臨床眼科69巻9号

2015年09月発行

特集 第68回日本臨床眼科学会講演集（7） 原著

視神経乳頭腫脹を契機として発見された肺腺癌の1例

著者： 金井友範¹ 西崎雅也¹ 山田裕子³ 金森斎修² 田邊益美¹ 金森章泰³ 中村誠³

所属機関： ¹北播磨総合医療センター眼科 ²北播磨総合医療センター呼吸器内科 ³神戸大学医学部眼科学教室

ページ範囲：P.1395 - P.1399

要約　目的：片眼の視野障害を初発症状とした肺腺癌の視神経乳頭への転移例の報告。症例：54歳男性が3か月前からの左眼視野異常を主訴として受診した。所見：矯正視力は右1.2，左1.0で，左眼に乳頭腫脹と上方の水平半盲様の視野欠損があった。造影MRI検査で頭蓋内に異常はなかった。ステロイドパルス療法で乳頭腫脹と視野に変化がなかった。悪性腫瘍の転移を疑い，全身検索を行ったところ，上皮成長因子受容体遺伝子変異を伴った肺腺癌が判明した。分子標的薬のゲフィチニブ（イレッサ^®）の全身投与で原発巣と乳頭腫脹は速やかに縮小した。結論：本症例は，片眼の視野障害を初発症状とした肺腺癌の視神経乳頭への転移例であった。分子標的薬は視神経乳頭転移にも奏効した。

参考文献

1）Shields JA, Shields CL, Singh AD：Metastatic neoplasms in the optic disc. Arch Ophthalmol　118：217-224, 2000

2）McCrary JA, Patrinely JR, Font RL：Progressive blindness caused by metastatic occult signet-ring cell gastric carcinoma. Arch Ophthalmol　104：410-413, 1986

3）Sung JU, Lam BL, Curtin VT et al：Metastatic gastric carcinoma to the optic nerve. Arch Ophthalmol　116：692-693, 1998

4）渡邉定弘・山本真由・矢野文月・他：小細胞肺癌からの視神経・視神経鞘転移と思われた1例．臨床放射線　52：1155-1158，2007

5）Suto C, Oohira A, Funaki C et al：Pathological findings of optic neuropathy from metastatic leptomeningeal carcinomatosis. Jpn J Ophthalmol　51：396-398, 2007

6）高木智穂・山田雅子・原田智子・他：印環細胞癌の視神経転移による視神経症．臨眼　64：973-978，2010

7）白川理香・小島孚允・藤代貴志・他：胃癌原発の転移性視神経乳頭部腫瘍の1例．臨眼　64：1389-1393，2010

8）視神経の病態．丸尾敏夫・本田孔士・臼井正彦・他（監）：眼科学．521-551，文光堂，東京，2011

9）三村　治：視神経炎と虚血性視神経症はこうして見分ける．臨眼　65：794-798，2011

10）光冨徹哉・萩原弘一・谷田部恭・他：肺癌患者におけるEGFR遺伝子変異検査の手引き．日本肺癌学会，2014

11）有村　哲・松本　直・飯野直樹・他：ゲフィチニブが著効した転移性脈絡膜腫瘍の1例．あたらしい眼科　27：851-855，2010