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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科7巻1号

1953年01月発行

雑誌目次

綜説

鼻耳側網膜の機能的差違(第6回關東眼科集談會特別講演)

著者: 萩原朗

ページ範囲:P.1 - P.11

 表題には便宜上「鼻耳側網膜の機能的差違としてあるが,網膜ばかりでなく,交叉性及非交叉性の視神經或は視束線維の機能的差違も含めて述べる。
 一般に眼機能の検査には,網膜全體を一括して検査するのが普通であつて,分けるにしても,唯中心視周邊視の別を設けて,検査して居る程度である。處が宗族發生學的にも個體發生學的にも,交叉性と非交叉性の視束線維は,發生或は發育が異なつて居るから,兩者の間には,何かしら質的或は量的に機能上の差違がなければならない。私は數年來折に觸れ文献を調べたり,自分で實驗したりして,この兩者の間に,幾分の差異があることを認めたので,中間報告程度に過ぎないが,一應述べて見たいと思う。

眼科人名辭典C—D

著者: 山賀勇

ページ範囲:P.10 - P.15

Ramon Castroviejo (1904-
 スペインの生れ。マドリード大學を卒業し,1927年マドリード赤十字病院に入り,1928年,アメリカ合衆国に渡り,シカゴのChjcago Eye, Ear, Nose and Throat Ho-spitalにつとめ,1930年,ミネソタ,ロチエスターのMayo ClinicのSpecial Fellowとなり,1931年,ニューヨーク市コロンビヤ大學のPresbyterian MedicalCenterにあつて眼科助教授をつとめ,ここで角膜移植に關する經驗を重ね,これに用いる動力トレパンや,二重刀等,氏の創案になるものが多い。1952年(昭27年)3月來朝した。
 —臨床眼科,6卷,7號卷頭,昭27年。

臨床實驗

房水の産生及び流出機轉に就て

著者: 呉基福

ページ範囲:P.12 - P.16

 吾々の一般概念に從えば房水の新陳代謝は極めて緩慢なる經過をたどるものと思われて居たがこゝ數年來Spaltlampを應用せる研究手技の異常なる進歩によつて多大なる修正が加えられた。斯くして房水循環の研究は現在歐米眼科學界の主題なる觀を呈しAqueous veinの確認,Fluoresceintestの應用,房水成分の詳細なる研究,Gonio-skopyによる前房隅角の觀察等目ざましい研究業蹟が次女と發表された。本問題に就ては勿論毛細血管の機能に關する研究が解決の鍵をにぎつていて,血管壁を通つて房水が産生され,又特殊な管系を經て房水が排出される此の全經過は毛細血管の透過性を追求する事によつて究明され得る。
 房水産生に就ての學説は時代の變遷によつて多大なる變化を經て來た。分泌説の樣な一種の超機械的で説明の餘地の少ない特殊作用によるという考,次いで此のVitalismを否定した純機械的作用によるという思想,或いは物理學的作用(mec-hanism)を基本として分泌作用(secretory acti-vity)を加えた中間説が相次いで發表された。此等諸學説にはいずれも議論の餘地が殘されていて最後的結論を下し得ない。しかし過去の錯綜せる研究に吟味を加え,更により新しき方向に向つて努力する事は極めて重要である。此の見解に立ち且つ私の長年の研究である毛細血管の問題を論據として茲に房水の循環に關する諸問題に研討を加えて見たいと思う。

實驗的肺炎双球菌性結膜炎の研究(第1報)—肺双菌家兎眼接種に就いて

著者: 村山健一

ページ範囲:P.17 - P.19

緒言
 肺炎双球菌(以下肺双菌と略稱)の結膜接種による實驗的結膜炎の研究は1893年Gaspariniiが始めて肺双菌を家兎眼結膜下注射及結膜塗抹により之を惹起せしめて以來,Pichler, Gifford,西村氏の陽性成績とAxenfeld,長谷川(信)氏等の陰性成績とがある。
 一方臨床的には乳幼兒に於いては膿漏眼樣の劇烈症状を以て始まり,且發生頻度も多いに拘らず成人に於いては結膜嚢へ逆流する膿汁中多數の肺双菌を認める慢性涙嚢炎の際,その膿汗による角膜感染は匐行性角膜潰瘍として重篤症状を呈するに反し,結膜に對しては,所謂"Lacrimale Conjun-ctivitis"として輕微な症状を呈する事實は上述諸家の陰陽成績と相俟つて肺双菌の結膜感染には一定の發症因子の存在する事を想到せしめるものである。私は之を究明する爲肺双菌を結膜に點眼塗抹し,又結膜下注射により諸家の成績を追試検討した。

