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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科70巻7号

2016年07月発行

文献概要

臨床報告

両眼の水平様半盲を呈した梅毒性ぶどう膜炎

著者: 近澤庸平1 山田成明1 高田祥平1 八田裕貴子1 青木賢樹1 八田尚人1

所属機関: 1富山県立中央病院眼科

ページ範囲:P.1047 - P.1052

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要約 目的:両眼の水平半盲を呈した梅毒性ぶどう膜炎の症例の報告。

症例:66歳男性が4か月前からの視力障害で受診した。発症前の視力は左右とも0.7であったという。輸血歴と海外渡航歴はない。

所見と経過:矯正視力は右0.2,左0.6で,対光反射が減弱していた。両眼に硝子体混濁,脈絡膜萎縮,乳頭周囲の白点病変があった。Goldmann動的量的視野検査で両眼に上方の水平半盲があった。血液の梅毒反応が陽性で,髄液に単核球と蛋白の上昇があり,大脳のMRI検査所見と神経症状などから神経梅毒と診断した。ペニシリンの大量点滴とステロイド点滴で,翌日から視力と自覚症状の改善が始まり,13日後に視野が改善した。治療開始から21か月後の現在,右0.7,左1.0の視力を維持している。

結論:梅毒性ぶどう膜炎では,神経梅毒が併発し,視野異常を呈しうることを本症例は示している。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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