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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科69巻9号

2015年09月発行

文献概要

特集 第68回日本臨床眼科学会講演集(7) 原著

栃木県内で経験した東洋眼虫症の1例

著者: 武村千紘1 鈴木重成1 和泉田真作1 桐木雅史2 金子禮子3 妹尾正1

所属機関: 1獨協医科大学眼科学教室 2獨協医科大学熱帯寄生虫病室 3金子眼科

ページ範囲:P.1369 - P.1372

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要約 背景:東洋眼虫Thelazia callipaedaは,ヒトと野生の哺乳類を宿主とする人畜共通の寄生虫であり,涙囊または結膜囊に寄生する。中間宿主はショウジョウバエ科のメマトイで,涙液や眼脂を舐めるときに幼虫を摂取する。東洋眼虫による眼感染は,日本では九州や西日本などの温暖な地域に多かったが,近年では北上する傾向がある。目的:栃木県内で発症した東洋眼虫による結膜感染例の報告。症例:栃木県に住む63歳男性が1か月前からの左眼の霧視と異物感で紹介受診した。自覚症状が生じる2週間前に,公園でハエに顔面周囲を執拗にまとわりつかれた。前医で虫体が左眼結膜に1隻発見され,除去された。患者の趣味は昆虫の写真撮影であった。所見:摘出された虫体は,その形態的特徴から東洋眼虫の雄と判定された。虫体の摘出後,自覚症状は消失した。結論:栃木県で東洋眼虫が発見されたことは,従来の報告にはない。温暖化のためにメマトイの活動期間が長くなったことがその理由であると推定される。

参考文献

1)Railliet A, Henry A:Nouvelles observations sur les Thelazies, nematodes parasites de l'oeil. CR Soc Biol 68:783-785, 1910
2)荻原武雄・楠元忠雄・村上和充・他:人結膜より摘出した線虫の二例.熊本医学会雑誌 31:179-183,1957
3)影井 昇・原田正和・村主節雄:香川大学医学部国際医動物学教室に鑑別を依頼された眼虫属線虫類について(附,わが国におけるヒト東洋眼虫症感染の現状について).Clinical Parasitology 18:14-17,2007
4)小林智子・片桐智美・山本俊文・他:新潟県で見出されたヒト東洋眼虫症の1症例.新潟県臨床検査技師会誌 52:245,2012
5)宮崎一郎・藤 幸浩:眼虫症.図説人畜共通寄生虫症.633-639,九州大学出版会,福岡,1988
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9)影井 昇・林 滋生・石田常康・他:東京都下で発見された東洋眼虫の人体寄生例.寄生虫学雑誌 30:337-344,1981
10)熊瀬有美・加藤睦子・高畠まゆみ・他:9隻の虫体を片眼に認めた東洋眼虫症の1例・臨眼 64:1747-1750,2010
寄生の1症例とその感染地について.臨眼 78:1909-1912,1984
12)小森伸也・小國 務・末森晋典・他:岐阜県内で感染したと推定される東洋眼虫のヒト結膜囊内寄生例.あたらしい眼科 26:1401-1404,2009
in the Balkan area. Parasit Vectors 7:352, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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