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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科7巻3号

1953年03月発行

雑誌目次

眼科人名典辭E—G

著者: 山賀勇

ページ範囲:P.16 - P.22

E
 Robert Henry Elliot(1864-1936)
 英國で修學の後印度に渡り,1904年から1914年まで,マドラスの國立眼科病院にあり又この地の醫學校眼科教授をつとめた。後ロンドンに歸つて眼科を開き盛大を極めた。

綜説

眼と尾動脈毬

著者: 桑原安治

ページ範囲:P.215 - P.223

 近來醫學が分析的に研究せられ微細な點まで研せられたが一方全體として綜合的に觀察しようとする研究も亦旺んに行われておる。
 吾々の身體の生命現象を結び付けるものは種々あるが其の中で自律神經系と内分泌系は二大支柱をなしておる。頸動脈絲毬は組織學的構造は内分泌器官と近似であり然も自律神經に深き關係を有する傍神經節Paraganglionである點に於て中山教授の提唱する頸動脈絲毬摘出の問題は外科學會に於て種々議論はあるが注目に値するものであると思う。此の頸動脈絲毬摘出術を眼科領域に導入し,従來適確な治療法のなかつた網膜色素性變性症,視神經萎縮症等に應用したのは井街讓教授であつたが其の後多くの追試者が現われた。

英國,獨乙,瑞西,米國を巡りて(其の1)

著者: 呉基福

ページ範囲:P.224 - P.229

 私は昨年歐米眼科學勉學のために臺灣を旅立つて以來英國,獨乙,瑞西,米國を巡る事1年有餘,貴重なる經驗を積んで此處に6カ年振りで再度日本を訪れた。此旅はけつして楽な旅ではなかつたが私の訪問した國々の各大學は等しく廣く門戸を開いて學問に國境は無く,個人的の交宜に於ても數多くの友を得て好遇を受けた事は私にとつて極めて愉快な事であつた。殊にLondon大學のDav-enport氏,Bonn大學のMuller教授,Zurich大學のAmsler教授の誠實と謙虚,親切さは私に深い印象を與えてくれた。
 限られた短い間に一國の眼科學の概要を把握する事は非常に困難である。幾つかの斷片的な事柄が吾々に誤つた印象を與へるので,吾々の批判力を確固たる基準に置かなければ,やたらな禮讃と無意味な模倣,無知と自尊大に陥入り易い。此の意味に於て私は諸國の眼科の外觀を見るよりも先ず其國の醫學の制度と學者及び設備と研究業績に出來得る限りの注意を拂つて來た。各國の歴史が示す如くにこれらの事柄も特異的である。其の各々のもつ社會に根ざしたもつともよいと思われる事が産生されるものであつて,他の國家にそのまま當てはまるべきものではない。こういう觀點から私は私及び私の住む社會にもつとも適切且つ有益と思われる事を求めて旅を續けたのであつた。しかし以下私の述べ樣とする事はけつして私の欲する樣な完全なる客觀性のものではあり得ない。此事を讀者は御諒承の上批制をして頂きたい。

銀海餘滴

健康保險の現況

ページ範囲:P.223 - P.223

診療科別平均點數表

歐米見聞記ハイデルベルグより(第1信)

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.229 - P.229

——中泉行正先生
 御無沙汰致しました。關東集談會は如何でございましたか,さぞ御盛會であつた事と存じます。シカゴの學會を終りニューヨークに參りました。各地でCatra-ct extraction,Glaucoma scleral resection Strabi-smus,Malignant tumorなどのSurgeryを見ましたが,各人各様の方法を用いて安全と思われる方法で時間を充分かけて手術して居りました。9月に東京を出發してからホノルル,ロスアンゼルス,サンフランシスコ,サンアントニオ,テキサス,シカゴ,ワシントン,ボルチモア,フィラデルフィアの各地で眼内手術を見ました。これから欧州に参る豫定です。ニューヨークから遙かに御健康をお祈り申上げます。

