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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科69巻6号

2015年06月発行

文献概要

特集 第68回日本臨床眼科学会講演集(4) 原著

視神経障害を発症したと思われるANCA関連血管炎の1例

著者: 伊野田悟1 吉田淳1 川島秀俊1

所属機関: 1自治医科大学眼科学講座

ページ範囲:P.869 - P.873

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要約 目的:抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎に視神経障害が発症したと推定される1症例の報告。症例:74歳女性が右眼視力の低下で受診した。以前からぶどう膜炎が両眼にあり,プレドニゾロンを内服していた。右眼に白内障手術と難聴の既往があった。所見:矯正視力は右0.1,左1.2で,眼圧は右5mmHg,左16mmHgであった。右眼に前房の炎症所見と硝子体混濁があった。蛍光眼底造影で後部ぶどう膜炎の所見があった。左眼には病的所見はなかった。MPO-ANCAが高値で,難聴の既往と合わせ,内科でANCA関連血管炎と診断された。プレドニゾロン内服を継続した。5か月後に左眼視力が低下し,その3週間後に受診した。矯正視力は右0.3,左0であり,蛍光眼底造影で左眼乳頭の低蛍光があった。ANCA関連血管炎に関連した後部虚血性視神経症が推定された。左眼視力は回復しなかった。結論:ANCA関連血管炎に関連した視神経症は,多彩で難治性であることを本症例は示している。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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