icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科70巻8号

2016年08月発行

文献概要

特集 第69回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著

網膜光凝固術が有効であった網膜出血を合併した一過性骨髄異常増殖症の1例

著者: 木下明夫1 稲本美和子1 高畑太一1 諸岡美智子1 濵口陽2 青木幹弘2

所属機関: 1国立病院機構長崎医療センター眼科 2国立病院機構長崎医療センター小児科

ページ範囲:P.1325 - P.1328

文献購入ページに移動
要約 背景:一過性骨髄異常増殖症(TAM)は,Down症候群などの新生児期に白血病様芽球が末梢血に増加する疾患である。眼底病変を合併した報告はほとんどない。

目的:TAMに網膜出血が併発したDown症候群の1例の報告。

症例:在胎41週で生まれた男児で,生下時体重は3,420gであった。出生直後に呼吸が緊迫し,血中酸素濃度が低下して,出生当日に新生児集中管理室に入院した。TAMを併発したDown症候群と診断された。日齢21に眼科を受診した。

所見と経過:Down症候群に特有な顔貌があった。角膜は透明で,両眼に網膜動静脈の拡張と蛇行,左眼に網膜出血があった。日齢45に左眼の硝子体出血と線維性増殖膜が発症し,汎網膜光凝固が行われた。左眼の網膜出血は改善し,1年後の現在まで眼底病変の悪化はない。

結論:本症例では,TAMにより過粘稠度症候群と網膜内虚血が生じたと推定され,新生児期からの眼科受診が有用であった。

参考文献

1)Nagao T, Lampkin BC, Hug G:A neonate with Down's syndrome and transient abnormal myelopoiesis:Serial blood and bone marrow studies. Blood 36:443-447, 1970
2)林 泰秀・本間洋子・伊藤悦郎・他:ダウン症とtransient abnormal myelopoiesis(TAM).日本未熟児新生児学会雑誌19:7-10,2007
3)原 雄将・嘉村由美・及川亜希・他:両眼視力低下を契機に診断された小児慢性骨髄性白血病の1例.日眼会誌114:459-463,2010
4)宮野良子・三田村佳典・田下亜佐子・他:過粘稠度症候群により周辺部網膜虚血,硝子体出血をきたした慢性骨髄性白血病の1例.あたらしい眼科21:1141-1144,2004
5)橋本喬史:過粘着性症候群.日本臨床53:159-161,1995
6)松村 到・金倉 譲:過粘稠度症候群.総合臨床48:187-188
7)富田 香・釣井ひとみ・大塚晴子・他:Down症候群の小児304例の眼所見.日眼会誌117:749-760,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?