ペニシリン目藥

著者: 中泉

ページ範囲:P.253 - P.253

 市販のペニシリン目藥というものは隨分たくさん出て來た。種類が多くなると同時に隨分たくさん素人の間で使用される様になつた。醫師の指示により云々と書いてあるが,そんな事は日本では全然馬の耳に念佛である。英國,米國などでは,醫師の指示によりと書いてある藥品は,中々素人にすぐには藥屋が賣らないそうである。日本より留學した某教授の醫學博士がペニシリンを買おうとしたが,ロンドンで遂に藥屋が賣つてくれなかつたという事である。
 只今,東京では,眼科醫を訪れる患者の3分の1は,醫者に來る前にペニシリン目藥をつけている。素人自身も「ペ」目藥を買いに行つてつけましたというのもあるし,藥局へ行つて眼が惡いがと話したら,これをくれたといつて「ペ」目藥を持つているのも澤山ある。ところが市販の「ペ」目藥はカブレルものが澤山ある,眼瞼縁炎の様な皮膚炎の様なものを起すのである。カブレを起しているのを見れば大抵「ペ」目藥を持つている。原因は中に入つているホモズルファミンかと思つたら,そうばかりでもないらしい。ホモズルの入らぬものでもカブレルのがある。軟膏にするワゼリンが惡いらしい。チェスブルーワゼリンを使えば問題はないのであるが,これが無いらしい,藥局方の白色ワゼリンを使つてそれが惡いらしい。要するに,何が原因かわはつきりしないが市販のものはカブレていけないというのは,事實である。

日本眼科醫會の近況

著者: 日本眼科醫會

ページ範囲:P.261 - P.261

 前月號に於て御報告申上げた通り日本眼科醫會も大分縣をあますのみで,日本全國各都道府縣全部加盟せられ各地に日本眼科醫會支部が設置された事は御互に大慶至極の事である。昨年11月日本眼科醫會會報が發行されたが,さらに4月1日を期して次號の會報が發行せられ様としている。有志の方々は御原稿を事務所迄御郵送下さる様御願申上ます。
 東京眼科醫會に於ても只今會報の印刷中で,2月中に會員名簿と共に御手許に御屆出來ると思つて居る。又日本眼科鶴會名簿も大變に遅延して何とも申譯ないけれども,名簿は實に活字がむつかしく只今でも昨年暮同様に1週2日の停電と毎日2時間宛の停電があつて,印刷所も遊びが多くて仕事ははかどらず能率は其爲にがた落ちで困つて居る次第で,2月中には出來上り早速各府縣眼科醫會に發送致しますから,皆々様も御受取下さる様御願申上ます。今回の名簿は始めての事で大變に誤が多く恐縮至極ですが,次回より誤を直し又追加附加して正確便利を期したいと存じますから,今回は最初の事として御許し下さる様御願申上ます。又先般11月の總會の際に問題となつた學校醫の問題,大阪より提案された問題は,其後種々研究致し,何とか御意志に副う事が出來る様に努力致して只今實現の曙光を認めつつありますからもう2,3カ月の御辛抱を御願申上ます。きつとよい結果を御報告する尊が出來て喜んで頂ける事を期待しております。

歐米見聞記ハイデルベルグ(第2信)

ページ範囲:P.264 - P.264

 昨日はクリスマスのお寺の鐘の音を聞き乍ら第1信を書きました。今日25日はどこも仕事を休んで静かです。Neckal河畔の此のホテルもひつそりしています。では昨日の續きを書きましよう。

臨床實驗

虹彩炎を伴つた表在性周邊角膜炎

著者: 原田保治

ページ範囲:P.230 - P.231

 表在性周邊角膜炎がFuchs (1892)によつて發表されて以來,本病に虹彩炎を見た記載は2〜3のものにすぎない樣である。また本病の原因も未だに判然としない。最近私は本病に虹彩炎を伴つた1例を經驗すると共にその原因に就ても些か考察する點があつたので敢えて報告する次第である。

