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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科69巻13号

2015年12月発行

雑誌目次

特集 これからの眼底血管評価法

広角眼底撮影装置

著者: 大島裕司

ページ範囲:P.1736 - P.1743

はじめに

 近年,広角眼底カメラシステムの出現に伴い,超広角眼底撮影が普及しつつある。従来の眼底カメラは,撮影画角が35〜60°で後極の撮影が中心であり,周辺部の病変を撮影するためには患者に上下左右眼球を動かしてもらい撮影する必要がある。さらに同時に周辺部まで確認するためにはその写真をパノラマ処理する必要があり,かなり煩雑であった。広角眼底撮影システムは,撮影が画角で約102°(眼底で約200°)の撮影ができる。そのため広角眼底カメラは眼底の周辺部まで撮影が可能であり,1枚の写真で多くの情報を高画質で得ることが可能である。

 本稿では,現在わが国で使用できるOptos社が開発したOptos® 200Tx(図1a)とハイデルベルグ社のウルトラワイドフィールドレンズを用いた超広角走査レーザー検眼鏡(図1b)について解説する。

SD-OCT

著者: 辻川明孝

ページ範囲:P.1744 - P.1750

はじめに

 眼底血管評価法としては,眼底写真を用いたものが長らく中心であった。古くはScheieによる高血圧網膜症の分類,網膜血管の高血圧性変化・硬化性変化を分類したKeith-Wagener-Barkeの分類が有名である(表1)1)。これらの分類は主観的な評価であり,同一検者が評価しても再現性が低いことが常に指摘されてきた。現在,このような評価を行う機会は少ない。

 その後,Wisconsin大学で開発されたIVANというソフトウェアを用いた視神経乳頭周囲の動静脈径の評価が大規模に行われるようなった。視神経乳頭を中心に撮影された眼底写真からIVANを用いて乳頭周囲動静脈径を計測する(図1)。太いほうからそれぞれ6本の動静脈径の値を用いてCRAE(central retinal artery equivalent),CRVE(central retinal vein equivalent)という値を算出する。この方法はsemi-automaticな手法であり,再現性が比較的高いため眼底動静脈径評価のスタンダードとして多くの大規模研究で用いられてきた2)。この方法は眼底写真からの評価であるので,理論的には血管内腔の横径を測定している。しかし,動脈硬化の強い高齢者の動脈は境界が不鮮明になり,測定しにくいことも多い。また,クオリティの低い写真からの評価では誤差を生じやすい。

OCT angiography

著者: 野崎実穂

ページ範囲:P.1752 - P.1762

はじめに

 OCT angiographyは,造影剤を用いずに網脈絡膜循環を描出する新しいテクノロジーである。OCT angiographyの原理は,血流の動きを抽出して網脈絡膜循環画像を構築するもので,非侵襲的に網脈絡膜循環を検査できるため,注目されている。一方で,OCT angiographyでは,従来の眼底造影で検出されていた“漏出”“貯留”“組織染”といった所見を捉えることができず,眼底造影では解析される“造影早期”“造影後期”といった画像も得られない。また,現在のところは,われわれが使用できるOCT angiographyの画角は6mm×6mmが解析可能な最大の画角であるため,従来の造影検査に完全に置き換わることはないが,黄斑部や視神経乳頭の経時的経過観察には十分といえる。さらには,従来のフルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)やインドシアニングリーン眼底造影(indocyanine green angiography:IA)では,病変の描出は二次元に限られるが,OCT angiographyでは三次元の層別の詳細な解析が可能なため,今後,病態の解明などにも有用と期待されている。本稿では,わが国で承認されているRTVue XR AvantiTM OCT(Optovue社)を中心に解説する。

Laser speckle flowgraphy

著者: 小暮朗子

ページ範囲:P.1764 - P.1773

はじめに

 これまで長きにわたり,眼底の血流動態に関する研究が蓄積されている。動物実験の血流速度測定の試みとして,主にマイクロスフェア法1)および水素クリアランス法2)を用いた研究が挙げられる。いずれも組織の血流量を絶対値で評価できる測定法であるが,個体への侵襲が大きいため臨床応用は不可能であった。その後,人の眼底血流速度測定として,laser Doppler法が開発された3)。Rivaら4)は,人眼の網膜血管からドプラ信号を検出することに成功し,反射レーザー光を2か所から眼底に照射することで血流速度の絶対値を得ることを可能とした。これを用い国内外において多くの研究が報告され,眼底血流動態研究の幕開けとなった5)

