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臨床報告
線維柱帯切開術後の前房出血抑制の試み
著者: 小林博1
所属機関: 1国立病院機構関門医療センター眼科
ページ範囲:P.1551 - P.1558
文献購入ページに移動要約 目的:線維柱帯切開術後の前房出血に対して粘弾性物質の使用による抑制を試み,従来の方法と比較した。
対象と方法:対象は,原発性開放隅角緑内障に対して線維柱帯切開術を施行し12か月以上経過観察した患者85名(68.8±8.2歳,男性47名,女性38名)である。40名は従来の方法で手術を施行し,45名は前房出血を抑えるように試みた。Schlemm管内に挿入したトラベクロトームを回旋する前に,前房内に1%ヒアルロン酸ナトリウムを充塡し,できる限り漏出がないように強膜弁を縫合した後に粘弾性物質を抜去した。12か月間にわたり術後経過を観察し,両群を比較した。
結果:術前および手術12か月後の眼圧は,従来群が25.7±2.8mmHg,15.3±2.9mmHg,前房出血抑制群が25.2±2.0mmHg,15.0±2.9mmHgであった(術前p=0.3,12か月後p=0.7)。両群とも全例で術中にSchlemm管切開部位から出血が認められた。術後に1mm以上の前房出血が,従来群では全例(100%)でみられたのに対して,前房出血抑制群では6眼(13.3%)であり(p<0.0001),前房出血が従来群では6.6±2.9日,前房出血抑制群では2.0±2.7日で消退した(p<0.0001)。術後高眼圧は従来群で6眼(15%),前房出血抑制群で2眼(6.7%)であった(p=0.2)。両眼ともに重篤な合併症はなかった。
結論:粘弾性物質の使用で,線維柱帯切開術後の前房出血の頻度が有意に減少した。
対象と方法:対象は,原発性開放隅角緑内障に対して線維柱帯切開術を施行し12か月以上経過観察した患者85名(68.8±8.2歳,男性47名,女性38名)である。40名は従来の方法で手術を施行し,45名は前房出血を抑えるように試みた。Schlemm管内に挿入したトラベクロトームを回旋する前に,前房内に1%ヒアルロン酸ナトリウムを充塡し,できる限り漏出がないように強膜弁を縫合した後に粘弾性物質を抜去した。12か月間にわたり術後経過を観察し,両群を比較した。
結果:術前および手術12か月後の眼圧は,従来群が25.7±2.8mmHg,15.3±2.9mmHg,前房出血抑制群が25.2±2.0mmHg,15.0±2.9mmHgであった(術前p=0.3,12か月後p=0.7)。両群とも全例で術中にSchlemm管切開部位から出血が認められた。術後に1mm以上の前房出血が,従来群では全例(100%)でみられたのに対して,前房出血抑制群では6眼(13.3%)であり(p<0.0001),前房出血が従来群では6.6±2.9日,前房出血抑制群では2.0±2.7日で消退した(p<0.0001)。術後高眼圧は従来群で6眼(15%),前房出血抑制群で2眼(6.7%)であった(p=0.2)。両眼ともに重篤な合併症はなかった。
結論:粘弾性物質の使用で,線維柱帯切開術後の前房出血の頻度が有意に減少した。
参考文献
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