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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科68巻10号

2014年10月発行

雑誌目次

特集 第67回日本臨床眼科学会講演集(8) 原著

Casey Eye Institute(CEI)cameraによる混濁水晶体画像の評価

著者: 初坂奈津子 ,   佐々木一之 ,   河上裕 ,   佐々木麻衣 ,   佐々木洋

ページ範囲:P.1413 - P.1420

要約 目的:混濁水晶体の徹照所見を記録するCEI camera systemの利便性と応用限界についてEAS-1000と比較した。対象と方法:無作為に選んだ83症例,142眼の白内障眼を対象とした。CEI cameraでの焦点合わせは虹彩前面に,EASでは核部中心間層とし,極大散瞳下で撮影した。結果:深度の異なる皮質混濁の情報量ではEASよりも多く,前方に皮質混濁をみる後囊下混濁はEASより鮮明に,核周辺部にあるretrodotsの描写もEASを上回ったが,核混濁の描写は不可能であった。結論:CEI cameraは容易な操作性,情報量の多さがあり,若干の改良でその利用価値が高くなる。

Polymer I/Aチップとmetal I/Aチップの灌流量と吸引量の比較

著者: 黒澤千花 ,   木澤純也 ,   小松真 ,   黒坂大次郎

ページ範囲:P.1421 - P.1426

要約 目的:Polymer I/Aチップ(polymerチップ)がmetal I/Aチップ(metalチップ)よりも吸引効率や前房の安定性が高い可能性があるかについての検討。方法:3種類のpolymerチップとmetalチップでの基礎吸引圧,初期吸引量(吸引開始後30秒間の吸引量),灌流量を計測し比較した。結果:3種類のpolymerチップはmetalチップより基礎吸引圧が低く,初期吸引量および灌流量が多かった。結論:Polymerチップは基礎吸引圧が低く初期吸引量が多いことから,立ち上がりよく多量の灌流液を吸引できるため吸引効率がよく,また,灌流量が多いことから前房の安定性も良好である可能性が考えられた。

多局所網膜電図における2次核成分の緑内障への応用の検討

著者: 高木誠二 ,   富田剛司 ,   長坂英一郎 ,   江口秀一郎

ページ範囲:P.1427 - P.1432

要約 目的:緑内障眼での多局所網膜電図の特徴と,網膜神経線維厚ならびにHumphrey視野との関係の報告。対象と方法:原発開放隅角緑内障22例31眼を対象とした。全例で矯正視力が0.5以上であり,多局所網膜電図,Humphrey視野,光干渉断層計(OCT)により検索した。多局所網膜電図については,中心窩から5°の距離での2次核成分のN/T比を鼻側と耳側視野とで算出し,視野とOCTによる所見と比較した。緑内障のない30眼で同様の検査を行い,対照とした。結果:緑内障眼と非緑内障眼とは,N/T比を0.563に設定することで,最も効率良く分離でき,74.2%の感度と90.0%の特異性が得られた。多局所網膜電図の2次核成分振幅のN/T比は,視野のパラメータと相関があり,網膜神経線維厚とには有意の相関がなかった。結論:多局所網膜電図の2次核成分振幅のN/T比は,緑内障による網膜障害の指標として有用である可能性がある。

コクサッキーウイルス感染を伴ったunilateral acute idiopathic maculopathy(UAIM)の1例

著者: 山田章悟 ,   平本裕盛 ,   三木克朗 ,   山田晴彦 ,   髙橋寛二

ページ範囲:P.1433 - P.1439

要約 目的:コクサッキーウイルス感染後に発症したunilateral acute idiopathic maculopathyの症例の報告。症例:30歳女性が4日前からの左眼の変視症と中心暗点で受診した。2週間前に長男に発熱と手足の発疹があり,本人にも咽頭痛と扁桃腺腫脹があった。所見:矯正視力は右1.5,左0.2であり,左眼黄斑部に色素脱失とこれを囲む白濁があった。フルオレセイン蛍光眼底造影で黄斑部に過蛍光,眼底自発蛍光で黄斑部に低蛍光とその周囲に過蛍光があった。光干渉断層計(OCT)で中心窩の網膜色素上皮の菲薄化と視細胞内外節接合部の障害などがあった。コクサッキーウイルスA10型抗体値は128倍,A16型抗体値は32倍であり,コクサッキーウイルス感染によるunilateral acute idiopathic maculopathyと診断した。授乳中であり,副腎皮質ステロイドの投与はしなかった。4か月後に視力は1.0になった。眼底には軽度の色素不同を残すのみとなり,OCTによる所見はほとんど正常化した。結論:コクサッキーウイルスによる感染はunilateral acute idiopathic maculopathyの原因になることがある。本症例の診断と経過の評価に,OCTと眼底自発蛍光が有用であった。

