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連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第23回
義眼床形成術—目を失った患者に対する心の治療
著者: 柿﨑裕彦1
所属機関: 1愛知医科大学病院眼形成・眼窩・涙道外科
ページ範囲:P.1036 - P.1041
文献購入ページに移動はじめに
八子恵子先生が書かれた義眼床形成術の総説1)の中に,「眼球を失うことになる患者は,その後の義眼装着に大きな不安を抱くとともに,義眼装着を他人に気付かれないことを願っている。従って我々眼科医は,最終的治療である眼球摘出術や内容除去術を行う際に,その治療目的を十分に達成することはもとより,よりよい義眼床を形成するよう努力すべきである」とのくだりがあります。視機能を救うという戦いに敗北した眼科医が最後に患者にしてあげられること,それが「よりよい義眼床を形成すること」なのです。
ここで「よりよい義眼床」とはどのような義眼床をさすのでしょうか? 義眼を入れたときに見栄えが良くて,それが動くこと。これに尽きます。本稿ではこの命題を実現するためにいかなる方策をもって手術に臨むべきか,という観点から,眼球内容摘出術(evisceration)と眼球摘出術(enucleation)を比較し,また,変形した義眼床に対する二次的な修正について解説します。
八子恵子先生が書かれた義眼床形成術の総説1)の中に,「眼球を失うことになる患者は,その後の義眼装着に大きな不安を抱くとともに,義眼装着を他人に気付かれないことを願っている。従って我々眼科医は,最終的治療である眼球摘出術や内容除去術を行う際に,その治療目的を十分に達成することはもとより,よりよい義眼床を形成するよう努力すべきである」とのくだりがあります。視機能を救うという戦いに敗北した眼科医が最後に患者にしてあげられること,それが「よりよい義眼床を形成すること」なのです。
ここで「よりよい義眼床」とはどのような義眼床をさすのでしょうか? 義眼を入れたときに見栄えが良くて,それが動くこと。これに尽きます。本稿ではこの命題を実現するためにいかなる方策をもって手術に臨むべきか,という観点から,眼球内容摘出術(evisceration)と眼球摘出術(enucleation)を比較し,また,変形した義眼床に対する二次的な修正について解説します。
参考文献
1)八子恵子:義眼床形成術.日本の眼科72:779-782,2001
2)Timothy NH, Freilich DE, Linberg JV:Evisceration versus enucleation from ocularist's perspective. Ophthal Plast Reconstr Surg 19:417-420, 2003
3)Zheng C, Wu AY:Enucleation versus evisceration in ocular trauma:a retrospective review and study of current literature. Orbit 32:356-361, 2013
4)du Toit N, Motala MI, Richards J et al:The risk of sympathetic ophthalmia following eviscveration for penetrating eye injuries at Groote Schuur Hospital. Br J Ophthalmol 92:61-63, 2008
5)Levine MR, Pou CR, Lash RH:The 1998 Wendell Hughes Lecture. Evisceration:is sympathetic ophthalmia a concern in the new millennium? Ophthal Plast Reconstr Surg 15:4-8, 1999
6)Kostick DA, Linberg JV:Evisceration with hydroxyapatite implant. Surgical technique and review of 31 case reports. Ophthalmology 102:1542-1549, 1995
7)Stephenson CM. Evisceration of the eye with expansion sclerotomies. Ophthal Plast Reconstr Surg 3:249-251, 1987
8)Smith RJ, Malet T:Auricular cartilage grafting to correct lower conjunctival fornix retraction and eyelid malposition in anophthalmic patients. Ophthal Plast Reconstr Surg 24:13-18, 2008
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