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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科67巻8号

2013年08月発行

雑誌目次

特集 第66回日本臨床眼科学会講演集(6) 原著

網膜中心動脈閉塞症35例の臨床的検討

著者: 嶺崎輝海 ,   村松大弐 ,   川上摂子 ,   坪田欣也 ,   三宅琢 ,   服部貴明 ,   石川友昭 ,   若林美宏 ,   後藤浩

ページ範囲:P.1283 - P.1288

要約 目的:網膜中心動脈閉塞症の自験例での経過の報告。対象と方法:過去63か月間に受診した35例35眼を対象とした。男性24例,女性11例で,年齢は41~88歳,平均71歳である。発症から治療開始までが6時間以内の11例をA群,6時間以降の24眼をB群とした。視力はlogMARで評価した。結果:初診時の平均視力は,A群が2.61,B群が2.15で,最終視力はそれぞれ2.10と1.73であった。両群間に有意差はなかった。35眼中3眼に血管新生緑内障が発症した。2眼では頸動脈狭窄と糖尿病があり,1例には全身的な異常はなかった。結論:網膜中心動脈閉塞症での視力転帰は,早期に治療を開始しても不良であった。血管新生緑内障が併発することがあり,注意を要する。

高校入試直前に発症したネコひっかき病の1例

著者: 新美佑介 ,   黒岩真友子 ,   大家進也 ,   白木玲子 ,   望月清文 ,   大楠清文

ページ範囲:P.1289 - P.1294

要約 目的:高校入試直前にネコひっかき病が発症した症例の報告。症例:15歳男性が発熱に続き左眼視力低下を自覚した。解熱後も眼症状が持続したため近医を受診し,乳頭浮腫を指摘され当科紹介となった。5日後に高校入試を控えていた。初診時の矯正視力は両眼1.0で,両眼視神経乳頭の発赤腫脹,左眼底の漿液性剝離および白色滲出斑などの所見に加え,頸部リンパ節腫脹を認めた。ネコの飼育歴があり,初診時の血液検体からBartonella henselae抗体価の上昇がみられたことからネコひっかき病による視神経網膜炎と診断した。抗菌薬および副腎皮質ステロイド薬内服を行った。治療開始後,計3回の受験があり,すべてマスク着用で個室にて行われた。発症から7か月後の現在,両眼矯正視力は1.5で,視神経網膜炎の再発はない。結論:発症後早期の抗体価検索と治療開始で,ネコひっかき病の重症化を防ぐことができ,加えて各受験場の適切な対応により高校入試を無事完遂させることができた。

原発性上皮型眼瞼部悪性腫瘍の切除後の再建術についての検討

著者: 大湊絢 ,   尾山徳秀 ,   張大行 ,   江口功一 ,   福地健郎

ページ範囲:P.1295 - P.1298

要約 目的:眼瞼部の上皮型悪性腫瘍を切除した後の眼瞼再建方法と合併症の検討。対象:2011年までの11年間に新潟大学附属病院眼科で手術を行った72例を対象とした。内訳は脂腺癌37例,基底細胞癌31例,扁平上皮癌3例,悪性黒色腫1例で,平均年齢は73歳である。結果:眼瞼の前葉再建は局所皮弁が52例,単純縫着が15例で行われた。後葉再建が行われた64例はすべて全層欠損で,前葉再建と同時に行われ,遊離瞼板移植が38例,単純縫着が15例,硬口蓋粘膜移植が11例に用いられた。上眼瞼全層の横幅70%以上が欠損した症例では,術後合併症のため3例で再手術が行われた。結論:従来の当科の方針で,ほとんどの例では再手術なしに眼瞼の再建ができた。上眼瞼全層幅の欠損が70%以上の例で課題が残った。

眼部病変を契機に診断された多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)

著者: 山崎悠佐 ,   大塚慶子 ,   関向大介 ,   今井尚徳 ,   近藤仁美 ,   田口浩司 ,   安積淳

ページ範囲:P.1299 - P.1304

要約 目的:眼部病変を契機に多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と診断された症例を検討した。対象と方法:神戸海星病院または神戸大学附属病院を眼科受診し,所見からGPAを疑い診断に至った6症例を対象とし,診療録の後ろ向き調査を行った。結果:男女比2:1,初診時年齢37~70歳(中央値62歳),初発病変は眼窩病変3例,強膜炎3例であった。病理所見または臨床所見とPR3-ANCA陽性から確定診断した。眼窩生検した3例は病理診断できなかった。初診から診断までの期間は1か月未満~219か月(中央値4か月)で,最終視力は2眼で光覚なしとなった。結論:眼部所見からGPAを早期診断する方法の確立が望まれる。