 一方,laser speckle flowgraphy(LSFG)は,わが国発信の眼底血流測定機器である6)(図1a)。開発当初は,1回で眼底を走査する領域は1mm×1mmと狭小であったが,現在では8.6mm×4.6mm(画角21°)までに拡大した(図1b)。現行型LSFG-NAVI(ソフトケア社/NIDEK社)では,臨床医の要望に合致したさまざまな解析ソフトを搭載した,独自性の高い血流解析装置に進化している。2009年の保険収載から「眼底カメラⅡ(蛍光眼底造影検査)」で算定することができるようになり,国内に急速に普及した。LSFGは,造影検査と異なり非侵襲的で,測定も短時間で簡便であるうえ,血流のリアルタイムの定量評価が可能である。本稿では,LSFGの基本的な原理,測定方法ならびに臨床的有用性について紹介する。

Retinal oximetry

著者: 林篤志

ページ範囲:P.1774 - P.1779

はじめに

 網膜は組織あたりの酸素消費量が生体内で最大の臓器である。網膜には豊富な血流が脈絡膜血流と網膜血流の2つから供給されている。網膜の代謝状態を知るための手がかりの1つとして,網膜血管の酸素分圧や酸素飽和度の測定(retinal oximetry)が挙げられる。実際に臨床の症例で網膜酸素飽和度などの代謝情報を得るためには非侵襲的方法で安全に実施できることが望ましい。非侵襲的に網膜血管の酸素飽和度を測定する方法としてスペクトロフォトメトリーを用いる方法がある。

 現在,わが国においては未認可であるが,アイスランドで開発され,すでに欧州では臨床使用に承認されているオキシマップT1(Oxymap社)は,その簡便性からいくつかの疾患で使用されており,各疾患における網膜血管の酸素飽和度に関する情報が増えつつある。筆者らもこのオキシマップT1を使用しており,オキシマップT1を用いての網膜血管酸素飽和度測定の方法や,いくつかの眼底疾患での網膜血管酸素飽和度の結果について述べる。

AO-SLO

著者: 伊藤逸毅

ページ範囲:P.1780 - P.1784

はじめに

 眼底撮影の方法は,昔は眼底カメラが唯一の方法であったが,近年は走査レーザー検眼鏡(scanning laser ophthalmoscope:SLO)や光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)などさまざまな方式のものがある。しかし,どの方式のものであっても分解能に限界があり,画素数など検出する情報量をどんなに増やしても解像度はあまり向上しない(図1)。これは主に角膜および水晶体で発生する収差により焦点がぼやけてしまうためである。この収差は検眼鏡だけでなく顕微鏡,望遠鏡などあらゆる光学的な観察において常に生じるものであるが,その収差を補正する装置が,補償光学(adaptive optics:AO)である(図2)。このAOは,もともとは天文学における天体観測時の大気で発生する収差を補正して高解像度で天体を観測するために開発されたものであったが,これが眼底観察装置に導入されたわけである。

 最初にAOが組み込まれた眼底観察装置は眼底カメラであった1)。そして,その後,ただ単に錐体細胞を撮影するだけでなく,短波長感受性錐体(short wavelength sensitive cones:S-cone),中波長感受性錐体(medium wavelength sensitive cones:M-cone),長波長感受性錐体(long wavelength sensitive cones:L-cone),の3種類の錐体細胞がそれぞれ初めて撮影されるなど2),錐体細胞を1つひとつ同定して観察,定量,評価するなどさまざまな研究が行われるようになった3)

今月の表紙

Pit黄斑症候群による網膜分離

著者: 久保田大紀 ,   後町清子 ,   亀谷修平 ,   鈴木康之

ページ範囲:P.1720 - P.1720

 症例は65歳,男性。もともと両緑内障に対し近医で定期経過観察されていたが,徐々に右視力低下を自覚し,pit黄斑症候群が疑われ当科を紹介受診した。初診時視力は右(0.8),左(1.0),眼圧は眼圧下降点眼薬にて右9mmHg,左8mmHgであった。前眼部,中間透光体に異常はなく,右眼底に黄斑浮腫および視神経乳頭陥凹を認めたが,明らかな乳頭小窩はなかった。左眼底は視神経乳頭陥凹を認めた。光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)にて,中心窩から視神経乳頭部にかけて連続した網膜分離を認め,pit黄斑症候群と診断した。その後,網膜分離は増悪していない。