我が國における軸性視束炎の概念的偏向と脚氣弱視の諸問題

著者: 桑島治三郞

ページ範囲:P.231 - P.234

 わが國の球後視束炎が歐米のそれと同樣の概念に立つものである限り,その本態論もまた彼の地のそれと同樣な水準で論じる要があり,これまでいわれたようなわが國獨特の球後視束炎の原因論は再批判を要すべきものであることは,かねて私の主張して來た處である。
 Walshはその名著「臨牀神經眼科學」において,アメリカの球後視束炎の大多數が多發硬化症によるものであるに反し,日本のそれは常に脚氣および授乳によるといわれていることを島薗の文献を引用してのべ,更に,しかし脚氣によるとされる日本の球後視束炎は,小口の論文によれば,中心性網膜炎の合併に原因するものであると特に注意している。この小口の説に多大の注意を拂つていることは,同著の他の箇處にも反復して引用している事實によつて明らかである。

本邦人高年者網膜血管に關する研究(第2報)—本邦人高年者網膜血管硬化について

著者: 樋渡正五

ページ範囲:P.235 - P.244

 周知の如く血壓の上昇と血管の硬化とは必らずしも併行せず,又何等の症状を内科的に末梢血管に認め難い時に,眼科的には或程度の網膜血管硬化を發見する事は稀でない。又眼底検査によつて,我々は眼科的疾患だけでなく,全身的疾患,例えば糖尿病,腎臓炎,動脈硬化症,高血壓症,其の他遺傳的疾患等を診斷し得る事も出來るのであつて,眼底は我々が全身中,血管を透見出來る唯一の場所であるだけに,末梢血管の機能的,器質的變化の研究には,網膜血管が最適であると言えよう。

ナイトロヂエン・マスタードの奏效した眼窩僞腫瘍

著者: 小澤禹彦 ,   牛村澄子

ページ範囲:P.244 - P.248

 眼窩僞腫瘍については,Flarer氏(1857)の報告以來多數のものが發表論議されているが,私等もその1例を經驗し,その手術後療法にナイトロヂエン・マスタード(以下N.M.と略稱)を用いて效果顕著なものがあつたので,此處に報告する。

蛋白尿を見たCoats氏滲出性網膜炎の1例

著者: 原田保治

ページ範囲:P.248 - P.250

 Coats氏滲出性網膜炎は屡々青少年に發病して多く片眼を侵す疾患である爲に興味を持たれ,本態的には組織學的所見からかなり明かにされてきているが,その成因に就いては諸學者の努力にも拘らず定説がない。私は比較的高齡者で尿に蛋白を認めたにも拘らずCoats氏病と診斷すべ1例を得て,それを検討しているうちにその成因に就いても少しく考察される點があつたので記載して御叱正を得たいと思う。

眼瞼外傷による破傷風の1例

著者: 高橋謙治 ,   八木時彦

ページ範囲:P.251 - P.253

 本邦に於ける眼部外傷による破傷風例は,大正4年奧瀨氏の報告を始めとして數例を見るに過ぎず,その經過は第1表に示す如く多くは不良である。今次大戰中には相當例を經驗した事と思うがその報告は見當らない。最近我々は下眼瞼刺傷後5日目に破傷風を起し,大量の抗毒素血清及びペニシリンを用いて治癒せしめ得た1例を經驗したので茲に報告する。