脈絡膜腫瘍様所見を示した脈絡膜サルコイド結節の2例

著者: 境友起夫 ,   大中誠之 ,   城信雄 ,   髙橋寛二

ページ範囲:P.1441 - P.1448

要約 目的:脈絡膜腫瘍に類似する脈絡膜結節を呈したサルコイドーシス2症例の報告。症例:1例は31歳,男性で,4年前に両眼のぶどう膜炎と続発緑内障,内科でサルコイドーシスと診断された。脈絡膜腫瘍の疑いで紹介受診した。他の1例は60歳,女性で,8年前からぶどう膜炎として加療中であった。脈絡膜腫瘍の疑いで紹介され受診した。所見:1例の右眼眼底に1.5乳頭径大の黄白色隆起塊,他の1例の右眼眼底に5乳頭径大の黄白色隆起塊があった。病変部はフルオレセイン蛍光眼底造影で過蛍光,インドシアニングリーン蛍光造影で分葉状低蛍光を呈し,enhanced depth imaging光干渉断層計(EDI-OCT)で結節状の低反射領域が脈絡膜にあった。脈絡膜サルコイドーシス結節と診断し,トリアムシノロンのテノン囊下注射で腫瘤は縮小した。結論:サルコイドーシスでは脈絡膜腫瘍に類似する結節が生じることがあり,診断にはEDI-OCTが有用であった。

Hemi-Inverted ILM flap technique手術を行った黄斑円孔の1年後経過

著者: 櫻井寿也 ,   木下太賀 ,   田野良太郎 ,   福岡佐知子 ,   高岡源 ,   真野富也

ページ範囲:P.1449 - P.1453

要約 目的:陳旧性黄斑円孔に対して,半周の内境界膜を反転させる術式を行った1年後の成績の報告。症例と方法:過去7か月間に本法を行った黄斑円孔の難治例9例9眼を対象とした。術式の適応基準は,黄斑円孔径が最小450μm以上で,最大800μm以上であり,矯正視力が0.3以下とした。手術1年後の所見を検索し,視力はlogMARとして評価した。結果:全9眼で円孔が閉鎖し,矯正視力は術前の0.85±0.33が,術後の0.33±0.21に有意に改善した(p=0.003)。光干渉断層計で観察した外境界膜と,視細胞の内外節接合部の所見は,2例のみで改善した。結論:陳旧性黄斑円孔に対する半周の内境界膜を反転させる術式により,9眼全例で円孔閉鎖が得られた。網膜外層の改善は9眼中2眼のみであり,機能回復は不十分であった。

B-mode超音波検査が鑑別に有用であったcapsular block syndromeの1例

著者: 山本裕香 ,   宮原照良 ,   増尾史織 ,   村田暢子 ,   村田敏規

ページ範囲:P.1455 - P.1458

要約 目的:超音波検査が診断に有用であったcapsular block syndromeの早期例の報告。症例:78歳女性が左眼に白内障手術を受け,術後高眼圧と浅前房が認められ,悪性緑内障の疑いで術後1か月に紹介され受診した。所見:矯正視力は右(0.6),左(0.8)で,左眼の等価球面度数は−5.13Dであった。初診時左眼圧は11mmHgで,眼内レンズ(IOL)が囊内に固定され,前囊縁はIOLの前面と全周で癒着していた。左眼の前房深度は2.2mmであった。細隙灯顕微鏡検査でIOLの後方に液体の貯留があり,Bモード超音波検査でIOLの4mm後方に膜状組織があった。白内障術後早期のcapsular block syndromeと診断し,水晶体後囊をレーザー切開した。速やかに前房深度が改善し,60分後の屈折は−2.88D,5週後に−1.88Dになった。矯正視力は1週後に(1.0)になった。結論:白内障術後に悪性緑内障が疑われたときには,capsular block syndromeの可能性があり,Bモード超音波検査も鑑別に有用である。本症例では後囊のレーザー切開で寛解した。

