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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科7巻9号

1953年09月発行

雑誌目次

綜説

眼科に於ける診斷と誤診—東京眼科講習會講演(28.6.7)

著者: 馬詰嘉吉

ページ範囲:P.453 - P.463

 私は眼科に於ける診斷と誤診と云う大きな表題を掲げたが,自分の身邊や從來歩んで來た道を,表題の樣な觀點から眺めて見る事とする。既に發表濟のものもあるし,又格別目あたらしい事もなく,日常診察場にありふれた事柄のみとなつたが茲に記述する次第である。
 眼科専門家は,他科に較べて日常非常に多數の患者を診療される。從つて一々視力視野,眼壓分泌物等の検査をしている遑はない。夫れにも拘らず立派に診療されるのは,充分なる基礎的訓練と豊富な經驗の賜である。併し乍ら,或る程度の基礎的訓練と經驗を得た時代に於て,すべての診療を直感的に處理し,系統的な検査に缺くる所があるならば,そこに思わぬ誤を招くものである。

第3回綜合醫擧賞入選論文

多發硬化症の診斷について

著者: 桑島治三郞

ページ範囲:P.465 - P.483

 ヨーロツパで多發硬化症が初めて醫學的に注目されたのは前世紀のなかば以前のことで,それから現在まですでに一世紀をこえる。この間に,シヤルコーやオツペンハイム以來もつとも不可解な病氣として,それだけにまた最も興味をそゝる課題のひとつとして,各方面から多くの業績が累積され,その結果,今日では本症が世界の到る所に最もありふれた器質的中枢神經疾患のひとつであることが明らかにされてきた1)
 一方,わが國では昔から本症の存在すら否定するような風潮が強く,今日なおその臨牀診斷たどに對しても必要以上の遲疑や,根據のない逡巡などが示される。

銀海餘滴

アリサイアミン

ページ範囲:P.483 - P.483

 ビタミンには,A,B,C,D,E,……と數えて40種以上もありますが,おれわれ日本人にとつてもつとも大切なものは,やはりB1
 このB1が,大切なことは皆の知るとおりです。

オレマイ.テラマイの一般名を改稱

ページ範囲:P.488 - P.488

 最近,オーレオマイシン及びテラマイシンの化學構造が明かになりWHOが先般此の兩者の一般的名稱を夫々クロルテトラサイクリン及びオキシテトラサイクリンと定めたので,わが國でも之に同調することとなり,厚生省では先般告示第65號をもつて「藥事法第41條第7號の規定により醫藥品を指定する件」の一部を改め,「オーレオマイシン」を「クロルテトラサイクリン」に「テラマイシン」を「オキシテトラサイクリン」と改稱した。

保險問答

ページ範囲:P.524 - P.524

結核性眼疾患に對する化學療法劑の内服と健康保險
 問 健康保險において,眼科の結核性疾患に對するパス及びヒドラジド(内服)は未だ認められていないものなりや。
 答 結核性眼疾患に對するパス及びヒドラジドの内服は未だ保險診療として採り入れられていない。

臨床實驗

圓鋸術後の濾過性瘢痕形成に就て

著者: 曲直部正夫

ページ範囲:P.484 - P.488

 緑内障に對する圓鋸術の要點は房水生理的濾過路の不完全なるを補い新排泄路を完成せしめる事である。而してこの手術が完遂され,その効果が發揮さるには何より先ず圓鋸で穿孔された鞏膜孔が永久に閉鎖されぬ事が必要なるは勿論だが,これのみでは單に鞏膜孔に相賞した丈けの新小室隙が前房に連らなり出來たに過ぎず,この小室隙に溜つた房水の一少部は或は結膜上皮の細胞表面に滲透して出て行くだろうが,これ丈けでは到底完全な新排泄路としての役割を果し得ぬ。從つて茲に常然濾過性瘢痕(F.N.と略す)形成の意義が改めて考究されねばならぬ。
 F.N.とは周知の如く鞏膜鋸孔上を被える球結膜面に生じたElliot氏の隆起部(Buckll乃至Kissl)を指すが私の經驗(後記)を申す迄もなく文献上で明らかな如く圓鋸術の治療効果を期するには術後この隆起部が形成される事が第一に緊要な事である。斯界の權威者山本教授が昭和17年京都眼科學會席上圓鋸術と言う題で講演された時圓鋸術の効果は一つにかゝつてF.N.形成如何にある旨強調された事は眞に至言であらう。

