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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科7巻5号

1953年05月発行

雑誌目次

眼科人名辞典L—N

著者: 山賀野

ページ範囲:P.31 - P.38

L
Piére-Félix Lagrange (1857-1928)
 初め外科を學びAgrégé de chirurgie (外科助教授)として,佛印東京(トンキン)え派遣され,2年間駐在した。ボルドーに歸り,改めて眼科に志しVale-de-Grâce, Hôpital des Enfants等で眼科を研究し,1910年ボルドー大學眼科教授となつて死に及んだ。
 1906年慢性緑内障に對して,鞏膜虹彩切除(SclerectoIridectomie)により,濾過性瘢痕を作る方法を發表し,その後も本手術に工夫をこらし,わが國では庄司義治教授これを推賞した。

綜説

眼房水の生成並に流出機轉に就て(2)—眼房水の流出に就て

著者: 赤木五郞

ページ範囲:P.347 - P.352

 私は先の論文に於て眼房水が如何なる部位より生成せられるか,或は又如何なる機轉に依つて生成されるか,即眼房水の起源並に生成機轉に就て従來の主なる學説の大要を紹介すると共に,我が教室に於て本問題に關して得た研究成績を基礎として若干の批判を試み現在私達が抱いて居る見解を披瀝報告したのである。今回は一旦眼内に生成せられたる眼房水が如何なる場所より,或は如何なる機轉に依つて眼外に流出するものであるかに就いて従來の主なる學説を紹介すると共に本問題に關して我が教室で得たる若干の研究成績を記述し併せて現在私達が抱いて居る見解を發表し大方の御批判を仰ぎ度いと思う。

球後視束炎とわが國のいわゆる軸性視神經炎とはどこがちがうか?

著者: 桑島治三郞

ページ範囲:P.353 - P.357

 多發硬化がわが國にも最もありふれた中枢神經疾患の一つであると敢て私が主張するにいたつたのは,珍奇を衒つたのでもなければ徒らに無用の論爭をおこそうとしたのでもなく,球後視束炎の概念が歐米のそれと同じものであるかぎり,わが國の症例もまたその多くが歐米にいう多發硬化にぞくしている專實を觀察し神經學的にも彼我の間に趣きを異にする特殊なものがないという根據をあげて,諸家の批判を求めんとしたにほかならない。
 これに對し鈴木氏はいちはやく私の主張に賛意を表わし1)また最近わが國の慢性軸性視神經炎と多發硬化との關係,とくに同氏のいわゆる「慢軸」と歐米の球後視束炎とが果して同じものであるか否かを自ら問題としてとりあげ,併せて球後視束炎と多發硬化とが表裏一體をなすという私の見解に疑義を投げた2),この種の疑義は實は私に寄せられた數氏の私信などにも夫々の立場から表明された處であり,誤解を招き易い點であると共に最も重要な問題でもあるのでこれについて解説しておきたい。それについて私はあらかじめ次のことを明らかにしておく,すなわちその存在すら否定視されてきた多發硬化がわが國にもありふれた疾患であり然もその診斷は視束症状の神經眼科學的検索によつて確かめられるという私の主張は,少くともわが國では,從來の定説をやぶつたものといえよう,従つてこのような主張それ自身にまず嚴正な批判と検討とが加えられることはかねて私の期待した處でもある。

銀海餘滴

歐米見聞記

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.352 - P.352

 ◇ミュンヘンにて
 Wesely教授はXマス休暇にてガルミツシユ湖に出かけて留守であつた。大學病院の醫局員は34人いる。激しい戰災を受けたために,現在の大學病院は3ヵ所に散在している由,OberarztのWalserの言によれば角膜移植も白内障嚢内摘出後も縫合を一切行わず直徑22〜24mmのKontaktscheibe之はStuttgart市のMüllerWeet製を用い可なり良い成績である由,Fig 1の半徑は11〜12mm, Fig 2の様に同心的に3列の孔を多數穿つて,各孔の直徑は1/3〜1/4mm此のScheibeは角膜外傷性穿孔の場合にも用いる。Buphthalmosの場合にGoniotomyを行わずIridencleisisを行う由。