バルベルト緑内障インプラントのチューブ先端を毛様溝から挿入した1例

著者: 田辺芳樹 ,   伊藤勇 ,   植田俊彦 ,   高橋春男

ページ範囲:P.1459 - P.1462

要約 目的:角膜内皮細胞障害を伴った難治性緑内障に対し,バルベルト緑内障インプラント(BGI)のチューブ先端を毛様溝から挿入した症例の報告。症例:62歳,男性。25年前に右眼の原発開放隅角緑内障と診断。線維柱帯切除術を数回施行後,通院中だったが再び眼圧がコントロール不良になった。結膜の広範な瘢痕のためBGIの適応としたが,角膜内皮細胞障害が判明。毛様体扁平部挿入型インプラントも検討したが,インフォームド・コンセントを得たうえで,前房型インプラントのチューブ先端を毛様溝から後房へ挿入した。結果:術後6か月の現在まで経過良好である。結論:角膜内皮細胞障害を伴った難治性緑内障に対し,当術式は安全で有効であった。

フルオロメトロン点眼による眼圧変動

著者: 新田安紀芳

ページ範囲:P.1463 - P.1467

要約 目的:フルオロメトロンを継続点眼したときの眼圧変化の報告。症例と方法:過去16か月間に,鼻涙管閉塞例に対して鼻涙管チューブを挿入した128例128眼を対象とした。男性41例,女性87例で,年齢は14〜94歳,平均69歳である。手術眼に0.1%フルオロメトロンの点眼を1日4回行い,眼圧を1か月ごとに3か月後まで測定した。眼圧測定には空気眼圧計を用い,眼圧上昇が疑われる例には圧平眼圧計で確認した。眼圧が21mmHg以上で術前値よりも30%以上高い状態を,眼圧上昇と定義した。128例のうち4例が原発開放隅角緑内障として点眼加療中であり,眼圧はコントロールされていた。結果:手術前の眼圧は14.0±2.6mmHg(平均±標準偏差)であった。点眼開始後に,緑内障2眼を含む11眼(8.6%)で眼圧が上昇した。眼圧上昇は,4例では点眼開始から1か月後,7例では2か月以後に起こった。11眼中10眼では,フルオロメトロン点眼中止により眼圧が下降した。結論:0.1%フルオロメトロン点眼で,128眼中11眼(8.6%)で眼圧が上昇した。眼圧上昇を予見することは不可能であった。フルオロメトロン点眼で眼圧が上昇する可能性が周知されるべきである。

チューブシャント手術後の白内障手術

著者: 井上立州 ,   神前あい ,   伊藤学 ,   舟木智佳 ,   水野かほり ,   井上トヨ子 ,   西山功一 ,   井上吐州

ページ範囲:P.1469 - P.1472

要約 目的:チューブシャント手術後の白内障手術の術後経過の報告。対象と方法:対象はAhmed glaucoma valve術後に白内障手術を施行した10例10眼,平均年齢は57.0±13.2歳,緑内障の病型は,原発開放隅角緑内障が7眼,続発緑内障が3眼であった。結果:術前眼圧は平均17.9±4.7mmHg,術後眼圧は17.3±2.2mmHgであった。術後視力は全例で改善した。術中合併症は特になかった。白内障手術後に眼圧コントロールが不良となり,緑内障手術を施行した症例が4例あった。結論:チューブシャント手術後の白内障手術は,重篤な術中合併症がなく,通常の白内障手術と同様に実施できた。4眼で眼圧上昇のため緑内障手術を再施行した。

