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『此事難知』
著者: 中泉行弘1 林尋子1 安部郁子1
所属機関: 1研究会
ページ範囲:P.924 - P.927
文献購入ページに移動『湯液本草』を著した王好古(1200頃-1264)が,最後に書いたといわれる著作がこの『此事難知』である。岡西為人は『中国醫書本草考』の中で,王好古の著作のうち「これだけが東垣没後の作と見られる」と述べている。また,「李濂『医史』,『東垣十書』,『補遼金元藝文志』などはこれを李杲の書としているが,『四庫提要』はそれを誤りとし,この書は傷寒に関する李杲の説を好古がj収(ほうしゅう)したもので李杲の『傷寒会要』が伝存しない今日では,李杲の論議はこの書によってその一端をうかがうほかはないと述べられている」とあり,『此事難知』が王好古の著作でありながら,師匠の李東垣の考え方を知る大きな手がかりとして使われていることを示している。
当館所蔵の『此事難知』には慶長年間の古活字版,寛永版のほか,3種の『東垣十書』の中に含まれるものや,医統正脈本からとった人民衛生出版社の影印版(1956)がある。また,今回『済生抜萃』に方剤が収載されていることに気付いた。この『済生抜萃』は民国27年の元本影印版であるが,潔古(張元素)以来の金元医学の鍼灸と湯液をまとめた全集で,表1の19巻の書物の要点が収められている。『済生抜萃 第9巻 此事難知』には81種の方剤が挙げられているが,その方剤名は『此事難知』本文に挙げられているものより多く,また異なるものが入っている。
参考文献
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