魚眼蛋白質で白内障治療は不可

ページ範囲:P.357 - P.357

 紐育市の眼科專門醫Adolph Posner氏は白内障患者の眼に魚の水晶體蛋白質を注射し其の白内障翳を外科的に除去することにはいやが上にも充分な注意を拂うべきであると眼科醫に警戒を加えた論文を公表した。
 米國醫學協會誌上に發表された論文によれば魚の水晶體の蛋白質の注射を受けた患者は外科的には過敏性となり,激しい炎症を來たし,時には失明をさえ來たしたといつている。此注射の件はGins-ebrg, Jacobi及Shropshire氏等により1952年に提唱されたものだが,之等の人々は此蛋白質の注射により白内陣の翳は漸次消失すろと報告したものである。

多發性硬化症

ページ範囲:P.376 - P.376

 研究者及醫師を困らしている疾患に多發性硬化症がある。米國内には約10萬名もあると謂われている。本症は主に20〜45歳の若い人々が罹るので其症状は複視,眼球震盪,震顫萎弱,歩行困難,上下肢の麻痺,言語障磯,膀胱障害,感情障碍等がある。時々特發性の輕快があるが後で他の合併症によつて新症状が出現し老人では遂に死の轉歸を取る。
 病理的には神輕鞘即ちMyelinが損傷され,此損傷部に繊維性組織が發生し硬化した碎片を作る。此損傷が起つたときには神經刺戟は完全な神經のように充分な力で傳達することが出來ない。其損傷が進行し其程度が一層深くなると遂には總神經刺戟傳導が妨げられる。然し何が神經損傷を起したのか,そしてそれを管制する手段が今科學者で出來ないのである。原因に就ても本症はアレルギー性過敏症や,ホルモン性及榮養性缺陥であるかも知れない。或はVirusや氣候などにも關係ありはしまいかと非常に廣汎な研究をして見たか譯らない。

結膜炎にマイシン使用と保險點數/眼科における生態組織顯微鏡檢査

ページ範囲:P.395 - P.395

◇青森縣照會
 昭和26年9月18日保險發第230號通達によれば,左記のようになつているが,この4點請求できる期間を急性炎症々状の著しいものについて1ヵ月程度認められたいとの希望があるが,これは妥當か,又結膜炎に對するオーレオマイシン,テラマイシンの使用は現在認められていないが,特定の地區について認めている旨,管内保險醫から申出でがあるが,これは事實かどうか折返し回答願いたい。
(1)眼科治療におけるオーレオマイシン,テラマイシン等の使用基準トラコーマで,急性炎症々状の著しい場合は,診療開始後原則として1乃至2週間の複雜手技を要する洗眼,點眼を行つて,オーレオマイシン,テラマイシン使用の場合は前者の3點に後者の點を加算した點數を請求出來る。

臨床實驗

井上氏鉤の研究(第4篇)—井上氏鉤の構成/井上氏鉤の研究(第5篇)—井上氏鉤の對比關係(1)

著者: 川田榮二

ページ範囲:P.359 - P.366

 井上氏鉤を構成する諸要素の中視標となり得るものに次の如きものが考えられる。鉤の切目の両端に於ける2圓點(直徑は鉤の線の巾と同じ),鉤の四隅に於ける4圓點,鉤の相對應する2平行線,鉤の切目の両端と之に相對する邊の中央とを結んだV字型等の4種視標である。之等4種視標と井上氏鉤,ラ氏環,石原氏片假名及中村氏平假名視標との相互關係を検査したもので其成績を報告する。

ツベルクリン皮内反應陰性のフリクテン患者に對する結核皮内反應追試(第1報)—200倍ツ液皮内反應追試

著者: 小原博享

ページ範囲:P.366 - P.370

 フリクテン(以下フとす)は其の大部分は結核アレルギーに基くものとされて居るが久保木氏,船石氏等の實驗に據ると結核菌以外の異種蛋白で感作された個髓に結核菌又は結核菌以外の異種蛋白を與えた時にもフが惹起されると云うし亦,一方フ患者で屡々ツペルクリン(以下ツとす)反應陰性のフが存在する。此のツ反應陰性のフが結核アレルギー(以下アとす)現象の一つであるか否かを決定する事は,或は凡そ其の幾パーセントが結核に基調を置くものであるかをツ反應に依て知る事は或は夫が結核性のものであつたにせよ其の個體のツ反應態度の表現と其の推移を追求する事は豫防醫學上極めて重要である。
 最近,生井助教授及び其の門下の藤井,檜山氏等に依てフの掻把塗抹標本を起生膿染色する事により假性フか真性フか判別出來ると云う。且,著しいカタル症歌を伴う事なく輪部に假性フが發生し,それが真性フと誤認される事もあると云う。私の實驗當時は此の方法がなく,臨床上カタル症状を伴わない真性フと思われたものに就てツ反應の運命を追求した。

