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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科70巻3号

2016年03月発行

文献概要

特集 第69回日本臨床眼科学会講演集[1] 原著

蝶形骨洞部腺様囊胞癌に対する重粒子線治療により放射線網膜症を発症した1例

著者: 渡邊浩一郎1 戸島慎二2 柴田貴世2 細川海音2 土居真一郎2 野田拓志1 寺田佳子1 原和之1

所属機関: 1広島市立広島市民病院眼科 2岡山大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.387 - P.392

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要約 目的:蝶形骨洞部腺様囊胞癌に対する重粒子線治療後に放射線網膜症を発症した症例の報告。

症例:26歳女性。右蝶形骨洞から海綿静脈洞に及ぶ腺様囊胞癌に対して総量57.6GyE(16回)の重粒子線照射を受けた。19か月後,右眼視力低下を訴え当科を受診。矯正視力は右0.8,左1.2,右眼底に点状出血と軟性白斑があった。蛍光眼底造影で右眼に無灌流域,後極に血管外漏出があり,放射線網膜症と診断した。32か月後より右眼白内障が進行し,白内障手術を行った。42か月後,蛍光眼底造影で右眼網膜新生血管が出現し,網膜光凝固を行った。以後5年間の経過は良好で腫瘍の再発はない。

結論:蝶形骨洞部腺様囊胞癌への重粒子線治療により放射線網膜症が発症することがある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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