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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科69巻9号

2015年09月発行

文献概要

連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第13回

挙筋腱膜フラップを用いた切開式重瞼術—陥凹のない自然な重瞼を目指して

著者: 岩山隆憲12 曾我部浩2 橋川和信1

所属機関: 1神戸大学大学院医学研究科形成外科学 2神戸ルネッサンス美容外科医院

ページ範囲:P.1316 - P.1321

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はじめに

 切開式重瞼術の術後は左右差のないこと,瘢痕が目立たないこと,閉瞼時の不自然な陥凹を生じないこと,重瞼線が消失しないことが重要であると筆者らは考えています。

 切開法による重瞼作成は重瞼作成予定線より尾側の瞼板前組織の除去により,瞼板と皮膚裏面を癒着させ重瞼を作成する腱板固定法1〜3)が最も簡便であり手術時間も短いとされていますが,術後,閉瞼時に重瞼線の頭側と尾側で癒着による不自然な陥凹を生じることがあります。

 瞼板固定法で生じた不自然な陥凹は,時間の経過とともに軽快すると考えている術者もいますが,実際は陥凹の修正目的で来院される患者も多いです。

 昨今,眼瞼下垂症手術時の重瞼作成法として挙筋腱膜前転を併用した術式4)が報告されており,自然な重瞼術として知られています。また,一重瞼の患者は潜在的な眼瞼下垂症であることも多く,挙筋腱膜の前転と重瞼術を同時に行うことにより,開瞼をより大きくする美容外科手術5,6)も報告されています。

 挙筋腱膜を前転させ,その尾側端と重瞼線の皮膚ないし皮下眼輪筋とを縫着し重瞼を作成する方法であるため,挙筋腱膜と重瞼線への連結を重瞼の正常構造にきわめて近く再建することで重瞼を作成しており1),理にかなった方法です。しかし,これらの術式は挙筋腱膜の前転幅が重瞼溝の皮下まで十分到達する長さの線維性組織を得られることが前提であると筆者らは考えています。

 この方法を,下垂が軽度である若年者の厚い瞼に適応させると,挙筋腱膜の前転幅は2〜3mmにもかかわらず,瞼板から皮膚までの厚みがあるため連結に必要な長さを得ることができないことがあります。無理に縫合すると重瞼線の陥凹が強くなり,不自然となります。

 筆者らは患者の瞼の厚さに見合った挙筋腱膜から重瞼線への線維性組織の再構築を行うことが,結果として自然な重瞼を得られるのではないかと考えており,挙筋前転と重瞼術を同時に施行する若年患者に対して,前転させた挙筋腱膜の余剰部分をフラップとして挙上し,皮下線維性組織として重瞼線を作成しています。フラップの長さを変えることで皮下組織の厚い瞼に対しても,閉瞼時に陥凹のない自然な重瞼が得られると考えています。本稿では実際の手術についての考え方と手順を紹介します。

参考文献

1)切開法(末広型).酒井成身(編):美容外科基本手術—適応と術式.9-11,南江堂,東京,2008
2)一瀬晃洋・杉本 庸・田原真也:手術手技による治療 眼瞼の美容外科 重瞼術 切開法.形成外科 54(増刊):S129-S134,2011
3)西山真一郎:重瞼術 全切開法.市田正成・谷野隆三・保阪善明(編):美容外科手術プラクティス1.49-51,文光堂,東京,2000
4)本間幸恵・松末武雄・高見昌司:眼瞼下垂症手術時における挙筋腱膜の解剖学的特性を考慮した重瞼線の作製.日本形成外科学会会誌 33:1-6,2013
5)鶴切一三:重瞼術(埋没法および切開法)の合併症を回避するために.形成外科 56:1017-1025,2013
6)野平久仁彦・新冨芳尚:切開式重瞼術 挙筋腱膜前転を加えた皮膚瞼板固定法.PEPARS 87:21-29,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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