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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科7巻4号

1953年04月発行

雑誌目次

眼科人名辞典H—K

著者: 山賀勇

ページ範囲:P.23 - P.30

 Otto Haab (1850-1931)
 スイス,チューリヒのHorner教授の門に入り,1386年師の後をおそい,チューリヒ大學眼科教授となつて,1919年に及んだ。
 1892年,巨大磁石を作り,從來約20年前からのHir-schbergの手持磁石のみであつた不自由から脱れ,眼内深部の鐵片抽出にも大なる成功を得るに至つた。又その著Atlas und Grundriss der Ophthalmoskopie undOphthalmoskopiscbe Diagostik(1895年)は殊に有名で,1908年すでに5版を重ねた。ハーブ氏瞳孔計Pupillom-eter (1895年)も今日廣く用いられる。

綜説

眼房水の生成並に流出機轉に就て(1)—生成の機轉に就て

著者: 赤木五郞

ページ範囲:P.277 - P.284

 本論文は第2回四國眼科學會(眼房水の流出機轉に就て)並に第1回岡山大學眼科教室研究發表倉(眼房水の生成機轉に就て)に於て行つた講演の要旨である。最近歐米に於ける緑内障並に本症と深い關聯を持つ所の眼内液の生成或は流出に關する研究熱は實に盛んであつて次々と新しい事實が闡明にされつつある事は衆知の通りである。之に刺戟されてか我が國に於ても本問題の研究に着手しつつある教室は尠く無い。我々も昭和22年頃より,本問題に興味を持ち研究を續けつつあるのであるが,今回は眼房水の生成並に流出に關する研究の最近の動向を紹介すると共に,我々の處で今日迄に得た成續の概略を申上げ,其を基礎として主なる學説を批判しつつ我々の本問題に關する見解を披歴し御批判を仰ぎ度いと考えて居る。其の1に於ては眼房水の生成に就てのみ述べ其の2に於て房水流出に就て記載する。尚緑内障の生成機轉に關する我々の研究に就ては別に稿を改めて發表する豫定である。

英國・獨乙・瑞西・米國を巡りて(2)

著者: 呉基福

ページ範囲:P.285 - P.289

 第二次世界大戰を境にして醫學と言えば獨乙と言つた時代から米國の時代に移つたと,こういつた世俗觀念はいつも吾々をして視野を廣く他國にも轉ぜしめるのを妨げて來た。事實地球の東半球に住む吾々にとつて戰後の歐洲の醫學は未知のものであり,殊に瑞西に對しては全然知る所がなかつた。しかし一旦身を歐洲に置き歐米の文献をひもとけばVogt教授しか知らなかつた私にとつて瑞西醫學は一つの大きな驚異であつた。斯くして私は此の國を訪れるべく決意したのである。天を摩するが如き大厦と千を以て數えるベツトの數が吾々を呆然たらしめるが如き大病院は此の國には見當らないけれども百數十年にわたる長年月の平和と優秀なる機械工業,學問に對する學者の眞摯な態度と間斷なき努力の結晶としてスイス醫學は今やいずれの大國に比しても損色を示さない状態に至つた。
 今でも語り草となつているのであるが世界第一次大戰後Vogt教授がSpaltlampの偉大なる業蹟を發表するや,歐米各國から若き學徒の巡禮者が續々とZurichへ參集して彼の門をくぐつた。それと同様に世界第二次大戰が終了するやスイスから次々と薪研究業蹟が發表されて戰爭によつて中斷された歐米學界に大なる刺戟を與え今でも一度は見ておくべき所となつている。

銀海餘滴

原子爆彈による白内障

ページ範囲:P.284 - P.284

 第2次世界大戰後2年を經た今日,米國で原子研究中の5名の若い醫師は,中性子線の被爆により重大な眼損傷を受けた。同じ頃日本にある米國原子爆彈傷害委員會では廣島における十萬人以上の原子爆彈生存者を検査したが,其の際眼傷害を受けて居りはしないかと杞憂されて居つた。そこで2年程前,同委員會は海軍の將校であるRobert M. Sinskeyという26歳(當時)の眼科専門醫を聘じて原子爆彈による眼の研究を始めたのである。
 同氏は廣島に於ける委員會のクリニックで,日本人が蒲鉾御殿と名附けた圓形のヒユツテ内で仕事を始めた。同委員會所藏の記録を參照して,氏は原子爆彈攻撃中又は其の後に頭髪を失つた患者で,強い照射量を受けた生存中の約500名につき研究の焦點を向けた。しかも之等の生存者たちは,被爆の中心より約2km以内の者に限られたのであつた。

結核の化學療法の限界

著者: 藤田眞之助

ページ範囲:P.295 - P.295

 ストレプトマイシンの發見はそれまで半ば諦められていた結核の化學療法に新たな曙光を與え,結核の治療に大きな變革をもたらした。
 しかしストレプトマイシンは優れた抗生劑ではあるが結核のいわゆる萬能藥ではなかつた。