近視緑内障眼における黄斑部網膜神経節細胞層関連層厚と視野障害の関係

著者: 片井麻貴 ,   大黒幾代 ,   稲富周一郎 ,   大黒浩

ページ範囲:P.1305 - P.1310

要約 目的:近視緑内障眼の黄斑部網膜神経節細胞層厚+内網状層(GCIPL)厚と視野障害との関係の報告。対象と方法:対象は屈折が-3.00D以下の緑内障眼39眼で,早期19眼,中期以降20眼,近視型乳頭16眼を抽出。光干渉断層計(OCT)で,GCIPL厚解析(GCA)を施行し,視野障害との相関を検討。結果:早期で視神経乳頭周囲平均網膜神経線維層厚(Avg. RNFL)の他3個のGCAパラメータ,中期以降で他4個のGCAパラメータと正の相関,近視型乳頭ではAvg. RNFLと相関がなく,2個のGCAパラメータと正の相関があった。結論:近視緑内障眼でGCAは中期以降や乳頭変形がある症例にも応用可能である。

眼内レンズによるモノビジョン法における近見時の両眼加算の検討

著者: 江黒友春 ,   天野理恵 ,   常廣俊太郎 ,   飯田嘉彦 ,   伊藤美沙絵 ,   清水公也

ページ範囲:P.1311 - P.1314

要約 目的:単焦点眼内レンズを用いたモノビジョン法の近見時の両眼加算を検討。対象と方法:術後6か月以上経過し,遠方両眼開放視力1.0以上の180例(男性56例,女性124例;平均年齢70±8歳)である。近見時の両眼加算を,近方視力が単眼視より両眼視時で一段階以上上昇したものと定義し,両眼加算あり群64例と両眼加算なし群116例で,術後屈折値・近見外斜位角度・近方瞳孔径・縮瞳率を比較した。結果:両眼加算あり群では非優位眼の術後屈折値-1.48±0.78D,近方瞳孔径2.51±0.46mm,両眼加算なし群ではそれぞれ-1.87±0.79D,2.70±0.43mmで両群間に有意差があり(p<0.05),近見外斜位角度と縮瞳率は有意差はなかった。結論:非優位眼の屈折値が-1.50D,近方瞳孔径が2.5mm程度で近見時の両眼加算が得やすかった。

フェムトセカンドレーザーによる角膜実質内乱視矯正切開術と多焦点眼内レンズ同時手術

著者: 北澤世志博 ,   安田明弘 ,   高橋洋子 ,   土信田久美子 ,  

ページ範囲:P.1315 - P.1320

要約 目的:フェムトセカンドレーザーを使用した角膜実質内乱視矯正切開術と多焦点眼内レンズ挿入術の同時手術成績の報告。対象と方法:対象は角膜乱視が両眼1.50D以上の白内障症例17例34眼で,年齢は47~68歳,平均55歳であった。術後1か月までの角膜乱視量,自覚的屈折度,裸眼および矯正視力を検討した。結果:角膜乱視量は術前の1.99Dから術後翌日には0.79Dまで有意に減少し,術後1か月は0.89Dで安定していた。術後1か月の等価球面屈折度は-0.19D,両眼遠方裸眼視力は1.42,両眼近方裸眼視力は0.50,矯正視力は1.46と良好であった。結論:今回施行した同時手術では,術後早期から乱視が安定して軽減し,良好な裸眼視力が得られた。

先天内斜視に対する手術既往をもつ成人斜視の解析と治療成績

著者: 岡本真奈 ,   木村亜紀子 ,   増田明子 ,   三村治

ページ範囲:P.1321 - P.1325

要約 目的:先天内斜視術後の成人斜視の特徴と問題点を明らかにする。対象:2004年からの7年間に,先天内斜視に対する手術既往があり,成人してから斜視治療を目的に当科を初診した36例(平均43.9歳)である。結果:初回手術(平均5.8歳)から当科での斜視手術までの期間は平均38.1年,当院受診時75%が外斜視で全体の72%が40 prism diopter(PD)以上の大斜視角であった。弱視合併の10例は全例が外斜視で,弱視合併群は有意に斜視角が大きかった(あり:76.0PD,なし:45.9PD)。当院での術後眼位は,交代性上斜位の合併とは相関を認めず,全体の72%が15PD以内となった。結論:先天内斜視術後は長期を経て大斜視角の斜視に至る可能性があるが,斜視手術により整容的満足は得られる。

