文献詳細
文献概要
特集 緑内障治療の副作用・合併症対策総ざらい
濾過手術
著者: 大鳥安正1
所属機関: 1国立病院機構大阪医療センター眼科
ページ範囲:P.160 - P.168
文献購入ページに移動はじめに
濾過手術の代表である線維柱帯切除術(以下,トラベクレクトミー)は1961年にSugarが半層強膜弁下に瘻孔を作製する術式を報告したことに始まる。その当時,房水はSchlemm管や血管に吸収されて眼圧が下降すると考えられていた。1968年にCairnsによってトラベクレクトミーの奏効機序は結膜下に房水が濾過されていることが報告され,その後1983年ChenによるマイトマイシンCの併用,1984年Heuerによる5-フルオロウラシルの併用によって濾過機能が持続するようになった。その後もトラベクレクトミーは多数の改良を経て緑内障手術のゴールドスタンダードとなった1)。
血管新生緑内障や正常眼圧緑内障を除いた日本人でのマイトマイシンCを併用したトラベクレクトミーでは,眼圧が5〜15mmHgになるのは,1年後で78%,5年後で50%であり,偽水晶体眼,術前高眼圧,3回以上の濾過手術既往は術後成績が悪く,術後のneedlingや白内障手術も術後成績に影響すると報告されている2)。術後早期合併症には,脈絡膜剝離,浅前房,前房出血があり,術後1か月以降の合併症には,低眼圧黄斑症,濾過胞感染がある。術前の状態,術後早期および晩期に起こる合併症にいかに対処するかがトラベクレクトミーの術後成績に影響する。本稿では,トラベクレクトミーでの合併症とその対策について解説する。
濾過手術の代表である線維柱帯切除術(以下,トラベクレクトミー)は1961年にSugarが半層強膜弁下に瘻孔を作製する術式を報告したことに始まる。その当時,房水はSchlemm管や血管に吸収されて眼圧が下降すると考えられていた。1968年にCairnsによってトラベクレクトミーの奏効機序は結膜下に房水が濾過されていることが報告され,その後1983年ChenによるマイトマイシンCの併用,1984年Heuerによる5-フルオロウラシルの併用によって濾過機能が持続するようになった。その後もトラベクレクトミーは多数の改良を経て緑内障手術のゴールドスタンダードとなった1)。
血管新生緑内障や正常眼圧緑内障を除いた日本人でのマイトマイシンCを併用したトラベクレクトミーでは,眼圧が5〜15mmHgになるのは,1年後で78%,5年後で50%であり,偽水晶体眼,術前高眼圧,3回以上の濾過手術既往は術後成績が悪く,術後のneedlingや白内障手術も術後成績に影響すると報告されている2)。術後早期合併症には,脈絡膜剝離,浅前房,前房出血があり,術後1か月以降の合併症には,低眼圧黄斑症,濾過胞感染がある。術前の状態,術後早期および晩期に起こる合併症にいかに対処するかがトラベクレクトミーの術後成績に影響する。本稿では,トラベクレクトミーでの合併症とその対策について解説する。
参考文献
1)Van Buskirk EM, Shields MB:100 Years of Progress in Glaucoma. Lippincott-Raven, Philadelphia, 1997
2)Sugimoto Y, Mochizuki H, Okubo S et al:Intraocular pressure outcomes and risk factors for failure in the collaborative bleb-related infection incidence and treatment study. Ophthalmology 122:2223-2233, 2015
3)Shirato S, Maruyama K, Haneda M:Resuturing scleral flap through conjunctiva for treatment of excess filtration. Am J Ophthalmol 137:173-174, 2004
4)三浦聡子・臼井審一・多田明日美・他:強膜弁直上に漏出点がある場合の新しい濾過胞再建術を施行した2症例.眼科臨床紀要7:174-178,2014
5)Maestrini HA, Cronenberger S, Matoso HDS et al:Late needling of flat filtering bleb with adjunctive mitomycin C:efficacy and safety for the corneal endothelium. Ophthalmology 118:755-762, 2011
6)Yamamoto T, Sawada A, Mayama C et al:The 5-year incidence of bleb-related infection and its risk after filtering surgeries with adjunctive mitomycin C:collaborative bleb-related infection incidence and treatment study 2. Ophthalmology 121:1101-1106, 2014
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