B.C.G.陽轉し難き體質のフリクテン患者の結核發病

著者: 小原博享

ページ範囲:P.489 - P.491

 結核は傳染病である以上,結核の發展,進展に對し感染樣式,環境などの影響が主要な役割を果すのであるが,結核に罹り易い傾向,或は結核症の發生に對し,體質が相當人きな影響を示す事に就ては異論のない所である。最近,B.C.G.難陽轉體質のものは結核發病し易いか,或は發病し難いか問題になつている所である。私はB.C.G.接種した事のある人でフに罹患した人の遠隔豫後を調査報告したが其の一環として數回のB.C.G.接種にも關わらず仲々陽轉せず數回B.C.G.接種した人でフに罹患した人の結核發病を調査したが其の發病率が非常に高かつたので茲に報告しフ患者の遠隔豫後に體質學的立場から追加したい。

稀有なる症状を呈したる1種の慢性瀰蔓性葡萄膜炎の1例

著者: 尾島英之 ,   長田昇

ページ範囲:P.492 - P.495

 急性瀰蔓性葡萄膜炎に關しては我國に於ては小柳氏次いで原田氏の畫期的な研究が發表されて以來數多くの輝かしい研究發表がなされているが,我々は今度極めて稀有なる症状を呈した一種の慢性葡萄膜炎に接したのでこゝに發表する次第である。

惡性絨毛上皮腫の眼瞼轉移例

著者: 戸田愼太郞

ページ範囲:P.495 - P.498

 惡性絨毛上皮腫の轉移形成を視器に見るのは甚だ稀であつて,特に眼瞼に轉移した例は我國の文献では,大正2年に緖方等の報告した瞼結膜に轉移後眼瞼に波及して來たという例があるのみである。最近著者は,眼瞼皮下に轉移したが爲に診斷が確定した甚だ興味ある1例に遭遇したので之を報告する。

本邦人高年者網膜血管に關する研究(第7報)—本邦人高年者網膜血管硬化と腎萎縮,腎,心,大動脈血管硬化との關係に就て

著者: 樋渡正五

ページ範囲:P.499 - P.503

 既に第6報に於て網膜血管硬化と腦血管硬化に就て詳細に述べたが,同時に腎臓萎縮や腎臓血管心臓冠状動脈並びに大動脈に就ても剖検時に検索するを得たので,之等と網膜血管の硬化に就て比較考察したので報告する。

眼疾患と毛細管脆弱性(第1報)—全身高血壓を伴う網膜出血及び原因不明の網膜出血(1)

著者: 三宅寅三 ,   小嶋芳子

ページ範囲:P.505 - P.508

 全身毛細管系の管壁抵抗及び透過性の變化は眼に對しても何等かの影響を及ぼすことは豫想される所であり,眼疾患と全身毛細管系の状態とを關係づけようとする試みは,既にGriffith1)等及びDonegan2)等の網膜出血,仁田氏3)の緑内障に關する研究が發表されており,又毛細管脆弱性増大に特効的に作用するルチンの抽出に伴つて,眼疾患の治療に對するルチンの効果に關しても,前記米國の網膜出血に對する治療を始めとして,我國でも若干の報告を散見するに至つたが,私共も諸種眼疾患について毛細管脆弱性検査を行つて來たので,その成績の概略とルチン劑の試用効果について豫報的に報告する。

春季カタルに見られたP氏小體類似顆粒

著者: 鈴木英夫

ページ範囲:P.509 - P.511

 Trachoma (以下Trと略す) Virusが未だ完全なる純粋培養の域に達しておらず,從つてTr病原體として,總ての人を納得せしむるものは無いのであるが,略々Virus疾患であり,且つ所謂Prowazek氏小體(以下P氏小體と略す)が此の細胞封入體であろうと云う類推は近年増々其の眞實性を増しつつある。從つてP氏小體の検索は臨床検査に於ても等閑に附されざる状態にある。然し乍らP氏小體の検索には長時間の努力と,熟練を要すると云われている爲に,研究室に於ても兎角面倒視される傾向あり,此の熟練を要すと云われる所以の1つはP氏小體類似顆粒の存在である。
 私もP氏小體検索中,時々此の類似顆粒の鑑別に悩まされたのであるが,特に頻回に出現する春季カタルに於ける封入體樣顆粒に興味を惹かれたので,検索成績を述べて諸賢の御批判を仰ぎたいと思う。