Outline-field

著者: 小島克 ,   杉浦正治 ,   長屋幸郞

ページ範囲:P.371 - P.373

 Kestenbaūm (1950)が,顏面前2cmの所で指を視標とし,顏面に並行に,上下左右方向から指を求心性に動かしその認識された所を結合した面は大體,普通視野の外界に近似である事を記載した。私共は,Kestenbaūmの所謂oūtline fieldを,日本人を對照として如何に適用されるか又,その限界は大體どの様なものかを知るために2〜3の實驗を行い,臨床上の應用について検討してみたので茲に記載したい。

球状水晶體症(Spherophakia)に就て

著者: 畑克忠

ページ範囲:P.373 - P.376

 筆者は最近ピロカルピン,エゼリンに對して反理性に反應する緑内障患者を精査中,偶々それが水晶髓の先天異常症の一つなるSpherophakieに由來する事が明かとなつたのでここに紹介する。

眼内化骨を有する萎縮眼が起交感眼となつた交感性眼炎の1例

著者: 鎌田一一

ページ範囲:P.377 - P.379

 眼内化骨に關しては既に多數の報告があるが,私は最近眼内化骨著明な萎縮眼が,起交感眼となつた珍しい交感性眼炎の1例をみたので報告する。

涙嚢剔除術における外壁剥離への一私見—簡易なる涙嚢剔除術

著者: 上岡輝方

ページ範囲:P.379 - P.381

 涙嚢剔除術は,各症例によつては,解剖的異常を示すこと多きこと,又涙嚢周圍炎を經て,涙嚢壁が周圍と癒着強き場合の多きこと又は,豫期せざる大出血等の偶發症などあり,手術に當りては勿論周到の注意が必要とされるが,一般には,容易なる手術とされている。然しながら涙嚢剔除に當り,初心者が最も困難を感ずるのは,涙嚢外壁即ち耳側の剥離であろうと思われる。
 即ち鼻側,上部,底部の剥離は極めて容易であるが,耳側は涙小管との連絡を除いて眼窩隔膜(眼板眼窩靱帶)と密着しているので,境界は不明瞭であり,剥離の見當がつけ難い。從つて若しも外壁剥離に當り,見當を誤るか,或は暴力を加えて涙嚢被膜及び之と密着せる眼窩隔膜を破る場合には,眼窩内の脂肪組織が創間に膨出して來て手術の操作を妨げ思わぬ長時間を要し,且つは眼窩内傳染なる不快事に遭遇することもないではない。

小口氏色盲檢査表の測色結果並に青黄色盲の混同色理論

著者: 關亮

ページ範囲:P.382 - P.383

 私は先に石原氏色盲表を測色して之を理論的に検討したが,今回は小口氏色盲表に就て同様な事を行つたので茲に報告する。小口氏表には他の多くの色旨表にない青黄色盲の検出表がある。依つて青黄色盲の混同色理論を此の際併せて攻究する。

