文献詳細
文献概要
やさしい目で きびしい目で・187
予定とストレス
著者: 杉本貴子1
所属機関: 1宮崎大学
ページ範囲:P.1083 - P.1083
文献購入ページに移動 旅が好きだ。というか旅の計画を立てることが大好きだ。1年に2回,1週間の休暇がもらえるので,1年くらいかけて計画を立て,予定をなぞるように旅をする。予定通りにいかないとストレスを感じる。フランスのボルドーへ旅行した時のこと。午前中は事前に申し込んでいたツアーに参加した。午後は自力で郊外にあるアルカションというところに行く予定を立てていた。ここには,スペイン国境まで続く森と3kmもの長さでヨーロッパ最大のピラ砂丘があるのだ。ボルドーの駅からローカル電車で1時間,アルカションの駅からさらにタクシーで田舎道を15分。バスが2時間に1本くらいあることがわかっていたので,帰りはバスで帰ろうと予定していた。タクシーを降りて,砂丘に向かう前に駐車場の隅にあるバス停の場所を確認した。時刻表も見て,調べていた通りの時刻があることも確認。駐車場を抜け森の中の道を進み,砂丘に向かった。天気も良く,風もさわやかで,砂丘を十分に満喫。露店で食べたカキもワインもおいしくて,すべてが完璧だった。そろそろ帰ろうと10分前にバス停に戻った。が,時刻になってもバスは来ない。まあ,遅れることはあるだろうとさらに15分待ったが,来ない。さらに10分。露店は次々に閉まっていくし,駐車場の車はどんどん減っていく。〈samedi〉なんとなくの英語の感覚で日曜日のことだと思い込んでいたが,フランス語では土曜日を表す。日曜日は〈dimanche〉。曜日を間違えていたのだった。日曜日のバスは一本もなかった。気が付いてよかった。閉まりかけていたお土産屋さんに走り,お店のおばさんに,しどろもどろの英語と指差しフランス語でタクシーを呼んでもらい,なんとか駅まで戻ることができた(タクシーもなかなか来なくて,このままここで夜を過ごさなければならないのではないかとかなり不安だった)。調べ尽くして完璧な計画だと思っていたけど,大失敗。そんなこともある。
医師になって15年。旅行の計画はあんなに一生懸命立てるのに,将来の仕事についてとか,人生についてとか先のことはあまり考えたことがない。ここまで続けることができたのは,見捨てずに育ててくれた医局の先生方や,頼りになる後輩の先生方のおかげであることはいうまでもないが,あまり細かく予定を立てず,こだわらず,なるがまま,流されてきたこともあるのかもしれない。予定がなければストレスも少なくて済む。仕事は楽しい。これからも,そんなこともある,なんとかなると,あまり深く考えずに穏やかに末永く働けたらと思っている。
医師になって15年。旅行の計画はあんなに一生懸命立てるのに,将来の仕事についてとか,人生についてとか先のことはあまり考えたことがない。ここまで続けることができたのは,見捨てずに育ててくれた医局の先生方や,頼りになる後輩の先生方のおかげであることはいうまでもないが,あまり細かく予定を立てず,こだわらず,なるがまま,流されてきたこともあるのかもしれない。予定がなければストレスも少なくて済む。仕事は楽しい。これからも,そんなこともある,なんとかなると,あまり深く考えずに穏やかに末永く働けたらと思っている。
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