井上氏鉤の研究(第1篇)—井上氏鉤の視認距離

著者: 川田榮二

ページ範囲:P.20 - P.21

緒言
 視力検査に使用される試視力表は正確で便利であることが必要である。文字を視標としたものは非常に便利であるが,個人的差異や變動の認められる文字があつたり又暗記され易いといふ不都合を有する。「ランドルト」氏環(以下「ラ」氏環と略稱す)は正確であるが文字程手輕には取扱へない不便を有する。然し視標としては「ラ」氏環の如く形が同じで唯大さのみを異にするものが理想に近いものと云うことが出來よう。本邦に於ては此の樣に簡單同形の視標に井上達二氏の鉤状試視力表がある。故小口教授は此の井上氏鉤を評して「Snellen氏鉤は初め我が邦に廣く用ひられたりしも中頃大いに虐待され僅かに井上氏が再興するに至れるものなり。予は始めより此の鉤を好み常に之と離るゝこと能はず,故に井上氏の論文出づるや大なる感喜を以て之を迎へたり」と記して居られる。此の井上氏鉤は視力に關する實驗には多くの研究者に利用されている。然し井上氏鉤そのものに就いては未だ充分に研究し盡されている.とは云えない現況であるので私は其性質を究め同時に此の視標を用いて視認と對比との關係を明らかにせんとして本研究を行つた。

眼窩内皮腫

著者: 石川正臣

ページ範囲:P.22 - P.24

緒言
 Endothelioma内皮腫は,1869年Golgiが始て命名し,眼窩に於ては1888年Hartmannが最初に報告した。本邦では昭和26年5月迄に私の調べた範圍内では,眼窩,眼瞼を含めて67例の報告をみ,明治24年加藤氏の報告に初まる。眼窩内皮腫は眼瞼のそれよりも多い樣である。私は比較的早期から視力の低下を來たし,且つ眼球突出及び前頭部の鈍痛を訴え,初期に眼窩骨膜炎,視神經炎として治療を受けたが好轉せず,當外來を訪れた患者で,眼窩腫瘍の診斷の下に摘出,鏡検の結果,淋巴管内皮腫であつた1例を報告する次第である。

Behcet氏症候群の1例に就て

著者: 石黑宏太

ページ範囲:P.25 - P.28

緒言
 私はBehcet氏症候群(以下B氏症候群と略記)と考えられる1例を經驗し,その經過を觀察すると共に,續發性緑内障を起し摘出した此の患者の左眼を組織學的に検討し,その本態及び類似疾患に就いて考察したので茲に大要を述べる。

ホルネル氏症候群を呈した2例

著者: 齋藤淸

ページ範囲:P.33 - P.36

 1869年,Hornerは頸部交感神經麻痺患者の眼症状を報告したが,既に1852年,Claude Berna-rdは頸部交感神經と瞳孔の關係を論じている。今日まで,頸部交感神經麻痺については臨床的並びに實驗的研究が多數なされているが,私は最近,頸部交感神經の不全麻痺に依り起つたと思われる2例のHorner氏症候群の經過を觀察し得たので追加報告したい。

Moniliasisの實驗的研究—特に抗生物質との關係に就て

著者: 花房淳

ページ範囲:P.38 - P.44

 Penicillinの發見以來次々と新しい抗生物質が造られ,傳染性疾患の治療法として抗生物質萬能の時代となつた今日,モニリア症(Moniliasis)を惹起するCandida albicansがいろいろの抗生物質によつてかへつて發育を促進されると云ふことが實驗的にもまた臨床的にも相次いで報告された。
 美甘・上塚・遠藤・杉野1)は試驗管内實驗に於いて,PenicillinはじめStreptomycin, Chlora-mphenicolに至る抗生物質は,生體内有效治療濃度では,すべての觀點からCandida芽胞細胞に對しては發育阻止的でなく反對に發育促進的であると報告し,又動物實驗に於いても,Candidaalbicansの48時間培養芽胞子(12.5M)をマウスの腹腔内に注入し,Penicillin G 1日1000單位を皮下注射すれば,對照群に比較して死亡率が増加し生存日數が短縮され,又Streptomycin, Chlo-ramphenicolに於いても1日1mg皮下注射に於いてほゞ同樣であると報告している。

接眼レンズに關する研究(第1報)—前眼部模型の作製法

著者: 新谷重夫 ,   高橋謙治

ページ範囲:P.45 - P.48

Ⅰ.緒言
 接眼レンズに關する研究は1827年J.Herschellが角膜をガラスで蔽つて罹患した眼瞼から保護せんと企だてたのに始まり,1888年A.Fickによつて圓錐角膜眼の視力矯正に使用する試みがなされた。次いで1896年から7年にかけて發表されたLohnstein, SiegristによるHydroscopeの概念と結びつき次第に不正亂視,近視及び遠視眼の視力矯正等へと,其の應用範圍を擴める幾多の研究がなされ現在歐米諸國に於ては廣く一般に使用されている樣である。
 我が國に於ても,最近水谷,佐藤氏によつてこの方面の研究が進められ,所謂標準接眼レンズが使用され始めている。我々は各個人の前眼部にあわせた所謂Molded Contact Lensを作製する爲に,先づ其の第一段階として前眼部の模型を作製した。

