特集 眼科臨床の進歩Ⅱ
結膜
抗生物質の眼内移行に關する2,3の間題
著者:
桐澤長德1
德田久彌2
近藤有文1
小池和夫2
太田道一2
所属機関:
1東京大學
2東京大學分院醫局
ページ範囲:P.767 - P.770
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局所または全身に用いた藥劑が,眼球に對してどのような効果をあらわすかということは,何よりもその藥劑が眼の局所にどのような程度に出現するかということにかゝつていることは言うまでもない。勿論,全身的な遠隔作用によつて眼部に効果を及ぼすものも少くはないが,いわゆる「化學療法劑」といわれるものゝ大部分がその局所濃度と効力とが密接な關係を示すことはわれわれの常識となつている。從つて,化學療法を有効に施行するにはこの基礎的な問題を充分に検討する必要があるが,從來このことを系統的に論じた研究は極めて少い。しかもこの問題は化學療法のみならず廣く一般の藥物療法にも連る問題であるからたゞ一つの方法によつて,一つの藥劑のみについて検討してもその意味は少く,種々の方法によつて多方面から究明する必要がある。われわれの教室でもこのことについて種々研究を行つているが今回はペニシリン,アイソトープ等によつて行つた二三の實驗に基いてこのことを考えてみることとする。
全身的に投與された藥劑の眼組織移行については多くの研究があるが,一般に眼球内えの移行量は極めて少いとされている。殊にペニシリンを初めとする抗生物質の移行性はかなり低いものであることはわれわれが既にくりかえし述べた處である。