本邦人高年者網膜血管に關する研究(第3報)—本邦人高年者網膜中心動脈血壓に就て

著者: 樋渡正五

ページ範囲:P.384 - P.392

 網膜血管は腦血管の一部であり,且つ同一動脈から分岐するので,網膜血管の硬化状況や,その血壓測定から,腦血管の状態を推定しようとする研究が行われ,之迄の研究の結果は,大部分が高血壓と全身血管硬化状態が,網膜血管の變化の程度及び網膜血管血壓に對して可なり密な關係を持つという事を示している。然し之等多數の研究は高血壓症や動脈硬化症とかいう特定の者を對象とし所謂高年者の立場から研究したものは極めて稀で殊に高年者の網膜血管像と全身血壓及び網膜中心動脈血壓との關係を論じたものは皆無のようである。
 人間の血壓は其の平均血壓を標準とする時,年齡の増加に從つて大體上昇してゆく事は良く知られて居り,高年者は一般に血壓が亢進していると考えられているが之が具體的詳細は高年者を對象とする研究には極めて重要である。血壓の測定には之迄上膊動脈血壓測定が用いられて來た。然し全身血壓の状態を單に上膊動脈血壓測定のみで豫測する事は決して充分ではない。近年末梢血管血壓の測定が實驗的に臨床的に企てられ,部位として爪縁,角膜輪部,網膜血管等があるが,之等の中で最も明白に肉眼を以て血管を窺い得るものは只網膜血管あるのみで,且つ網膜血管は腦血管の一部故,網膜血管の性状の變化,網膜血管血壓の測定が如何に重要性を持つかは自ら了解される。

眼球隱伏症の1例

著者: 東長正

ページ範囲:P.394 - P.395

 眼球隠伏症(cryptophthalmūs)は,1872年Zehender S.Manzにより命名せられ,我が國に於ても1911年大西が初めて報告して以來,幾多の症例がある。抑々この病は睫毛並に遊離した瞼裂を缺除して,發育不充分な眼球は眼窩内にあつて,前額部より上顎部に至る連續した皮膚で蓋われている先天的畸型である。私の例は新生児で右側が健常,左側にのみ發生した稀例である。

緑内障の毛樣體ヂアテルミー凝固術の經驗

著者: 鴻忠義

ページ範囲:P.396 - P.400

 緑内障手術はその作用機序からみて房水の流出を促進させる方法と,房水の産出を低下させる方法とに大別出來る。前者は虹彩切除術,鞏膜管錐術,毛様體解離術及び虹彩嵌置術等従來一般に用いられているものであるが,後者は毛様體に焼灼或は切除等を行つてその機能を低下させ房水の産出を少くせんとするもので,曾てShahan及びPost (1921)のThermophoreを用いる方法,Verhoff (1924)の毛様體切除術或はCurran (1925)の誰膜焼灼等が報告されているが,最近歐米で盛んに行われているのはVogt2)3)(1937)の毛様體ヂアテルミー凝固術(以下ZDと略記す)及びBerens8)(1947),Weekers9)(1950)の毛様體電氣分解術である。
 VogtのZDは細いヂアテルミー針を用いて60〜90mA,1〜1.5秒間通電し鞏膜を50〜100個所穿刺して毛様體に凝固を起させる方法であつたが後にWeve, Amsler及びLutman4)等は球状導子を用い鞏膜の表面から毛様體に凝固を起させる方法を行つて居る。又Berens8)の毛様體電氣分解術は長さ1.5〜2粍,直徑0.18粍の電氣分解針を陰極として鞏膜を60〜70個所穿刺する方法である。

高張葡萄糖液の頸動脈内注射が眼壓脈波に及ぼす影響

著者: 原淸 ,   野地道彦 ,   鈴木一三九

ページ範囲:P.401 - P.402

 瀨尾・中山両氏の提唱による動脈性衝撃注射療法は,眼科領域の諸疾患に對しても用いられ,その有效なることが認められている。眼科的には主として高張葡萄糖液が使用せられているが,此の動注に際して内頸動脈の未梢である眼内血管系にかなり強度の機能的影響を與えているであろうことは想像に難くない。
 従來,眼科領域に於ける眼内血管の變化を研究する手段としては,網膜中心血管徑を計測し,又その血壓を検査する方法が主であつた。然し吾々は幸にして眼壓脈波を掴え,これを分析して眼内血管系の變化を動的に研究する方法を得ているので,それを用いて動注によつて惹起されるであろう眼内血管系の變化を時間的經過を追つて掴えて,どの様な反應の系列で起つているものであるかを知ろうとした。即ち高張葡萄糖液を頸動脈内に注射した場合の眼壓脈波の變化を撮影し,これより考えられる眼内血管系の反應状態及びこれに伴う眼壓變動に就き實驗したので此處に報告する。

