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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科70巻8号

2016年08月発行

文献概要

連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第24回

流涙症の診断—流涙診療事始め

著者: 鶴丸修士1

所属機関: 1公立八女総合病院眼科

ページ範囲:P.1212 - P.1217

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はじめに

 流涙症にアプローチする際,最も重要なことは,流涙症が症状ではなく疾患であることを理解することです。眼脂に悩む慢性涙囊炎の患者に日々涙洗を行うのは,一時的に症状を改善することにはなっても,疾患に対する根治的治療とはなりません。

 外来で,長期間涙洗をされている患者さんが来院することがあります。治療のムンテラを行い,長年治ることはないと言われ続けていたのが,治癒することを想定され,感極まって涙を流した(涙道閉塞だからではなく)ケースが多数あります。白内障や緑内障,網膜硝子体疾患では経験したことがありません…。

 などと,エラそうに述べてきましたが,かくいう筆者も流涙症に携わる前は,そのような症例を多数生み出してきております。

 流涙症に苦手意識があるとすれば,日常診療で時間がないなか,多種多様で,全く異なる病態(例えばドライアイと涙道閉塞)が混在する複雑な疾患と捉えるからではないでしょうか? たいていの場合は,涙を止めるためには,どの点眼薬が良いだろうかと最初から治療を意識してしまい,診断を順序立てていない場合が多いのではないでしょうか。例えば涙道疾患を得意とする先生※1の場合,「この症例は涙道閉塞だ!」と決めつけて,いきなり侵襲的な通水検査を行ってしまい,

 先生「ほら,流れてないでしょう!?」

 患者「いえ,しょっぱい味がしますけど?」

 先生「…いや,それ鼻水でしょ!」

 などとわけのわからない状態となり,それ以降の検査,例えばTMH(tear meniscus height:涙液メニスカス高)測定,BUT(tear film break-up time:涙液層破綻時間),Schirmerテストなどができなくなり,診断不能な状態に陥ってしまうかもしれません(※1:筆者のこと)。

 この稿では,「流涙診療事始め」として,難しい話は成書に譲り,あくまで臨床に即した短時間でできる診断アプローチを4つの段階に分けて述べたいと思います。

参考文献

1)Munk PL, Lin DT, Morris DC:Epiphora:treatment by means of dacryocystoplasty with balloon dilation of the nasolacrimal drainage apparatus. Radiology 177:687-690, 1990
2)鎌尾知行・白石 敦:眼表面から見た流涙症.眼科手術27:529-534,2014
3)谷吉オリエ・鶴丸修士:生理食塩水点眼による涙液メニスカス高の経時的測定.新しい眼科投稿中.
4)加藤直子:涙液検査 眼手術学3涙器・涙道277-281,2014
5)加藤 愛・矢部比呂夫:涙囊鼻腔吻合術における閉塞部位別の術後成績.眼科手術21:265-268,2008.
6)Mimura M, Ueki M, Oku H et al:Indications for and effects of Nunchaku-style silicone tube intubation for primary acquired lacrimal drainage obstruction. Jpn J Opthalmol 59:266-272, 2015
7)石橋弘基・鶴丸修士・山川良治:公立八女総合病院における涙道内視鏡併用チューブ挿入術の治療成績.あたらしい眼科32:1773-1776,2015
8)Kakizaki H, Zako M, Miyaishi O et al:The lacrimal canaliculus and sac bordered by the Horner's muscle form the functional lacrimal drainage system. Ophthalmology 112:710-716, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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