シリコーンオイル併用硝子体手術を施行した朝顔症候群に伴う網膜剝離の1例

著者: 辻中大生 ,   宮田(下山)季美恵 ,   後岡克典 ,   西川(林)良子 ,   緒方奈保子

ページ範囲:P.1327 - P.1330

要約 目的:朝顔症候群に伴う網膜剝離に対して硝子体手術を行った症例の報告。症例:42歳の男性が右眼の視力低下を主訴に受診した。所見:視神経乳頭は朝顔様で,網膜は全剝離の状態であり,硝子体手術,シリコーンオイル置換を施行した。術後シリコーンオイルが網膜内に迷入したため,脳脊髄腔への移行を憂慮し,シリコーンオイルを抜去した。剝離が再発したためシリコーンオイル置換術を再施行し,乳頭周囲レーザー光凝固を追加し,網膜復位を得た。結論:朝顔症候群に伴う網膜剝離は視神経陥凹部と網膜下への交通が推測され,本症例では視神経乳頭周囲へのレーザー光凝固とシリコーンオイル置換が有用であった。

角膜染血を伴う硝子体出血に広角観察システム併用25G手術が奏効した1例

著者: 雪田昌克 ,   國方彦志 ,   小林航 ,   阿部俊明 ,   小林直樹 ,   中澤徹

ページ範囲:P.1331 - P.1336

要約 目的:白内障手術合併症による硝子体出血と角膜染血の症例に対し,広角観察システム併用25G小切開硝子体手術(MIVS)を行った1例を報告する。症例:81歳,女性。抗血栓薬を3剤内服下に近医で白内障手術を施行中,虹彩毛様体出血と急激な眼圧上昇を呈し,駆出性出血が疑われたため閉創した。40日後に,当院を紹介受診した。初診時に,左眼は光覚弁で強い角膜血染混濁と硝子体出血を認めた。通常のフローティングレンズでは手術遂行が困難であったが,広角観察システムを用いることにより術野が確保され手術に成功し,0.1の視力を得た。結論:強い角膜染血など前眼部状態が不良な症例に,広角観察システム併用25GMIVSは有用であった。

黄斑円孔閉鎖後に囊胞様黄斑浮腫をきたした2例

著者: 三輪裕子 ,   吉田章子 ,   藤本雅大 ,   山口泰孝 ,   三河章子

ページ範囲:P.1337 - P.1342

要約 目的:特発性黄斑円孔が手術で閉鎖した後に囊胞様黄斑浮腫が生じた2症例の報告。症例:62歳女性の左眼と61歳男性の左眼に特発性黄斑円孔が生じ,白内障手術と硝子体手術で内境界膜剝離を行った。1例では5日後に黄斑円孔が閉鎖したが,3か月後に囊胞様黄斑浮腫が生じた。ジクロフェナクナトリウム点眼で囊胞様黄斑浮腫は消失した。他の1例では手術の6日後に黄斑円孔が閉鎖した。1か月後に囊胞様黄斑浮腫が生じた。両眼に軽症のぶどう膜炎があった。ステロイド薬点眼でその6か月後に囊胞様黄斑浮腫は消失した。結論:特発性黄斑円孔が手術で閉鎖した後に,囊胞様黄斑浮腫が生じることがある。

孤立性網膜血管腫に続発した黄斑円孔の1例

著者: 山本智子 ,   石崎英介 ,   森下清太 ,   家久来啓吾 ,   鈴木浩之 ,   佐藤孝樹 ,   喜田照代 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.1343 - P.1347

要約 目的:光凝固後に黄斑円孔が生じた孤立性網膜血管腫の症例の報告。症例:40歳女性が2か月前からの左眼視力低下で受診した。祖母と祖母の妹が原因不明の疾患で失明している。両眼の耳側に孤立性網膜血管腫があり,左眼には滲出性変化と牽引性網膜剝離があった。両眼に光凝固を行った。1年後に再び左眼視力が低下して受診した。矯正視力は右1.5,左0.3で,血管腫の大きさには変化がなく,左眼に黄斑円孔があった。硝子体手術を行い,黄斑上膜と内境界膜を剝離し,SF6ガスを注入した。黄斑円孔は閉鎖し,視力は5か月後に0.6に改善した。結論:孤立性網膜血管腫では,光凝固後に黄斑上膜や黄斑円孔が生じることがある。