 撮影には高深達OCTであるDRI OCT-1 Atlantis(Topcon社)と補償光学(adaptive optics:AO)眼底カメラrtx1TM(Imagine eyes社)を使用した。OCTのスライス軸は180°,スライス幅は12mmとし,連続した網膜分離が観察できるように,目盛り付き固視表を患者に追視させながら撮影した。AOでは撮影部位を網膜内層に調節し,中心窩を中心とした放射状の網膜分離を観察した。ともに網膜分離が空間的に把握できるよう留意しながら撮影した。

連載 今月の話題

加齢黄斑変性の新たな視点—注目される萎縮型加齢黄斑変性

著者: 髙橋寛二

ページ範囲:P.1721 - P.1733

 萎縮型加齢黄斑変性は今後わが国でも増加する可能性がある重要疾患である。前駆病変として,従来の軟性ドルーゼンに加えreticular pseudodrusenやrefractile drusenの重要性,本年策定されたわが国の診断基準と注目されるOCT所見,その進行の特徴と治療の現況について述べる。

知っておきたい小児眼科の最新知識・12

OCTが開いた小児網膜硝子体構造研究

著者: 横井匡

ページ範囲:P.1786 - P.1792

point

1)硝子体の構造がOCTによって明らかにされつつある

2)後部硝子体皮質前ポケットは2歳頃から形成が始まる

3)ピット黄斑症候群は後極に存在する異常な硝子体の牽引によって引き起こされる可能性がある

目指せ!眼の形成外科エキスパート・第16回

眼表面の敵—睫毛内反症と睫毛乱生症に対する治療

著者: 幸島究

ページ範囲:P.1794 - P.1797

はじめに

 東洋人の小児によくみられる「さかまつげ」と「蒙古ひだ」。これらは,いずれもわれわれがもつ解剖学的特徴と密接に関連しています。したがって,日々の診療で蒙古ひだ(内眼角贅皮)を伴うさかまつげ(睫毛内反症)の子どもに出会う機会がおのずと多くなります。頻繁に遭遇する疾患ですからしっかり知っておいて損はありません。

 次に睫毛乱生症。これは眼表面への悪影響が大きく,しかも治療が容易ではない難敵です。簡単によい結果が得られるものでないという認識を患者さんと共有したうえで対策を立てていくことが大切です。

 まぶたが原因となるこの「眼表面の大敵」について一緒に勉強してまいりましょう。

書評

医療レジリエンス 医学アカデミアの社会的責任

著者: 柴垣有吾

ページ範囲:P.1785 - P.1785

 本書は2015年に京都で開催されたWorld Health Summit(WHS)のRegional Meetingで取り上げられたトピックをそれぞれの専門家が解説したものに加えて,同会議の会長を務められた京都大学医療疫学教授の福原俊一先生による世界のリーダーへのインタビュー記事から成っている。WHSの全体を貫くテーマは「医学アカデミアの社会的責任」とされ,さらにそのキーワードとして医療レジリエンスという言葉が用いられている。

 大変に恥ずかしい話ではあるが,私はこれまでレジリエンス(resilience)という言葉の意味をよく知らなかった。レジリエンスはもともと,物理学の用語で「外力によるゆがみをはね返す力」を意味したが,その後,精神・心理学用語として用いられ,脆弱性(vulnerability)の対極の概念として「(精神的)回復力・抵抗力・復元力」を示す言葉として使われるようになったという。今回,評者がこの書評を依頼された理由を推測するに,評者が最近,超高齢社会における現代医療の限界・脆弱性を指摘していたことにあると思われる。もっともその指摘は身内に脆弱高齢者(frail elderly)を抱えた個人的体験によるもので,アカデミックな考察には程遠いものである。

帰してはいけない小児外来患者

著者: 前野哲博

ページ範囲:P.1792 - P.1792

 小児診療について,全国すべての地域・時間帯を小児科医だけでカバーすることは不可能であり,実際には救急医や総合診療医などの「非小児科医」が小児診療に携わる機会は多い。特に総合診療医には「地域を診る医師」としてあらゆる年代層の診療をカバーすることが期待されており,実際,2017年度から新設される総合診療専門医の研修プログラムにおいても,小児科は内科,救急科とともに必修の研修科目として位置付けられている。

