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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科70巻7号

2016年07月発行

文献概要

臨床報告

免疫療法を施行中の全身性強皮症にサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎が発症した症例

著者: 岡野崇子1 戸所大輔1 袖山博健1 山田教弘2 岸章治3

所属機関: 1群馬大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座眼科学分野 2埼玉医科大学眼科学教室 3前橋中央眼科

ページ範囲:P.1053 - P.1057

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要約 目的:全身性強皮症の加療中にサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎が発症した症例の報告。

症例:75歳男性が左眼の飛蚊症で受診した。紹介医の診断は急性網膜壊死であった。1年前に全身性強皮症と間質性肺炎と診断され,免疫抑制療法が行われていた。両眼に白内障手術を受けていた。

所見と経過:矯正視力は右1.2,左1.0で,両眼の網膜周辺部に網膜血管炎と黄白色の病変があった。左眼から採取した前房水のPCRで,CMV-DNAが陽性で,ヘルペスウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルスDNAは陰性であった。CMV網膜炎と診断し,ガンシクロビルの全身投与と硝子体注射を開始した。全身性強皮症と間質性肺炎に対する免疫抑制療法は継続した。4週後に血液のCMV所見は陰性化し,右眼の網膜滲出斑は7週後,左眼の滲出斑は11週後に消失した。初診から30か月後の現在まで再発はなく,左右眼とも1.2の視力を維持している。

結論:HIVの感染がなくても,ステロイドや免疫抑制剤による治療を受けている場合には,CMV網膜炎を発症する可能性があることを本症例は示している。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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