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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科68巻13号

2014年12月発行

文献概要

特集 新しい術式を評価する

黄斑円孔に対するInverted ILM flap technique

著者: 栗山晶治1

所属機関: 1大津赤十字病院眼科

ページ範囲:P.1708 - P.1714

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はじめに

 2000年前後の内境界膜剝離の登場および進化(染色など)とともに特発性黄斑円孔の閉鎖率は90%以上の好成績を収めるようになったが,円孔径が500μm以上の大型黄斑円孔や強度近視の黄斑円孔および黄斑円孔網膜剝離では依然としてその円孔閉鎖率は低いものであった。

 Inverted internal limiting membrane flap technique(以下,内境界膜翻転法)は,2010年にMichalewskaら1)によって発表された特発性大型黄斑円孔(径>400μm)に対する硝子体手術において用いる技法である。この論文では,内境界膜翻転法を用いることにより大型黄斑円孔の閉鎖率は98%となり(対象とした内境界膜剝離法の閉鎖率は88%),12か月後の術後視力においても内境界膜翻転法は内境界膜剝離法よりも有意に良好な改善を得たことが示されている。特筆すべきことは,その円孔の閉鎖形態で,いわゆるflat-open(網膜色素上皮が露出しているタイプ)な閉鎖は内境界膜翻転法ではわずか2%にとどまり(内境界膜剝離法では19%),ほとんどが円孔底の網膜色素上皮の上に神経網膜の存在を認めた(図1)。

 その後,2013年に筆者ら2)が強度近視黄斑円孔および強度近視黄斑円孔網膜剝離に対しての内境界膜翻転法の有効性を報告し(図2),また2014年にはMichalewskaら3)が同様に強度近視黄斑円孔に対する内境界膜翻転法の有効性を報告している。

 一方,2014年にImaiら4)は特発性大型黄斑円孔へのインドシアニングリーン(indocyanine green:以下,ICG)染色による内境界膜翻転法により網膜色素上皮細胞の広範な萎縮を認めたことを報告している。

 また,内境界膜翻転法と関連した術式として,2013年にShiragaら5)は分層黄斑円孔に対する黄斑前膜翻転法の有効性を報告しており,さらに2014年にはMorizaneら6)が内境界膜剝離を施行済の難治性黄斑円孔に対して自己内境界膜をtransplantする方法の有効性を報告している。Shimadaら7)は強度近視の中心窩分離に対して黄斑部の内境界膜剝離をする一方,中心窩上の内境界膜を残す方法により良好な成績を報告している。

 このように内境界膜翻転法およびその亜型法の有効性がさまざまな疾患で確認されてきている一方,その円孔閉鎖機序については不明な点が多く,また,その技法の詳細においてはさまざまであり一定のコンセンサスを得たものはいまだない。

 ここではまだ発展途上にあると思われるこの内境界膜翻転法について,現時点で知りうる限りの情報を記載したい。

参考文献

1)Michalewska Z, Michalewska J, Adelman RA et al:Inverted internal limiting membrane flap technique for large macular holes. Ophthal-mology 117:2018-2025, 2010
2)Kuriyama S, Hayashi H, Jingami Y et al:Efficacy of inverted ILM flap technique for the treatment of macular hole in high myopia. Am J Ophthalmol 156:125-131, 2013
3)Michalewska Z, Michalewska J, Dulczewska-Cichecka K et al:Inverted internal limiting membrane flap technique for surgical repair of myopic macular holes. Retina 34:664-669, 2014
4)Imai H, Azumi A:The expansion of RPE atrophy after the Inverted ILM flap technique for a chronic large macular hole. Case Rep Ophthal-mol 5:83-86, 2014
5)Shiraga F, Takasu I, Fukuda K et al:Modified vitreous surgery for symptomatic lamellar macular hole with epiretinal membrane containing macular pigment. Retina 33:1263-1269, 2013
6)Morizane Y, Shiraga F, Kimura S et al:Autologous transplantation of the internal limiting membrane for refractory macular holes. Am J Ophthalmol 157:861-869, 2014
7)Shimada N, Sugamoto Y, Ogawa M et al:Fovea-sparing internal limiting membrane peeling for myopic traction maculopathy. Am J Ophthalmol 154:1-9, 2012
8)櫻井寿也・高岡 源・木下太賀・他:Inverted Internal Limiting Membrane Flap Techniqueとその変法.第36回日本眼科手術学会総会2013抄録
9)河田康祐・平田 憲・沖波 聡:内境界膜翻転法を用いた黄斑円孔に対する硝子体手術の早期成績.眼臨紀 5:733-736,2012
10)Michalewska Z, Michalewski J, Odrobina D et al:Surgical treatment of lamellar macular holes. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 248:1395-1400, 2010
11)Hayashi H, Kuriyama S:Foveal microstructure in macular hole surgically closed by inverted internal limiting membrane flap technique. Retina 2014 Jul 24.[Epub ahead of print]

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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