増殖糖尿病網膜症の硝子体手術後に診断された腫瘍随伴網膜症の1例

著者: 清水啓史 ,   齋藤航 ,   齋藤理幸 ,   大黒浩 ,   石田晋

ページ範囲:P.1349 - P.1355

要約 目的:糖尿病網膜症に対する硝子体手術後に腫瘍随伴網膜症と診断された1症例の報告。症例:58歳,男性。右眼視力低下を主訴に初診。両眼の硝子体出血を伴う増殖糖尿病網膜症の診断で,両眼に硝子体手術が行われた。術中術後に合併症はなく,検眼鏡的に糖尿病網膜症は沈静化したようにみえたが,手術の1年後に視力低下,網膜電図のa波減弱および求心性視野狭窄が進行した。全身検索で直腸癌が発見され腫瘍随伴網膜症と診断された。結論:高齢者で眼内手術の術後に原因不明の視機能障害が生じた際には,腫瘍随伴網膜症も考え全身検索を行うべきである。

続発緑内障を発症したSusac症候群の1例

著者: 錦織里子 ,   植木麻理 ,   小嶌祥太 ,   杉山哲也 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.1357 - P.1360

要約 目的:Susac症候群による続発緑内障と思われる1例の報告。症例:77歳,女性。両眼の高眼圧と視野障害進行にて受診。50歳時に両側難聴の既往がある。経過中,右眼前房に炎症細胞,両眼周辺部網膜動静脈の閉塞および黄斑部網膜異常血管があり,蛍光眼底造影検査で全周の周辺部網膜に無血管野があった。頭部MRIで多発性脳梗塞があり,Susac症候群と診断した。眼圧コントロールに右眼は線維柱帯切除術を要したが,左眼は網膜光凝固術のみで眼圧下降を得た。結論:本症での続発緑内障は,Susac症候群による網膜虚血が原因と考えられる。

悪性リンパ腫によるGarcin症候群の1例

著者: 岡本洋子 ,   田口朗 ,   石郷岡均 ,   秋元正行 ,   加藤智信 ,   渡邊光正 ,   塩﨑俊城

ページ範囲:P.1361 - P.1365

要約 目的:複視を初発症状とした悪性リンパ腫によるGarcin症候群の症例の報告。症例:70歳男性が40日前からの複視と左眼視力低下で受診した。所見と経過:矯正視力は右1.5,左0.6で,眼底に異常がなく,左眼に眼瞼下垂と全方向への運動制限があった。嚥下障害があり,左側の第3,4,6,9,10,12脳神経の障害があった。全身検査で悪性リンパ腫と診断された。磁気共鳴血管造影(MRI)で頭蓋底に腫瘍が疑われた。初診の11日後に呼吸障害で不帰の転帰をとった。結論:複視を初発症状としてGarcin症候群が発症することがある。

甲状腺眼症の下直筋肥大に対するトリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射の治療成績

著者: 伊藤学 ,   神前あい ,   井上立州 ,   舟木智佳 ,   水野かほり ,   西山功一 ,   井上吐州 ,   井上洋一

ページ範囲:P.1367 - P.1371

要約 目的:甲状腺眼症の下直筋肥大に対するトリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射(STTA)の治療成績を報告する。対象と方法:下直筋肥大にSTTAを施行し6か月間経過観察した78例78眼,年齢29~81歳(平均51歳)についてSTTA前後のMRIで下直筋断面積と信号強度比(下直筋/大脳白質)を比較し,年齢,性別,罹病期間,喫煙,甲状腺刺激抗体(TSAb),追加治療の有無,合併症を検討した。結果:STTA後の下直筋断面積とT2-SIRは有意に減少した。T2-SIR非改善群はTSAbが有意に高値で,追加治療あり群(44眼)は注射前T2-SIRが有意に高かった。結論:甲状腺眼症の下直筋肥大に対してSTTAは安全で有効な治療法であった。