 このような小児診療に関わる非小児科医にとって,最低限果たさなければいけない役割は何だろうか? さまざまな意見があるかもしれないが,最終的には「帰してはいけない患者を帰さない」ことに尽きるのではないだろうか。たとえ自分ひとりで診断を確定したり,治療を完結したりできなくても,「何かおかしい」と認識できれば,すぐに小児科専門医に相談して適切な診療につなぐことができるからだ。

医療政策集中講義 医療を動かす戦略と実践

著者: 坂本すが

ページ範囲:P.1808 - P.1808

 そこはハーバード白熱教室さながらの熱気であった。講師も受講生も皆一緒になって議論する。若いナースもいればベテランのドクターもいる。どうやら医療職種だけというわけでもない。日本の大学の一般的な授業風景とは異なる世界がそこにあった。社会人向けの講座であるから,いろいろな人が集まっているのであろうが,年齢も職種も風貌も異なる人々が,何についてこれほど熱い議論を交わしているのだろうか。

 東京大学公共政策大学院の医療政策教育・研究ユニットが社会活動として実施する「医療政策実践コミュニティー」。通称H-PACは,患者支援者,政策立案者,医療提供者,メディアの4つの異なる立場の者から構成される。受講生は常にミックスチームを作って,共に政策提言や事業計画書の成果物を作り上げる。

やさしい目で きびしい目で・192

男性と女性のモチベーションの違いを理解して最大限に支援したい

著者: 大野京子

ページ範囲:P.1799 - P.1799

 私が眼科医を志した理由は,ほかの多くの先生方と同様に,「眼底の美しさに魅せられたから」である。特に眼底のなかでも,直視下にみる網膜血管の美しさ,に感動した。最初の原著論文は,「原発性マクログロブリン血症における網膜症の1例」であり,本症でみられるソーセージ状の静脈拡張のくびれの部分が,細静脈が静脈本幹に流入する部位に一致することを蛍光眼底造影で見いだしたものである。本当に小さな発見であるが,この論文が自分の原点だと思う。以来,ICG蛍光眼底造影で脈絡膜血管が見える美しさ,OCTで見える強膜内血管など,血管が見える感動はますます強くなり,今日まで続いている。研究に対する自分のポリシーは,「医学部の研究は患者さんを救うためにある。そのためには1つでもいい,ちっぽけなことでもいい,真実を明らかにすることだ」ということであり,教室のみんなにこのことをいつも伝えている。そして,「定説を鵜呑みにする心」からは真実は生まれない。

 このような自分自身の経験や,多数の女性医局員を見てきた経験で,もしかしたら男性と女性の仕事に対するモチベーションは違うのではないかと感じている。

臨床報告

28病日から免疫吸着療法を施行した抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎の1例

著者: 田辺芳樹 ,   伊藤勇 ,   高良由紀子 ,   高橋春男

ページ範囲:P.1803 - P.1807

要約 目的:第28病日から開始した免疫吸着療法が著効を示した抗アクアポリン(AQP)4抗体陽性の視神経炎の報告。症例:54歳の女性が3日前からの左眼の視力低下,視野欠損,眼痛で受診した。矯正視力は右1.2,左0.4であった。左眼には相対的求心路瞳孔反応障害が陽性であった。MRIで球後視神経炎視神経に相当する所見があり,第26病日に抗AQP4抗体が陽性であることが判明した。多発性硬化症や脊髄炎を示唆する所見はなく,視神経脊髄炎関連疾患である抗AQP4抗体陽性視神経炎と診断した。2クールのステロイドパルス療法は効果がなく,第28病日から免疫吸着療法を開始した。第46病日には左眼視力が1.0になり,以後314病日後の現在まで再発や脊髄炎はない。結論:抗AQP4抗体陽性視神経炎の症例に対し,ステロイドパルス療法は奏効せず,免疫吸着療法が著効を示した。