乳頭ピット黄斑症候群の術後黄斑円孔が長期経過で閉鎖した1例

著者: 岡本直記 ,   渡邊一郎 ,   水川憲一 ,   桐生純一

ページ範囲:P.1473 - P.1476

要約 目的:乳頭ピット黄斑症候群に対する硝子体手術後に生じた黄斑円孔が,長期経過で閉鎖した症例の報告。症例:58歳,女性。前医で左眼黄斑部網膜剝離と診断され紹介受診した。初診時視力は左(0.4)。光干渉断層像にて黄斑部網膜分離,網膜剝離,外層円孔を認めた。硝子体手術を施行し,乳頭ピット黄斑症候群と確定した。内境界膜剝離と20%六フッ化硫黄(SF6)ガスタンポナーデを施行した。術後4か月で全層黄斑円孔(MH)となり,再度SF6タンポナーデを行い,再手術後10か月で閉鎖が得られた。結論:ピット黄斑症候群に伴うMHは網膜下液の減少に伴い閉鎖が得られる可能性がある。

ラニビズマブからアフリベルセプトへ変更した加齢黄斑変性の検討

著者: 川上摂子 ,   若林美宏 ,   木村圭介 ,   上田俊一郎 ,   馬詰和比古 ,   八木浩倫 ,   後藤浩

ページ範囲:P.1477 - P.1482

要約 目的:加齢黄斑変性(AMD)のラニビズマブ硝子体注射(IVR)難治例に対するアフリベルセプト硝子体注射(IVA)変更後の短期成績の報告。対象と方法:対象はIVRからIVAに変更したAMD19例20眼(男性14例,女性5例,平均年齢75.4歳)で,初回IVA後6か月の視力と光干渉断層計(OCT)所見の変化を検討した。結果:IVA治療前後の平均視力は不変であった。OCT所見による有効率と再発率は,黄斑浮腫について100%と83%,網膜下液は100%と57%,網膜色素上皮剝離は86%と43%であった。結論:IVRからIVAへ変更した後は,形態的な改善例が多いが,短期に再発する例もある。

先天性涙囊ヘルニアに対して18ゲージ針を用いた造袋術を行い治癒した1例

著者: 鈴木佑佳 ,   松本直 ,   和田弘太 ,   杤久保哲男

ページ範囲:P.1483 - P.1486

要約 目的:先天性涙囊ヘルニアに対し,18ゲージの注射針で穿刺し,良好な結果が得られた症例の報告。症例:在胎37週で自然分娩で生まれた女児に,出生時から左眼内側に10mm×5mmの青灰色の腫瘤があった。先天性涙囊ヘルニアと診断した。生後5日目に,耳鼻科で鼻内鏡による直視下で,18ゲージ注射針で囊腫を切開し,造袋術を行った。その直後から腫瘤は消失し,以後1か月間,再発はなかった。結論:新生児の先天性涙囊ヘルニアに対し耳鼻科医の協力を求め,鼻腔鏡による直視下で穿刺を行い,治癒が得られた。

連載 今月の話題

統計学的解析で大きく広がる視野検査の可能性

著者: 朝岡亮

ページ範囲:P.1389 - P.1393

 近年の統計学の進歩は目覚ましく,特に緑内障では視野をはじめとしたデジタルデータを多く取り扱うため,数理的な研究と相性が良く,近年盛んに利用されている。本稿では,さまざまな統計手法を使用した視野研究の結果を紹介し,さらに今後どのように臨床の場にフィードバックさせていくべきなのかについて検証を行ってみたい。

目指せ!眼の形成外科エキスパート・第2回

眼の形成外科に必要な基本的な知識と手技—眼形成手術の掟:十四箇条(後半)

著者: 柿﨑裕彦

ページ範囲:P.1396 - P.1401

はじめに

 今回は第六〜十四条を解説します。項目や図の番号は先月からの通しにしてあります。

何が見える? 何がわかる? OCT・第21回

OCTで緑内障進行を評価する

著者: 富所敦男

ページ範囲:P.1404 - P.1411

Point

◎視野検査に比べOCT測定は再現性が高いので,緑内障の進行解析により適している可能性がある。

◎進行解析の方法論としてトレンド解析とイベント解析があるが,OCTによる進行解析にはイベント解析がより好適かもしれない。

◎視神経乳頭と黄斑部のOCT測定を比べると,初期緑内障では後者が,後期以降の緑内障では前者が進行解析に適する印象があるが,今後の検討課題である。

今月の表紙

扁平角膜

著者: 小林泰子 ,   近間泰一郎 ,   稲谷大

ページ範囲:P.1403 - P.1403

 症例は46歳。両眼の充血と痛みを感じ,近医を受診した。近医で扁平角膜を指摘され,精査目的のため当科を紹介された。両眼の角膜全周は,結膜血管組織が侵入していたが上皮障害はみられなかった。細隙灯顕微鏡による側方からの観察では,扁平角膜特有の角膜の平坦化がみられた。角膜横径は両眼10mmであった。

