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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科69巻8号

2015年08月発行

文献概要

特集 第68回日本臨床眼科学会講演集(6) 原著

TS-1®使用患者の白内障手術後に急激な異常上皮の角膜進入をきたした1例

著者: 竹澤由起12 原祐子2 白石敦2 坂根由梨2 宇野敏彦1 大橋裕一2

所属機関: 1白井病院眼科 2愛媛大学医学部眼科

ページ範囲:P.1201 - P.1206

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要約 背景:TS-1®は,テガフール,ギメラシル,オテラシルを含む複合薬で,悪性腫瘍に対して経口投与される。目的:TS-1®を服用中の患者に白内障手術を行い,異常上皮が角膜に進入した1症例の報告。症例:70歳の女性が視力障害で受診した。6年前に胆管癌の手術を受け,TS-1®の2週服薬と2週休薬を繰り返していた。所見と経過:矯正視力は右0.8,左0.08で,両眼に白内障があった。白内障手術をまず右眼に,1か月後に左眼に行った。上方の結膜を4.5mm切開し,3mmの強角膜切開で手術を行った。視力は右1.2,左0.3に回復した。4か月後に流涙と視力障害が生じ,視力が0.5と0.1に低下した。上方の結膜切開部から角膜中央部まで境界明瞭な異常上皮の進入と血管新生があり,上下の涙小管が閉塞していた。TS-1®による角結膜上皮障害と診断した。人工涙液の頻回点眼を行い,異常上皮は右眼では2か月後,左眼では6か月後に異常上皮の境界線が後退した。通院はその後中断した。結論:白内障手術での上方強角膜切開により輪部構造が障害され,TS-1®の服用が異常上皮進入を助長したと推定される。

参考文献

1)Esmaeli B, Golio D, Lubecki L et al:Canalicular and nasolacrimal duct blockage:an ocular side effect associated with the antineoplastic drug S-1. Am J Ophthalmol 140:325-327, 2005
2)伊藤 正・田中敦子:経口抗がん剤S-1による角膜障害の3例.日眼会誌 110:919-923,2006
の全身投与が原因と考えられた角膜上皮障害.臨床眼科 61:969-973,2007
4)栗原勇大・平岡孝浩・坂田典繁・他:経口抗癌薬S-1内服に伴う角膜表面と涙液の評価.眼臨紀 1:701-705,2008
による涙道障害の多施設研究.臨眼 66:271-274,2012
内服による角膜障害の1例.臨眼 62:393-398,2008
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9)Rockwood EJ, Parrish RK Ⅱ, Heuer DK et al:Glaucoma filtering surgery with 5-fluorouracil. Ophthalmology 94:1071-1078, 1987

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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