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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科70巻8号

2016年08月発行

文献概要

特集 第69回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著

激痛を伴いマイラゲル®の合併症と鑑別を要した転移性眼窩腫瘍の1例

著者: 赤岩慶1 四宮加容1 大串陽子1 影治照喜2 阿部彰子3 三田村佳典1

所属機関: 1徳島大学大学院医歯薬研究部眼科学分野 2徳島大学大学院医歯薬研究部脳神経外科学分野 3徳島大学大学院医歯薬研究部産婦人科学分野

ページ範囲:P.1319 - P.1324

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要約 目的:激痛があり,過去のマイラゲル®を使用した網膜剝離手術との鑑別を要した転移性眼窩腫瘍の症例の報告。

症例:63歳の女性が右眼の眼痛で紹介受診した。15年前に網膜剝離に対するマイラゲル®強膜スポンジによる手術が両眼に行われた。2か月前に子宮頸癌が発見され,化学療法と放射線照射を受けている。

所見と経過:矯正視力は右0.8,左1.2で,両眼にほぼ−4Dの近視があった。バックルによる眼底の隆起が両眼にあり,結膜下のバックルが透見または触知された。右眼の眼球運動が制限され,外転時に疼痛が増強した。マイラゲル®による合併症が疑われたが,4日後に眼痛が増悪した。MRIで右眼の内直筋に腫瘤があったが,マイラゲル®の膨化が疼痛の原因と考えて除去した。その8日後に眼窩内腫瘍が増大し,これを摘出した。病理学的に子宮頸癌の内直筋転移と診断された。その後全身への転移が多発し,2か月後に不帰の転帰をとった。

結論:転移性眼窩腫瘍が疼痛を伴うことは少ないが,本症例では腫瘍の急速な増大が激痛の原因になったと推定される。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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