 撮影にはTOPCON社製SL-D8Z(Nikon D90搭載)を使用した。正面像,側方像ともに,スリット幅を全開にして主光源に拡散板をかけ,背景照明オフ,フラッシュステップ2にして倍率10倍で撮影した。なお,正面像は撮影光路を角膜の正面にして照明光路を耳側約30°,側方像は角膜の平坦化や浅前房の状態がわかりやすいように撮影光路を角膜のほぼ真横にして照明光路が角膜のほぼ正面にくるように設定した。本症例は,角膜周囲が結膜の侵入により混濁し透明な角膜の部分よりも結膜の占める面積が広いため,ハレーションが生じないように注意した。また,角膜輪部の状態をしっかり捉えるために,十分に開瞼しながら撮影した。

やさしい目で きびしい目で・178

「医者ログ」はなぜできないのか?

著者: 石岡みさき

ページ範囲:P.1487 - P.1487

 食べログをチェックしたことのない人,というのはこの時代少ないと思います。よく知り合いから「医者ログがあれば便利よねえ。」といわれますが,医療機関検索サイトで患者さんからのコメントがにぎやかというところはあまり見かけません。考えてみれば当たり前ですよね。食べログは名物レビュアーがいることからもわかるように,よりたくさん食べている人のコメントに価値があります。それぞれ得意分野もあるし,この人が好きなところなら美味しいだろう,という使い方もします。しかし,ラーメン屋200軒制覇! という個人がいても不思議ではありませんが,ひとりで眼科200軒受診! というのはありえません。やろうと思えばできるかもしれませんが,同じ条件=症状で受診は無理でしょう。眼科ではコンタクトレンズユーザーの定期検診くらいでしょうか? これも半年ごとの受診だとせいぜい100軒くらいにとどまり,何年もかかってしまうのでタイムリーな情報提供になりません。内科で定期検査に通院していても,毎回異なる医療機関に行く,というのはないでしょう。数軒の医療機関受診経験でコメントする,というレビュアーばかりでは活用できる「医者ログ」にはならないのです。

 そして,診療内容に対するコメントは具体的であればあるほどほかの患者さんの役立つ情報ですが,これは匿名で書いても医療機関側にはどの患者さんなのかわかってしまいます。当院も匿名ブログにクレームを書かれたことがありますが,どの患者さんかすぐわかりました。医療機関を受診する理由として「近い」というポイントは大事なので,感じの悪いクリニックであっても救急受診する可能性を考えるとなかなかネガティブコメントは書きにくくなるでしょう。ポジティブコメントもありますが,どうも「ステマ」の匂いがします。

臨床報告

VisuMax®を用いたlaser in situ keratomileusis(LASIK)の短期術後成績

著者: 髙田幸尚 ,   宮本武 ,   住岡孝吉 ,   高槻玲子 ,   雑賀司珠也

ページ範囲:P.1497 - P.1501

要約 目的:VisuMax®を使い,近視眼に対して行ったLASIKの短期成績の報告。対象と方法:過去4年間に同一医療施設で複数の術者がLASIKを行った55例109眼を対象とした。平均年齢は33.3±9.0歳で,術前の球面度数は平均−5.08±2.37Dであった。術中と手術の6か月後までの合併症と屈折,裸眼視力などを検索した。視力はlogMARで表示した。結果:術中の合併症として,suction lossが2眼,サイドカット部分からの出血が2眼に生じた。術翌日の裸眼視力の平均は−0.0843であり,6か月後の屈折は目標球面度数よりも0.185Dの過矯正であった。術後1か月での屈折は,−5.0Dよりも強い近視眼では有意の誤差があったが,これ以降の期間では,術前の近視が−5.0D以上または以下であったかは関係しなかった。結論:VisuMax®を使い,近視眼に対して行ったLASIKでは重篤な合併症がなく,目標球面度数に近い屈折と良好な裸眼視力が得られた。