Spectral-domain OCTにて網膜内層の菲薄化を認めた栄養欠乏性視神経症の1例

著者: 佐藤慎 ,   石子智士 ,   籠川浩幸 ,   吉田晃敏

ページ範囲:P.1373 - P.1379

要約 目的:栄養欠乏性視神経症の網膜所見を光干渉断層計で見た報告。症例:68歳,男性,アルコール中毒。栄養失調・貧血で救急搬送され入院5日後に視力低下を主訴に受診した。所見:矯正視力は両眼とも(0.1)。限界フリッカ値低下と色覚異常,両眼の中心暗点を認めた。血液検査で葉酸,ビタミンC,ビタミンB2が欠乏していたため,これらの補充療法を行った。治療開始後14週には視力は(0.6)となり,その他の視機能異常は回復した。治療後19週のspectral-domain OCT(SD-OCT)では網膜内層の菲薄化が観察され,治療後41週,61週の検査でも同様であった。結論:栄養欠乏性視神経症における網膜内層の菲薄化をSD-OCTを用いて定量的に評価することができた。

レボフロキサシン点眼液1.5%の周術期無菌化療法

著者: 南雅之 ,   長谷川裕基 ,   藤澤邦見

ページ範囲:P.1381 - P.1384

要約 目的:白内障手術前後の1.5%レボフロキサシン点眼液による無菌化の結果の報告。対象と方法:白内障手術を行った107例を対象とした。男性53例,女性54例で,平均年齢は74歳である。1.5%レボフロキサシン点眼液を手術の3日前から当日まで1日3回点眼し,手術の前後に結膜囊の細菌培養を行った。結果:点眼開始前の細菌陽性率は107例中60例(56%),投与後は4例(4%)で,60例中56例(93%)が無菌化した。術後の眼内炎の発症はなく,レボフロキサシンの点眼による副作用もなかった。結論:白内障手術の3日前から,1.5%レボフロキサシン点眼液の1日3回点眼で,結膜囊の無菌化率が向上した。

連載 今月の話題

粒子誘発性眼内炎:無菌性眼内炎の新しい病因

著者: 坂本泰二

ページ範囲:P.1249 - P.1253

 トリアムシノロン硝子体注射後の無菌性眼内炎の病因として,保存剤,エンドトキシン混入が指摘されてきたが,最近,粒子誘発性眼内炎という新しい病因が提唱された。本症は注射翌日に発症するが,後遺症を残さず自然寛快する。網膜疾患治療への有効性を考えると,ステロイド治療は今後も用いられるべき治療法であろう。

何が見える? 何がわかる? OCT・第8回

OCTを経過観察に役立てる―加齢黄斑変性の治療

著者: 丸子一朗

ページ範囲:P.1254 - P.1263

Point

◎OCTは加齢黄斑変性の診断だけではなく経過観察にも必須

◎滲出変化はOCTにおける網膜浮腫および漿液性網膜剝離の有無で判断

◎実際の再治療基準は視力低下とOCTの滲出所見の変化で判断

基礎からわかる甲状腺眼症の臨床

甲状腺眼症の治療「眼窩減圧術(ブルっ…)」の巻!

著者: 高橋靖弘

ページ範囲:P.1264 - P.1272

はじめに

 眼窩減圧術は,眼窩内の除圧を図る手術です。眼窩減圧術には眼窩壁を構成する骨を除去して眼窩容積を拡大させる方法と,眼窩脂肪を切除して眼窩内のボリュームを減少させる方法があります。甲状腺眼症における眼窩減圧術は,圧迫性視神経症,眼球突出に伴う角膜障害,および眼球突出による醜形に対して施行されます。

 眼窩減圧術では,複視,髄液漏,視神経障害などの合併症を発生する可能性があります。これらの合併症を起こさずに手術を遂行するためには,眼瞼・眼窩の解剖を理解しておくことが必須です。

 今回は,眼窩減圧術の各術式の詳細,実際の手術の流れを踏まえたうえで,「ブルっ……」とならないための解剖学的なポイントを解説していきます。

つけよう! 神経眼科力・41

神経眼科で注意すべき脳幹,小脳病変

著者: 橋本雅人

ページ範囲:P.1274 - P.1280

はじめに

 脳幹部,小脳障害で生じる神経眼科学的徴候については,これまでの「つけよう!神経眼科力」の連載の中で詳細に紹介されているため割愛させていただき,本稿では我々眼科医が知っておかなければならない緊急を要する脳幹,小脳病変,さらに頻度は少ないが脳幹,小脳に特異的に発症する中枢性疾患について述べたい。そして最後に,これらの中枢性疾患で生じる神経眼科的後遺症とその対策についても若干解説する。