網膜動脈閉塞症の予後因子の検討

著者: 中谷雄介

ページ範囲:P.1809 - P.1814

要約 目的:過去9年間の網膜動脈閉塞症(RAO)の予後因子を検討する。対象と方法:厚生連高岡病院眼科を受診したRAOの54例54眼を対象とした。網膜中心動脈閉塞症(CRAO)27例,網膜動脈分枝閉塞症(BRAO)27例であった。平均年齢は71.1歳。年齢,性別,初診時視力,基礎疾患,発症から初診までの時間,線溶療法の有無,RAOのタイプについて,小数視力3段階以上改善または蛍光眼底造影(FA)で再疎通を改善と定義し,改善に関係する因子をロジスティック回帰分析で行った。また最終視力にかかわる因子を重回帰分析で検討した。結果:RAOの初診時視力(logMAR)0.68±0.68,最終視力0.78±1.01でCRAO,BRAO群においても有意差はなかった。基礎疾患は高血圧が最も多かった。脳梗塞を合併すると視力またはFAで改善しにくく,最終視力には初診時視力,年齢,BRAOが関係した。結論:RAOの改善(視力およびFA)には脳梗塞の既往が,最終視力には初診時視力,年齢,BRAOが関係した。

涙小管炎に角膜潰瘍を併発した1例

著者: 松浦峻行 ,   田尻健介 ,   角南健太 ,   米澤昂 ,   吉川大和 ,   三村真士 ,   清水一弘 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.1815 - P.1819

要約 目的:重症の角膜潰瘍を併発した涙小管炎の1例を報告する。症例:83歳,女性。右眼に多量の眼脂と結膜充血,角膜潰瘍を認め,視力は眼前手動弁に低下していたため抗菌薬で治療を開始した。涙点より排膿があったため涙道内視鏡検査を施行したところ,涙小管内の菌石と総涙小管閉塞を認めた。涙道内を郭清することで眼脂は著明に減少したが,結膜充血は遷延し,角膜の菲薄化はさらに進行した。フルオロメトロン点眼を追加することで充血は消退したが角膜はDescemet膜瘤となった。眼脂の鏡検と培養から放線菌が同定された。結論:放線菌による涙小管炎に角膜潰瘍を併発した1例を経験した。放線菌感染は角膜実質を溶解させる炎症を生じることがある。

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欧文目次

ページ範囲:P.1719 - P.1719

ことば・ことば・ことば 蘭学事始

ページ範囲:P.1802 - P.1802

 2015年の今年は,杉田玄白(1733-1817)の『蘭学事始』が書かれてから,ちょうど200年になります。

 これは印刷されたものではなく,写本の形で伝えられました。幕末の頃,神田聖堂の裏にある露店にその1冊があり,福沢諭吉が明治2年に木版として出版しました。その後,幾通りもの写本が発見され,題名にも,『和蘭事始』や『蘭東事始』などいろいろあります。

べらどんな あちらでは

著者:

ページ範囲:P.1814 - P.1814

 中谷宇吉郎の随筆を愛読している。北海道帝国大学の第三物理学教室の初代教授であり,世界をリードする独創的な業績を挙げた。

 昭和24年(1949)に招かれてアメリカに行った。電気冷蔵庫や洗濯機,それに通信販売が普及していることに驚いている。当時は「あちらでは」というのが,新鮮な感じに聞こえたらしい。

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.1820 - P.1828

希望掲載欄

ページ範囲:P.1832 - P.1832

アンケート用紙

ページ範囲:P.1834 - P.1834

次号予告

ページ範囲:P.1835 - P.1835

あとがき

著者: 鈴木康之

ページ範囲:P.1836 - P.1836

 先日開催された第69回臨床眼科学会は好天のもと大盛会のうちに終わりました。年々規模が大きくなり充実していく臨床眼科学会に驚くばかりです。

 さて,臨床眼科も本年度12月号となります。今号の目玉はなんといっても髙橋寛二先生にご執筆いただいた「今月の話題」「加齢黄斑変性の新たな視点—注目される萎縮型加齢黄斑変性」です。滲出型加齢黄斑変性も,もちろん重要な話題ではありますが,さすがに最近はお腹いっぱいという気もしないではありません。一方,萎縮型加齢黄斑変性は,頻度も比較的少なく,また治療法も確立されていなかったため,これまであまり注目を集めていませんでした。しかしながら,ここのところの診断技術の進歩や疾患概念の進展等は目覚ましいものがあり,高齢化社会を見据えて今後どんどん重要な疾患になっていくと思われます。その萎縮型加齢黄斑変性に関する髙橋先生によるUp to dateかつ詳細な解説は大変勉強になります。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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