心因性視覚障害をもつ小児への臨床心理的介入の試み

著者: 小野田直子 ,   小野木陽子 ,   清澤源弘

ページ範囲:P.1503 - P.1507

要約 目的:心因性視覚障害の小児に対する,臨床心理士による面接の試みについて報告する。対象と方法:心因性視覚障害と診断され,臨床心理士による面接を行った小児32例。面接は,独立した部屋にて多くは親子同席で1回30分程度実施した。視機能改善までに要した期間と本疾患への影響要因について分析した。結果:対象の72%に改善がみられた。診断から改善までの期間は,視力が約9か月,視野が約7か月で,臨床心理士の介入から改善までの期間はそれぞれ約4か月,約3か月であった。本疾患への影響要因としては,兄弟関係,友人関係が多かった。結論:臨床心理士による患児やその親への心理・社会的視点からの介入が,視機能改善までの期間を短縮する可能性を確認した。

トスフロキサシントシル酸塩水和物点眼液の有効性・安全性および低頻度分離株に対する有効性の確認

著者: 西田輝夫 ,   宮永嘉隆 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1509 - P.1519

要約 目的:トスフロキサシントシル酸塩水和物0.3%点眼液の臨床の場における有効性と安全性の確認および承認時に分離されなかった適応菌種に対する有効性の調査。対象:2006年10月〜2009年9月に本剤が投与された0〜101歳の1,269例を対象とした。結果:担当医師判定による有効率は96.1%(1,065/1,108例),評価基準判定に基づく改善率は83.1%(590/710例),細菌学的効果は84.1%(380/452株)であり,調査した3年にわたり良好な臨床効果を維持していた。副作用発現率は0.4%(5/1,249例)であり,重篤例はなかった。また,承認時に分離されなかった腸球菌属,クレブシエラ属,プロテウス属,モルガネラ・モルガニー,ヘモフィルス・エジプチウスに対する有効性を確認した。結論:臨床の場においてトスフロキサシン点眼液の高い臨床的有用性を確認できた。

カラー臨床報告

シクロスポリン全身治療が奏効した春季カタルの1例

著者: 稲葉万弓 ,   酒井勉 ,   高階博嗣 ,   伊藤正臣 ,   田中聡 ,   西本文俊 ,   葛西梢 ,   高木真由 ,   常岡寛

ページ範囲:P.1491 - P.1495

要約 目的:眼局所療法に反応せず,シクロスポリンの経口投与が奏効した春季カタルの症例の報告。症例:28歳男性が両眼の瘙痒感と異物感で受診した。1年前に左眼の水晶体再建術が行われ,1年前からアトピー性皮膚炎に対して加療中であった。所見:矯正視力は右1.2,左0.7で,両眼の瞼結膜に巨大乳頭があった。右眼に皮質白内障があり,左眼は眼内レンズ挿入眼であった。全身皮膚に瘙痒感を伴う皮疹があった。両眼にオロパタジン,左眼にデキサメタゾンを点眼した。眼所見は改善せず,左眼眼圧が上昇し,トラバタンズ点眼に切り替えた。初診から9か月後に皮膚科でシクロスポリン内服を開始し,眼所見が改善したが,1か月後に内服を中断した。1年後にシクロスポリン内服が再開され,結膜の巨大乳頭と角膜プラークは消失した。以後44か月後の現在までシクロスポリン内服を継続中で,眼病変の再発悪化はない。結論:アトピー性皮膚炎に併発した春季カタルに対し,シクロスポリン内服が奏効した。

書評

《眼科臨床エキスパート》黄斑疾患診療A to Z

著者: 髙橋寛二

ページ範囲:P.1496 - P.1496

 わが国の黄斑疾患学の二大碩学,岸 章治教授,𠮷村長久教授の手による『黄斑疾患診療A to Z』が上梓された。本書は眼科臨床エキスパートシリーズの1冊として編集されたものである。