眼科図譜・363

乳頭ループ形成をみた乳頭血管炎の1例

著者: 菅原大輔 ,   岡本紀夫 ,   丸山耕一 ,   國吉一樹 ,   松本長太 ,   中尾雄三 ,   下村嘉一

ページ範囲:P.1389 - P.1391

緒言

 網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion:以下,CRVO)は,30歳以下の若年者に発症することは稀である1)。近年,高齢者のCRVOの光干渉断層計(optical coherence tomograph:以下,OCT)の報告は多数あるが,若年者のCRVOの報告は少ない2)。今回,若年者に発症したCRVOのOCTの形態変化と視神経乳頭上の網膜静脈の血管の変化を3年間観察し,若干の知見を得たので報告する。

今月の表紙

出産後に増悪した網膜血管腫

著者: 中川喜博 ,   佐柄知世 ,   坂本泰二

ページ範囲:P.1281 - P.1281

 31歳,女性。右眼の小字症を主訴に紹介初診。右眼矯正視力0.8で,妊娠29週であった。右眼底の上耳側に3乳頭径大の血管腫があり,黄斑部に硬性白斑を認めた。家族歴はなく,他に中枢神経系・内臓病変も認めず,後天性網膜血管腫と診断。当初経過観察としていたが,出産後半年ぐらいより徐々に視力が低下し,黄斑部の白斑の集積も強くなった(妊娠,分娩経過特に異常なし)。授乳期を終え眼底造影検査施行。写真の時点で右眼矯正0.4。血管腫を取りまく3本の拡張した血管のうち,一番下方が流入血管であることを同定した。現在はその流入血管に対して適時光凝固を行い,血管腫の縮小を図っている。

 撮影はトプコンTRC-50LXを用いた。周辺部眼底写真の合成は,血管の走行を合わせることが難しいため,周辺部もカメラを煽り画角50°で撮影することで合成枚数を抑えた。写真の合成には,トプコンIMAGEnet2000パノラマ機能を使用し,3枚の眼底写真を合成した。

やさしい目で きびしい目で・164

新鮮なりんごとともに

著者: 勝呂慶子

ページ範囲:P.1385 - P.1385

 開業して25年目を迎えた。開業時に大先輩から貴女が開業しても,うまくいくわけはないと,言われた。それなりの診療はするけれどはっきり物を言いすぎるらしい。人当たりもあまり良くないらしい。

 以前から考えていた。たとえば果物屋さんに置き換えて考えてみる。ぶっきらぼうだけれど新鮮で美味しいりんごを売るのと,古いりんごを愛想良く売るのとどちらが良いのだろうか。もちろん,一番良いのは新鮮で美味しいリンゴを満面の笑みを浮かべて売るのが一番良い。しかし,人間すべてが完璧なことなどありえない。そこで,愛想の部分はスタッフに任せて,私はできるだけ新鮮なリンゴを売る努力をすることにした。

臨床報告

涙液層破壊時間(BUT)短縮型ドライアイ患者に対するヒアルロン酸ナトリウムとジクアホソルナトリウム点眼治療後の患者満足度

著者: 内野美樹 ,   内野裕一 ,   深川和己 ,   坪田一男

ページ範囲:P.1403 - P.1411

要約 目的:ドライアイに対し,ヒアルロン酸ナトリウムまたはジクアホソルナトリウム点眼で加療した結果の報告。対象と方法:両国眼科クリニックを受診し,ドライアイと診断された95例を対象とした。男性28例,女性67例で,年齢は20~89歳である。47例は3%ジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアス®),48例は0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ヒアレイン®)で加療した。ドライアイを涙液層破壊時間(BUT)短縮型と非短縮型に分け,それぞれについて治療開始後10週時に患者満足度を評価した。満足度は100点を満点とした。結果:脱落例を除くBUT短縮型のドライアイ14例でのジクアホソルナトリウム点眼に対する満足度は平均77.1点,同11例のヒアルロン酸ナトリウム点眼に対する満足度は平均62.1点であった。結論:BUT短縮型のドライアイでは,ヒアルロン酸ナトリウム点眼よりもジクアホソルナトリウム点眼が高い満足度が得られた。