學校トラコーマの集團治療効果(第7報)—手術併用法によるテラマイシン及びオーレオマイシン(軟膏)の濃度別効果比較

著者: 今泉龜撤 ,   服部而立

ページ範囲:P.513 - P.517

 テラマイシン及びオーレオマイシンのトラコーマに卓効あることは既に周知の事實で,其の効果に就ての報告は枚擧に遑ない程である。然るに之等の藥劑の濃度別効果の優劣に關しては未だ一致していない點があり,この濃度の決定は,吾々の行つている集團治療の如き劃一的な治療方法の場合には特に必須條件である。今回はこの點に關して,既に臨眼紙上第1報並に第2報で發表した樣に,現在最も効果的な集團治療怯,即ち結膜擦過術に加うるにテラマイシン又はオーレオマイシン軟膏の術後療法の場合に就て報告する。

強力ネオミノフアーゲンCに依る眼疾患の臨床治驗

著者: 市原正文

ページ範囲:P.519 - P.524

 ミノフアーゲンCは十數年前にアミノ酸とグルクロン酸を主體とした抗アレルギー性劑として出され,これに含硫アミノ酸であるシスティンの抗ヒスタミン性を添加したのが強力ネオミノフアーゲンC (以下S.M.C.と略す)である。S.M.C.は血液學的にはアレルギー性顆粒増多症を抑制し,同時にアレルゲンに依る組織障碍である變化を制禦し,病理組織學的にはシュワルツマン反應に對し主としてシステインが皮膚或は肺のアレルギー病變を阻止する。故に眼科領域に於ける各種アレルギー性病變又はアレルギー性疾患に對し,抗レスタミン劑を使用すると同樣に或は寧ろ更に有効に使用出來るのではないかと思考した。而して本劑は先に眼科領域に於ては三橋,林氏の實驗治驗の報告がある。
 余は昭和27年春より約1ヵ年本劑を以下述ぶる疾患に試用し,いささかの成績を得たので此處に追加報告をする。

ブレーキオイルに依る角膜障碍の1例

著者: 古城力 ,   西山茂

ページ範囲:P.525 - P.525

 近代文明の發達と共に年々眼外傷も増加し文献的にも實に多數の種類のものが報告されている。著者等は最近ブレーキオイルによる角膜損傷の1例に遭遇した。最近2〜3年間の自動車の増加は全く目覺しいもので,今後自動車關係の眼外傷が増加の一途をたどるのではないかと思われる。日本眼科全書外傷編及本邦最近の文献を見ても,かかる報告例はない樣に見受けられるので以下御參考迄に自驗例を記載する。

臨床講義

白内障摘出術に於ける角膜辨を下方に作る方が適當な症例に就て

著者: 須田經宇

ページ範囲:P.527 - P.530

 白内障を摘出する場合現在は原則として角膜輪部上方に切開を加えている。然しながら白内障摘出術の歴史をひもどいてみると,初めは下方に切開を加えたようである。摘出術の歴史上有名なるはJacques Daviel(1745,4.2.)のHopital du Saint-Espiritに於ける水晶體摘出である。この際J. Davielは先ず壓下法を行い失敗し,遂に角膜下縁を鎗状刀で切開し,水晶體を眼球外に摘出したのである(同氏以前にも水晶體摘出したものあり,同氏以前の摘出術歴史を知ることは同氏の成功の鍵を察知することが出來るのであり是非文献2)の論文を讀まれたし)。その後角膜切開の位置,大さ,型等は幾多の學者により研究され(文献1—b,3—a,參照),遂に現在一般に行われている樣に通常は角膜輪部上方に切開を加える樣になつたのである。何故切開を上方に加えるようになつたのであろうか,之に關してElschnigは下方へ切開をおくと,下眼瞼が鞏膜傷縁を直接後方へ壓迫する點,手術直後不用意の眼球運動の際に結膜辨が容易に移動し得る點,下眼瞼縁が直接切傷に挾まり,術創を哆開され得る場台が考えられる點,亂視をより強く惹起せしめる點等の不利の諸點をあげている。その他若し脱出を防ぐための虹彩切除を施行する場合は上方切開の方が有利である。
 然しながら下方に切開を加えることが有利な場合がある。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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