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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科69巻1号

2015年01月発行

文献概要

特集1 眼感染症—知っておくべきことから最新の治療まで

MRSA,MRCNS感染症

著者: 星最智1 外園千恵2

所属機関: 1国立長寿医療研究センター眼科 2京都府立医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.18 - P.23

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はじめに

 ブドウ球菌属はヒトに対する病原性の違いから,黄色ブドウ球菌とコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci:CNS)に大別される。CNSは表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis),腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus),Staphylococcus haemolyticusなど複数菌種の総称である。ヒトから検出されるCNSでは表皮ブドウ球菌が最も多い。CNSは健常結膜囊からの検出菌の40〜60%を占め,正常細菌叢の構成菌種の1つと考えられる1,2)。一方,黄色ブドウ球菌はエンテロトキシンやTSST-1などの病原因子を有し,皮膚感染症,化膿性骨髄炎,敗血症,食中毒などの各種感染症を引き起こす。

 黄色ブドウ球菌は鼻腔,腋窩,外陰部などの湿潤部位から検出されやすいが,鼻腔の黄色ブドウ球菌を除菌すると他部位からの検出率が低下することから,鼻腔が主たる生息部位と考えられている3)。黄色ブドウ球菌の健常鼻腔保菌者は,20〜30%程度といわれている3)。白内障術前患者295例の保菌状況をみた筆者らの調査では,17.9%が黄色ブドウ球菌の鼻腔保菌者であった4)。黄色ブドウ球菌の鼻腔保菌者は,短期間保菌しているintermittent carrierと,1年以上といった長期間保菌しているpermanent carrierに分けることができる3)。Permanent carrierは表皮ブドウ球菌よりも病原性の高い菌を長期間保菌していることになるので,黄色ブドウ球菌感染症を起こしやすい集団と考えられる。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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