歐米見聞記

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.334 - P.334

ハイデルベルグ第3信
 ◇ロンドンにて
 9月7日東京出發以來北米各地を旅行して12月14日ロンドン到着,冬のロンドンは霧が深くうす暗い日が多かつた。5年前に設立されたInstitute of ophthalmologyは最も權威があり,Sir Stewart Duke Elderはdirec-tor of researchである。此所ではbasic researchを行い,患者の診療はMoorfields Eye Hospital (210床)と分院のWestminster Branch 100床で此等全部はロンドン大學に含まれている。Institute内の業績の主たるものはBritish Journal of Ophthalm.に發表されている。

臨床實驗

腦腫瘍と誤まられた楔状洞粘液嚢腫を有する慢性球後視束疾患の1例

著者: 市川達

ページ範囲:P.290 - P.295

 私は最近右側の楔状洞及び篩骨洞の粘液嚢腫を有し右眼に視束萎縮,眼球突出,失明を來し,左眼に視力減退と線に對する乳頭黄斑纖維束暗點を證明し,副鼻腔手術に依り右眼の中心暗點,視束萎縮のみを殘して治癒した1例を經驗した。
 楔状洞の粘液嚢腫は文献に依れば極めて稀なもので私の調査した範圍では十數例に過ぎない様である。又本疾患に中心暗點を來すは更に稀の樣であり,本例に之れを證明したという事實は所謂鼻性視束炎なるものの本能解明上多少とも興味ありと思われる。

井上氏鉤の研究(第2篇)—井上氏鉤の方向性/井上氏鉤の研究(第3篇)—井上氏鉤の對應關係

著者: 川田榮二

ページ範囲:P.296 - P.303

 ラ氏環の切目の方向によつて視認に變動の起ることは屡々經驗される所であつて,此の事實に關しては井上博士,畑教授及小島教授の詳細な研究がある。私は井上氏鉤に於て同樣の實驗を行つたので其の成續を報告する。

慢性腎炎患者に見た眼底白點症と暗順應—特に特發性夜盲性眼底白點症との關係

著者: 飯沼巖

ページ範囲:P.303 - P.305

 私は先に樋口,近江1)と共に「上皮性結膜乾燥症に見た網膜白點症」と題して,慢性ビタミンA缺乏症と考えられる一婦人の網膜内層に,無數の小白點を認め,暗順應状態を検査したところ,先天性夜盲性眼底白點症(Lauber)の夫れに似た暗順應曲總を得たことを報告したのであるが,今回は慢性腎炎を有する一婦人の眼底を検査して同じく網膜内層に小白點を見出し,之亦類似した暗順應曲線を示すことを知つた。
 そこで之等網膜内層の小白點と暗順應曲線との間に於ける關連性に就て,些か考按するところがあつたので報告したい。

水晶體偏位の一家系

著者: 東山榮子

ページ範囲:P.307 - P.310

 水晶體偏位は稀な疾患であつて,本症が遺傳性疾患であることに疑わないが,屡々蜘蛛状指趾と合併するため,實際に觀測されたのは蜘蛛状指趾の遺傳例であることが多いようである。たとえばしばしば引用される早川3),梶4),矢野23),田中24),岩崎25)氏等の報告は蜘蛛状指趾である。また有澤6),草間13),山下18),田邊29),田上22)氏等の水晶體偏位の遺傳例の報告も純粋かどうかは判らない。
 幸いにして私は本疾患を有する患者から4代にわたる純粋の水晶髄偏位の家系を調査することが出來たので,ここに報告したいと思う。特に興味深い點は,本患者の姉については當醫局の先輩坂口氏28)が,又父及び叔父については飯海氏2)から以前に詳細な報告が出ていることである。

眼科領域におけるルチン劑の使用經驗

著者: 山田秀之

ページ範囲:P.311 - P.313

 眼科領域に於て血管性高血壓症に遭遇する事は可成り多い。私は最近此等疾患にルチン劑を經口投與し,之が經過を觀察した。
 其の中で投與期間の比較的長期即ち45日以上に及ぶ者につき報告する。

フリクテンに對する各種抗生物質の局所使用效果

著者: 中林英郞

ページ範囲:P.314 - P.316

 フリクテンの成因については今日迄種々論議されて居り,それに伴つて治療についても多くの報告がある。戰後吾國に於ても各種の新抗生物質の使用が廣く行われる様になり,之等新抗生物質をフリクテン患者の眼局所に使用して效果があつたと言う報告も多數なされて居る。
 しかしながら之等各物質の效果を比較した報告は極めて少いので,私は今回フリクテン(以下フと略す)患者の検索中にペニシリン,ストレプトマイシン,オーレオマイシン,テラマイシン(以下それぞれペ,ス,オ,テと略す)等の局所使用效果を比較し,興味ある成績を得たので報告する。

