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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科69巻5号

2015年05月発行

文献概要

特集 第68回日本臨床眼科学会講演集(3) 原著

着色レンズによる眼内レンズ挿入術後に黄斑部の網膜変性が進行した網膜色素変性の1例

著者: 明尾潔12 明尾庸子1 上田俊介3 加藤帝子1

所属機関: 1あけお眼科医院 2慶應義塾大学医学部眼科学教室 3上田眼科

ページ範囲:P.719 - P.726

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要約 目的:網膜色素変性がある眼に白内障手術と着色眼内レンズを挿入した経過の報告。症例:50歳女性が右眼の視力障害で受診した。10年前に他医で網膜色素変性と診断された。所見と経過:矯正視力は右0.3,左1.2で,右眼に後囊下白内障があった。両眼に網膜色素変性の典型とされる所見があり,眼底後極部の色調が良好な範囲は,左眼よりも右眼で狭かった。左右眼とも視力は不変であったが,6年後に右眼に超音波乳化吸引術と着色眼内レンズ挿入を行った。手術は6分で終了し,術中に問題はなかった。手術前のHumphrey視野計によるMDは−28dBであった。手術の10か月後に視力は0.7になり,MDは−30dBであった。手術の18か月後に視力は0.3になり,MDは−30dBであった。手術の55か月後に右眼視力は0.05,MDは−31dBで,後極部全体が蒼白な網膜変性になった。左眼の矯正視力は1.2であった。パネルD15による検査で,右眼に高度の視機能障害があった。結論:網膜色素変性では,白内障手術後に視機能が改善しても,後極部の網膜変性が進行して視機能障害が生じることがある。

参考文献

1)西田朋美・鶴岡三恵子・川瀬和秀・他:網膜色素変性症の白内障手術に対する眼科医の意識.臨眼 66:503-508,2012
2)明尾 潔・明尾庸子・平沼帝子:網膜色素変性の暗順応検査と周辺部残存視野.臨眼 67:345-350,2013
3)徳川英樹・切通 洋・山本修士:網膜色素変性における白内障手術.臨眼 60:801-803,2006
4)牛尾直美・新井栄華・佐藤栄寿・他:網膜色素変性における白内障手術成績の検討.眼臨 101:1065-1067,2007
5)池田陽子・丸山幾代・前田忠郎・他:白内障による遮光により病勢が遅れたと考えられた網膜色素変性例.あたらしい眼科 17:291-293,2000
6)Akeo K, Saga M, Hiida Y et al:Progression of visual field loss in patients with retinitis pigmentosa of sporadic and autosomal recessive types. Ophthalmic Res 30:11-22, 1998
7)西田朋美:網膜色素変性症の白内障手術.日本の眼科 85:312-313,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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