 近年,黄斑疾患学はすさまじい勢いで進歩を遂げ,また診療に携わる眼科医の数も広がりを見せている。評者が黄斑疾患の診療に携わるようになったのは1980年代後半であったが,当時,加齢黄斑変性の治療はレーザー光凝固しかなく,中心窩下新生血管を中心窩ごと凝固していた。その頃,黄斑外来は,視力がほとんど改善しない患者ばかりを診療していたため,密かに「ため息外来」と呼ばれていたものである。当時,日大の松井瑞夫・湯澤美都子両先生による『図説 黄斑部疾患』がすでに出版されてはいたが,黄斑疾患の専門書はまだ少なく,加齢黄斑変性はわが国ではマイナーな疾患であった。その後,わが国でも加齢黄斑変性が増加し,疾患に注目が集まるに従って黄斑疾患に興味を持つ眼科医が増加し始めた。さらにOCT,抗VEGF療法をはじめとする診断・治療の急速な進歩も相まって,若い有望な眼科医たちもこぞって黄斑疾患の診療に携わるようになり,加齢黄斑変性は学会でも「華」の疾患の一つとなった。本書はこのような黄斑疾患学の進歩をひしひしと実感させてくれる新しいスタンダードテキストといえる。

欧文目次

ページ範囲:P.1386 - P.1387

べらどんな 新発見

著者:

ページ範囲:P.1394 - P.1394

 ドライアイの原因を発見した(と思った)。

 この疾患は,いまから40年前にはほとんどなかった。医局員をしていた昭和40年ごろの14年間に,1例も視たことがないのである。

第32回眼科写真展 作品募集

ページ範囲:P.1412 - P.1412

 第68回日本臨床眼科学会(神戸ポートピアホテル・神戸国際展示場)会期中の2014年11月13日(木)〜11月15日(土)に開催される「第32回眼科写真展」の作品を募集します。

べらどんな EKC

著者:

ページ範囲:P.1453 - P.1453

 戦争があると病気が流行する。中世の十字軍は中東からペストを持ち帰ったし,ナポレオンがエジプトに出兵したときには,トラコーマがイタリアに持ち込まれ,1812年のモスクワ遠征で,これがヨーロッパ中に大流行することになった。

 第二次世界大戦では,流行性角結膜炎が戦後の日本に大流行した。どうも占領軍と一緒に来たらしい。

ことば・ことば・ことば 秋

ページ範囲:P.1490 - P.1490

 はじめての英語の授業では,「秋はautumn」と習いました。当時は海外にいましたが,内地の中学校に転校すると,「秋はfall」だと言われ,びっくりしました。これは英語と米語の違いだったようです。

 その後,いろいろ調べてみると,イギリスでも秋をfallと呼んでいた時代がありました。方言だったのですが,これが海を渡ってアメリカに行き,そこで一般化したということです。

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.1521 - P.1532

投稿規定

ページ範囲:P.1534 - P.1535

希望掲載欄

ページ範囲:P.1536 - P.1536

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1537 - P.1537

アンケート

ページ範囲:P.1538 - P.1538

次号予告

ページ範囲:P.1539 - P.1539

あとがき

著者: 稲谷大

ページ範囲:P.1540 - P.1540

 みなさまのお手元に,本号が届いている頃には,残暑も終わり秋晴れのすがすがしい季節になっていることと思います。

 さて,本号の特集は,第67回日本臨床眼科学会講演集の8回目になりますが,今回で講演集は終了になります。最近は,海外の雑誌に論文を投稿する機会が多くなり,日本語の雑誌への原著投稿が年々減ってきているとうかがっております。だからといって,すべての国内での研究発表が英文雑誌に投稿してアクセプトされるわけでもないですし,症例報告は受け付けない国際雑誌も増えてきています。これからの日本語学術雑誌は,みなさんの研究成果や学会発表を記録として残すために原著論文を採用していく役割と,日本語のレビューを掲載して,最新の知識を読者のみなさんと共有していく役割を担っていくのかな? と思います。特に「今月の話題」の「統計学的解析で大きく広がる視野検査の可能性」と連載「何が見える? 何がわかる? OCT」の「OCTで緑内障進行を評価する」は,緑内障を専門としている私にも大変勉強になる内容ですし,柿﨑先生の「目指せ!眼の形成外科エキスパート」は,門外漢の私にもわかりやすく楽しい連載になっています。バランス良く構成された臨床眼科を末永くご愛読いただければ幸いです。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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