先天襞状網膜剥離の2例—附.我國に於ける本疾患の總括的觀察

著者: 林生

ページ範囲:P.317 - P.319

 先天襞状網膜剥離は,1935年にWeve (Ablatioretinae falciformis congenita)とMann (Con-genital retinal fold)とによつて名付けられた1種の先天異常の疾患名で,Weveは更に,この典型的の所見を呈する襞状剥離Ablatio falcifor-misの外に,特に病變の高度なものを僞膠腫状剥離Ablatio pseudogliomatosa,又反對に痕跡的に輕度なものを透明剥離Ablatio pellucidaと呼んで之を分類した。
 我國で既に1893年に河本一井上により硝子體生來結締織遺殘として記載されているのは,同一の先天異常であるが,Weveの發表以後に於て詳細な報告が急に増加している。

プレホルモン球後注射による視束萎縮の治療について

著者: 山本由記雄

ページ範囲:P.320 - P.321

 腦下垂體前葉ホルモンの視束萎縮に對する效果は最近とみに認識され,とくに淺山教授は皮下注射,静脈注射,頸動脈注射を比較し動注の最有力性を論じておられるが,球後注射については言及されていない。そこで私は急性球後視束炎後の高度の視力障碍を伴う陳舊な炎性視束萎縮に對して球後注射を行い,著效をみとめたのでここに報告する。使用藥品は鹽野義のプレホルモン500單位+VB1又はプレパラ500單位である。

トラコーマに對するクロロマイセチンの效果に就ての研究(第3報)—西蒲原郡吉田小學校に於ける2年目實施成績

著者: 土屋淳之

ページ範囲:P.322 - P.325

 余は先に縣下西蒲原郡吉田小學校に於て,昭和26年9月より翌年2月に至る約5ヶ月間に亙り實施した0.1%クロロマイセチン(以下クとする)軟膏による學童トラコーマの集團治療成績に就て,眼科臨床醫報46卷9號誌上に三國教授共著にて發表したが,27年度に於ても5月より9月に至る約4ケ月間に亙り實施する事が出來たので,前年度の成績と比較検討した結果に就きこゝに報告する。

各種疾患に於ける前房隅角鏡檢査所見(2)—アラヒノダクチリーを伴う水晶體偏位症

著者: 大野泰治

ページ範囲:P.327 - P.330

 アラヒノダクチリー(Arachnodaktylie)を伴う水晶體偏位症は1896年Marfanが最初に報告して以來,歐米は勿論我が國に於ても多數の發表記載があるが,本症の前房隅角鏡所見に就ての報告は私の調べた範圍では皆無である。但し1945年Busaccaはアラヒノダクチリーを伴わない單なる水晶體偏位の2例に就き隅角鏡所見を發表している。
 私は自作隅角鏡(臨眼6巻3號)とKoeppe氏舊型接眼レンズを用いアラヒノダクチリーを伴う水晶體偏位の前房隅角を検する機會を得たので,こゝに報告する次第である。

11ヵ月の乳兒に見たる緑色腫と思われし1例

著者: 坂上英

ページ範囲:P.331 - P.334

 我國の文献を見るに林氏(1904),菅沼氏(1909)の報告を始めとして今日までに50に近い症例の報告が見られる。而してその年齡に就ては,石橋氏(1915)の42歳を最高とし,染川氏(1920)の生後11ヵ月の哺乳児の1例を以て最少年齡としているが,私も偶々生後11ヵ月の乳児に於て臨床上緑色腫と診斷される1症例を經驗したので此處に報告する。

急性炎性緑内障症状を發現した小兒緑内障

著者: 小澤禹彦

ページ範囲:P.335 - P.337

 私は比較的珍らしいと思われる牛眼症状を缺いた幼女の緑内障に於いて,その經過中に急性發作を呈した例を經驗したので報告する。

トラコーマ治療劑としてのオーレオマイシン,テラマイシンの檢討

著者: 淺沼桂

ページ範囲:P.338 - P.339

 オーレオマイシン,テラマイシン(以下ア,テと略す)がトラコーマ治療に使用され始めて以來既に數年を經過したが,從來眼科治療の難物の一として或いは朝に現れ或いは夕に消えた數多くのトラコーマの治療劑或いは治療法が抗生劑の登場以來影をひそめてトラコーマの治療の論爭も一應終止符をうつたかの感があるのは誠に慶賀に堪えない次第であるが,それでもトラコーマは治らないと云う嘆を臨床醫の立場より聞くことは決して稀ではない。
 私も使用し始めて以來既に2年を經過したが既發表の本邦報告の如き好成績を收め得ず焦慮の念にとらわれているので私の治療成續をあげその原因を驗討してみたい。

臨床講義

ビタミンB2複合體缺乏性角膜炎

著者: 入野田公穗

ページ範囲:P.340 - P.343

 栄養障碍に因つて視器に種々の病變を招くが,特にビタミンの新陳代謝異常によつて眼疾患を惹起することは尠くない。本日はこの中ビタミンB2複合體Vitamin B2-Complexの缺乏と極めて關係の深い疾患の代表的なものとして血管新生を伴う角膜炎に就て述べよう。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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