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神経眼科学を学ぶ人のために フリーアクセス
著者: 岸章治1
所属機関: 1群馬大・眼科学
ページ範囲:P.474 - P.474
文献購入ページに移動本書は9章から構成されている。第1章は解剖と生理である。眼球運動には衝動性と滑動性追従運動があり,前者は「随意的眼球運動の大部分を占める急速な眼球運動で,……反射的にみられることもある」,後者は「移動している指標を常に網膜の中心窩に保つために生じる滑らかな運動」と明快に説明されている。第2章は診察法である。問診は発症状況,疼痛の有無,日内変動と発症後の経過,家族歴,手術歴をさまざまな可能性を考えながら聴取する。視診は極めて大切である。歩行状況,頭位,顔貌・容貌,眼球突出度,眼瞼の状態を注意深く観察する。その後,眼位と眼球運動を検査する。本書の知識を活用すれば,問診と視診だけで診断をかなり絞り込むことができるだろう。第3章は視神経・視路疾患である。視神経に腫脹をきたす疾患には,乳頭腫脹,うっ血乳頭,視神経炎,視神経周囲炎,乳頭血管炎,虚血性視神経症がある。乳頭腫脹(disc swelling)は「視神経乳頭が境界不鮮明となり隆起している状態」を指し,さまざまな原因からなる。そのうちのうっ血乳頭(papilledema,choked disc)は頭蓋内圧亢進による乳頭腫脹を指す。英語表記に注意が必要である。視神経炎は抗アクアポリン4抗体陽性など新知見が満載である。第4章から第7章は眼球運動障害,眼振・異常眼球運動,眼瞼の異常,瞳孔異常をきたす疾患など神経眼科の神髄とも言える分野である。MRIが欠かせない。第8章は眼窩に異常をきたす疾患で甲状腺眼症,感染,骨折を扱っている。第9章は全身疾患と神経眼科である。本書にはClose Upというコラムが38項あり,最新のトピックや診断のコツを扱っており,大変役に立つ。
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