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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科68巻5号

2014年05月発行

文献概要

特集 第67回日本臨床眼科学会講演集(3) 原著

全身麻酔下の腹臥位での頸髄症手術後に無光覚に陥った1例

著者: 針谷春菜1 菊地未来1 土山麻貴1 川村隆枝2 野呂充1

所属機関: 1国立病院機構仙台医療センター眼科 2国立病院機構仙台医療センター麻酔科

ページ範囲:P.645 - P.649

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要約 目的:全身麻酔下で頸髄症の手術を受け,その直後に片眼が失明した症例の報告。症例:60歳男性に右眼視朦が突発し,院内往診を依頼された。整形外科で頸髄症の手術を受けた直後であった。手術は腹臥位による全身麻酔下で行われ,手術時間は2時間20分,麻酔時間は3時間20分であった。糖尿病の既往があり,12歳からインスリン治療が行われ,45歳で汎網膜光凝固を受けていた。所見:右眼には光覚弁がなく,眼球運動は全方向で制限されていた。右眼に結膜浮腫,眼瞼下垂,眼瞼腫脹があり,Hertelによる眼球突出度は右22mm,左16mmであった。右眼角膜に皺壁があり,眼底の色調は蒼白で桜実紅斑があった。CT検査で頭蓋内に異常所見はなく,MRIで右眼の外眼筋腫脹があった。眼窩圧上昇による網膜中心動脈閉塞症と診断した。1か月後の右眼視力は無光覚弁であった。結論:本症例は,全身麻酔中に眼窩が圧迫されたための,網膜中心動脈閉塞症を伴う虚血性眼窩コンパーメント症候群であると推定される。

参考文献

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2)Newman NJ:Perioperative visual loss nonocular surgeries. Am J Ophthalmol 145:604-610, 2008
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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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