カラー臨床報告

近視性脈絡膜新生血管に黄斑円孔網膜剝離を合併した3例

著者: 中道悠太 ,   高橋寛二 ,   石黒利充 ,   上田義朗 ,   有澤章子 ,   垰本慎

ページ範囲:P.1393 - P.1401

要約 目的:強度近視眼に脈絡膜新生血管(CNV)が発症し,同時またはその後に黄斑円孔網膜剝離が生じた3症例の報告。症例:症例はいずれも女性で,年齢はそれぞれ58,76,79歳であった。2例は片眼性で,罹患眼の屈折は,それぞれ-32.00D,眼内レンズ挿入眼,両眼発症の1例では左右とも-13.00Dであった。いずれも初診時にCNVがあった。黄斑円孔網膜剝離は,1例ではCNVに対するベバシズマブ硝子体内注射の11か月後,1例では眼内レンズ挿入眼でCNV発症から8か月後,他の1例では初診時からCNVと同時に発見された。3例3眼に硝子体手術を行い,網膜が復位したが,黄斑円孔は閉鎖しなかった。結論:CNVがあることは,黄斑円孔網膜剝離に対する手術後の網膜復位に影響しなかった。

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欧文目次

ページ範囲:P.1244 - P.1245

第31回眼科写真展 作品募集

ページ範囲:P.1282 - P.1282

 第67回日本臨床眼科学会(パシィコ横浜)会期中の2013年10月31日(木)~11月3日(日)に開催される「第31回眼科写真展(日本眼科写真協会発足30周年記念写真展)」の作品を募集します。

べらどんな 見えない色

著者:

ページ範囲:P.1304 - P.1304

 イヌを相手にしたテレビのコマーシャルが話題になっている。

 チョコレートで有名な会社がスイスにあり,ドッグフードも作るようになった。テレビでその宣伝をはじめたが,ちょっと工夫を凝らした。90秒の番組である。

べらどんな AMDの早期発見

著者:

ページ範囲:P.1365 - P.1365

 自分自身を診察できないことが,眼科医の大きな問題である。もしこれが内科医なら,血算などでかなりの範囲まで自分を簡単に診断することができる。

 眼底だけはチェックしておこうと思い,秋の学会のとき,展示してある眼底カメラで撮影してもらった。新式の無散瞳カメラである。

ことば・ことば・ことば 火

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 新薬かと思っていたら,実際にはずっと昔からあったということがあります。

 その例がコルヒチンでしょうか。これがベーチェット病の眼発作に利くことが発見されたのはかなり最近のことです。ところがこれには古い歴史がありました。

学会・研究会 ご案内

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投稿規定

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希望掲載欄

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著作権譲渡同意書

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アンケート

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次号予告

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あとがき

著者: 坂本泰二

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 大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した船橋洋一氏の「カウントダウンメルトダウン」という本を読みました。福島第一原子力発電所の事故について,徹底的な調査に基づいて書かれた本です。これを読むと,福島原発事故は,ほんの少し運が悪ければ,東日本はおろか日本全土が消滅したほどの歴史的重大事故であったことが,わかります。このような文書は,今後の政策立案や判断に欠くべからざる重要な記録となり得ます。昨今は,電子媒体による音声や画像の直接記録のほうが,文書記録よりも客観性に優れており,今後の主流になると喧伝されていますが,電子媒体は加工が容易であり普遍的信頼性があるとはいえません。勿論,文書記録も加工可能ですが,信頼性評価法が確立しており,少なくとも後世の判断材料にはなり得ます。文書記録の重要性は今後も減ずることはないでしょう。このことは科学においては,一層真実であり,科学における文書とは論文に他なりません。

 さて,今月は臨床眼科学会講演集の特集号です。本誌査読委員としての経験では,大学からの投稿論文は,一般的にスタイルや内容が整い,安心して読めるものが多いといえます。一方,開業医や市中病院からの投稿には,論文の形式が整っておらず,論文の体をなしてないものも時にはあります。しかしながら,むしろそれらの投稿論文から,投稿者の情熱が伝わってくることが少なくありません。まして,それらは忙しい診療の合間に書かれたものであることを理解しておりますので,何とか論文になるように,助言させていただいております。時には,厳しい意見を出すこともあるでしょうが,この段階こそが文書としての信頼性を保証するものであり,これを経ないものは論文としては認められません。助言を取り入れて完成した論文は,後世の判断を受け得る文書になりますし,投稿者は大きな達成感を得ることができるでしょう。学会発表だけでは,正式な記録になりません。私たちも努力しますので,大学勤務医,開業医を問わずに,これからも本誌に投稿していただきたいと思います。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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