頸部迷走神經諸手術の眼に及ぼす影響(第1報),他

著者: 板倉敏男

ページ範囲:P.49 - P.59

緒言
 私は曩に,頸部交感神經諸手術の眼に及ぼす影響,(以下,頸交の論文と略記)と題し,家兎實驗により,頸部交感神經中には副交感神經性の緊張を支配する特殊の求心性の神經纖維が混在し,この神經纖維は眼より交感神經内を逆行し,交感神經上頸篩を經,諸吻合枝を介して頸部迷走神經内に入り,之を上行し延髄の迷走神經背側核(頸交の論文に知覺核とあるのは背側核の誤り)に至る經路をもつことを確認し,この神經を知覺性交感神經と假稱して報告した。
 扨て,今回は頸部迷走神經を,特に上述の知覺性交感神經纖維の多數混入してくる上喉頭神經を中心とする頸部交感神經との強い吻合部位よりも,下部乃至上部で夫々一側を切斷し,術後に現われる兩耳の温度差,瞳孔及び屈折の變動,散縮瞳藥の瞳孔に及ぼす影響に就て,約2ヵ月に亙り比較觀察した。

腦下垂體前葉及び甲状腺の家兎血清カルシューム量に及ぼす影響に就いて(第1報),他

著者: 藤永豊

ページ範囲:P.60 - P.66

緒言
 神鳥教授等1)2)はさきに網膜色素變性症患者の血清カルシューム量(以下「カ」と省略する)を測定した結果,健康者に比して減少していることを認め,之に半腦下垂體前葉及び甲状腺の移植療法(臓器療法)を施し増加を認め,以て臓器療法が有效である事を強調し發表したが,私は家兎に就て牛腦下垂體前葉或は甲状腺を移植し,其等の機能亢進を,又家兎腦下垂體或は甲状腺を摘出し機能脱落を實驗的におこし「カ」を測定した。

コーチゾンの角膜結膜上皮細胞増殖力に及ぼす影響

著者: 山敷力

ページ範囲:P.67 - P.68

緒言
 コーチゾンが吾國でも自由に入手可能となり,その顯著な效果については既に多くの報告がある。殊に眼科領域に於ては點眼という簡便な方法によつて,コーチゾンの消費も極めて少量ですむので,今後眼科の治療界には必要缺くべからざる藥劑となるものと思われる。
 しかしコーチゾンの作用は極めて複雑で,且組織に深刻な影響を與えるので,使用に當つては適應症,使用量,濃度,期間等に細心の注意と經驗が必要である。殊に點眼の場合何れの藥劑でも左樣である如く,コーチゾンの角膜結膜上皮細胞増殖力に及ぼす影響如何が疾患の治癒に大きな關係を持つている。

健保問答

先天梅毒性角膜實質炎の駆梅療法と健保,他

ページ範囲:P.24 - P.24

 問 健保において先天梅毒性角膜實質炎の駆梅療法は認められるか,クールを重ねても容易に血清反應陰性とならぬものは,制限なしに治療してよいか,またペニシリン注射は認められるか。
 答 駆梅療法を行うことは差支えない。

銀海餘滴

アメリカ便り

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.36 - P.36

 中泉行正先生
 シカゴの學校を終えてWashington D.C.(Distriet ofColumbiaの略)に參りました。
 ◇Hrubby lens.−55DにてSlitlampの前に裝着し,Fig 1のDはDoctor's eye, P側はPatient's eyeで射入光も反射光も此のレンズを通す。網膜flat detchm-entを見るによい網膜は擴大されてよく見えた。

アメリカに於ける醫師の收入

ページ範囲:P.52 - P.52

 これはアメリカ醫師會A.M.A.と營業局Depart-ment of Commerceの共同調査に基いた統計であるから,信用していい筈のものである。
 即ち1949年度の平均收入は11058ドルで,1ドル360円として邦貨に換算すると398万円を上廻つているわけである。

臨床講義

有毒昆蟲アヲバアリガタハネカクシによる眼障碍に就て

著者: 南熊太 ,   南ミツ

ページ範囲:P.69 - P.75

 九州地方に於て初夏より初秋にかけて殊に蒸し暑き日に夕刻より夜間にわたり有毒昆虫「アヲバアリガタハネカクシ」により眼瞼線状皮膚炎を合併する急性結膜炎をおこし稀には重篤なる角膜炎症を合併する症例が少くない。
 本症に就いての研究は眼科學的方面に於いては鹿兒島茂教授(熊大),高崎藏喜氏(熊大),靑山茂吉氏(熊大),武藤直也氏(熊大),江浦榮山氏(久留米大),淸澤又四郞氏(九大),桐山豪三氏(九大)等。

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讀書寸感

著者: 中村康

ページ範囲:P.77 - P.78

 Diseases of the Retina ( H.Elwyn氏著)1947年,587頁,3200圓
 本書はBlakiston書律の出版である。挿圖も多く眼底色圖,墨圖,組織圖も豐富に使つてある。緒言に網膜は單純な局部疾患に止つて患うこともあるが屡々系統的に循環系を犯す疾患に合併したり,網膜は腦の一部から發達しているので中枢神經系の疾患に伴つたりするもので,網膜の疾患は眼科のみならず精神科,内科,其他一般臨床にとつて興味あるものである。然るにこの範圍はLeber教授の廣汎な著者があつて以來,其後の網膜の研究を收録したものがない状態である。此を補う意味で著述したと言う。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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