus（PRL）の評価．日本ロービジョン学会誌　10：20-22，2010

4）清水みはる・中村桂子・澤　ふみ子・他：偏心視の4症例―適切な補助具と生活指導．日本視能訓練士協会誌　40：127-135，2011

5）平野美恵子・毛塚剛司・菅野敦子・他：マイクロペリメータ（MP-1）による固視評価を利用した弱視治療の予後判定．眼臨紀　4：748-751，2011

6）高橋　広：高齢者におけるロービジョンケア―高齢視覚障害者の実態と訓練器としての眼底カメラの可能性．眼紀　51：1110-1114，2000

7）高橋　広・工藤正一：視覚障害者の就労の現状と課題―雇用を継続するためには．日本ロービジョン学会誌　9：13-18，2009

8）三輪まり枝：拡大読書器を用いたPreferred Retinal Locus（PRL）の獲得および偏心視訓練．日本ロービジョン学会誌　10：23-30，2010