コーチソン及びクロロマイセチンによる交感性眼炎治驗例

著者: 木村隆夫

ページ範囲:P.403 - P.405

 交感性眼炎の原因並びに治療に就ては,古來種種研究されたのであるが,最近の外國文献によると,Haik氏等は58人の著名眼科醫にアンケートを送り,29人の協力者を得て更に従來の文献上の例,及び自らの經驗を加え,72例の交感性眼炎患者に對するコーチソン及びコルチコトロピンによる治療に就て詳述し,交感性眼炎に對してコーチソン及びコルチコトロピンが一つの新治療として期待すべきであると述べている。
 又今春京都眼科學會で,山本博士のコーチンによる治驗例の發表があつた。其の他新大三國教授等はクロロマイセチン内服による交感性眼炎治驗例を述べ,交感性眼炎はリッツケッチア又は之に近いビールスに依て發現するというEugen Sch-reckの説に賛同して居られる。私は最近自ら執刀せる白内障患者が,辨状白内障摘出術後8週間で交感性眼炎を惹起し,コーチソンの筋肉内注射により驚くべき效果を見,之が3ヶ月後に小再發を起し更にクロロマイセチン内服に依て治癒せしめた1例を經驗致しましたので,茲に報告いたします。

トラコーマに對するサイアジン點眼藥の效果

著者: 室本龜吉

ページ範囲:P.406 - P.408

 戰後トラコーマ治療の寵児として盛に使用されたサルフア劑も昭和25年以來出現したテラマイシン,オーレオマイシン等の抗生物質には壓倒された感がある。少くとも我國に於てはトラコーマに對する此等の抗生物質の卓效は萬人の認めるところであるが,昨年米國のMissouri TrachomHospitalのSiniscalはトラコーマに對するナルフア劑と抗生物質との效力を比較して,サルフア劑の優位性を認め,特にガントリジンの藥效を紹介している。最近我國に於てもガントリジンと同一組成を有するサイアジンが製品化されているので,余は本劑の眼局所使用のトラコーマに對する效果を検討する目的で次の實驗を企てた次第である。

臨床講義

海綿洞症状を呈する2症例—眼窩細網肉腫及び交叉星細胞腫

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.409 - P.412

症例
 FallⅠ.
 54歳男子(昭和27年5月15日初診)
 主訴:右眼瞼下垂と複視。

談話室

勉強の仕方,學會のやり方の研究(1)

著者: 弓削經一

ページ範囲:P.413 - P.414

 今の學界を見ていると,どう走つたら可いかも考えずに,只むやみに走つている様に思われる。走り方を考えていると,後れをとるので,方法の方は後廻しになつている様である。然し之ではやがて疲れてしまつて結局,大きな後れをとることになるにちがいない。
 勉強の仕方を研究するといえば,當人は大いに進んでいる様に自負している様で面はゆいが,決してそんなわけではない。私が眠に疲れて,之は何とかしなければと思いついたからである。近頃の文献の數はまことにおびただしく,日本の眼科雑誌關係だけでも,原著のみで,今年だけでも既に600をこえている。之に學會抄録他誌掲載論を入れるとおびただしい數に上る。私のカード箱では,1951,52兩年合せるとピックアップした外國文献を加えると4.000枚をこえる。讀む可きものが餘りに多く,「何とかしなければなりませんなあ」と嘆ずる人が段々増して來た様である。人のやつたことを利用するのは,それだけ手間を省き自分の頭を廣げることになるので,之をうまくやる程進歩は早い。個人の學問的活動は集團に利用せしめることを目的としているのであるから發表,利用の方法に萬全を期し,少しでも有效にと心掛けなければならない事は當然であろう。學問と雖も大部分は凡人であるから。

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讀書寸感

著者: 中村康

ページ範囲:P.415 - P.415

 1)Physiology of the eye: Vol.2.Vision.(Ar-thur Linksz)(1952年發行)869頁,7600圓)
 本書は先に紹介したVol. 1 Opticsに次ぐ篇で第3卷はBiochemistryとなつてゐる。本書は本年になつて手に入れたものであるが内容があまりに六ヶ敷しいので閉口しているものである。視力と言う問題でよくもこんなに書くことがあるかと感心してしまつた。全章33項で一寸此處に紹介するにもうんざりする。讀んで見ても斷續的にしかわからないので,從つて此紹介も上すべりしてしまうことになるので本書の名をあげ新しく發賣されたことをつげるに止めよう。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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