ローランス・ビードル氏症候群の1例

著者: 阿部正博

ページ範囲:P.255 - P.257

 網膜色素變性症には身體矮小,耳聾乃至難聽,癲癇,先天性痴呆其の他の精神異常,四肢骨體異常,腦下垂體疼患等種々の合併症が見られることは既に知られて居るが就中Laurence Moon (1866)兩氏が4人の同胞に精神發育障碍及び生殖器萎縮性肥胖症を伴う網膜色素變性症の症例を記載し,更にBardet(1920)Biedl(1922)氏等が夫々指趾過多症を合併せる例を報告して以來,類似症候群の報告相つぎ,爾來之等の精神發育障碍,肥胖症,指趾過多症等を合併する網膜色素變性症をLaurence-Moon-Biedl氏症候群又はBardet-Biedl氏症候群と名付けて居る。歐米に於ては200例を越える報告があると云われて居るが,本邦に於ても本症候群の名稱で報告されたものとしては,昭和8年の林教授の報告を矯矢として上野(昭和9),山本(昭和10),濱田(昭和20),原田(昭和20)氏等の報告があり,更に最近は山根(昭和25)滿田・大畑(昭和25)曲直部(昭和27)氏等の報告例を見て居るが,此の他,金光(昭和2),楠元(昭和5),深水(大正14)佐藤淸(昭和9)靑山(昭和3),氏等の例も略々本症候群に類似するものと推測される。筆者は最近本症候群に該當する1症例を經驗したので茲に報告する。

結核性眼疾患者の血清及び房水における赤血球凝集反應(豫報)

著者: 淸澤晋

ページ範囲:P.258 - P.261

 1948年Middle-brook及びDubosにより創始された結核の赤血球凝集反應は,その後多くの追試者により其の價値が確認され,同時に種々の變法が考按發表された。本反應は活動性結核に高い陽性率を示すが,梅毒との交叉反應がなく操作簡單なことが大なる特長である。然し眼科領域に於ては結核性眼疾患に付いて本反應を施行した報告は未だ見當らない。私は未だ少數ではあるが5例の結核性眼疾患即ち結核性虹彩炎2例,結核性角膜實質炎1例,上鞏膜炎2例の血清及び房水に就て本凝集反應を施行し,本法の診斷的價値に關し検討を試みたのでここに報告する。

トラコーマ治療に關する實驗的研究

著者: 中村道紀

ページ範囲:P.262 - P.264

 トラコーマに對する治療は抗生物質の發達に伴い進歩改善を見て居り,現在の處抗生物質に依る治療は1日數回點入が集團治療の方針として施行せられているが,外來患者の治療では集團治療と異り1日1回の點入しか出來ぬのが實状であり,投藥をしても素人には眼軟膏を完全に上穹薩部へ點入する事が困難な爲效果が不充分であるので,1日1回の點入のみで1日數回點入した場合と同程度の效果を擧げる事が出來れば好都合と思う。私は家兎を用いてヒアルロニダーゼ,硝酸銀,硫酸亞鉛等を點眼した後のフルオレスチンの前房内移行量を測定し,トラコーマの抗生物質療法の根據を與える事が出來た樣に思うので之を報告する。

臨床講義

まばたき

著者: 神谷貞義

ページ範囲:P.266 - P.271

 「まばたき」或は「またたき」と云うのは,空氣と接して生きている脊椎動物の殆ど全てが,目を見開いて生活を營んでいる間中,絶えず繰返している極めて有りふれた,何の不思議さも感じないものであるが,我々が人間として,生きた眞の營みを續けている限り,常に繰返し續けねばならぬものである。こうした我々が死ぬまで續けねばならぬと云う宿命を擔つている事に對して,諸君の中の誰かが眞面目に考えたことが有ろうか。
 Duke-ElderはThe causation of the move-ment of blinkillg has excited little interest.(Text-book of Ophthalmology Vol. 1)と述べているが,私は少く共我々が生きている間中絶えず續けねばならぬ器官の運動と云うものは,決して無意義なものでなく,それにはそれ相當の理由もあろうし,そのことを注意深く見極めた時に,臨床上に必要なこれまで見落されていた事柄に氣付くであろう。此所ではそのことに就て述べよう。

外文抄録

American Journal of Ophthalmology 1952 June〜November

著者: 初田博司

ページ範囲:P.273 - P.274

Vol.35.No.6 June '52 P.755〜916
 1) 視束髄炎(G.J.Scott)
 2) 視束疾患(C.H.Bagley)

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讀書寸感

著者: 中村康

ページ範囲:P.272 - P.272

 最近眼生理に關する英米書を手に入れたので其を紹介する。
 Plysiology of the eye Adler著。clinical applic-ation (1950年)708頁4500圓,

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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