icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科71巻10号

2017年10月発行

文献概要

特集 第70回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著

眼底所見からコレステロール塞栓症と考えられた急性腎不全の1例

著者: 三根正12 力武修一3 江内田寛1

所属機関: 1佐賀大学医学部眼科学講座 2佐賀県医療センター好生館 3佐賀県医療センター好生館腎臓内科

ページ範囲:P.1575 - P.1578

文献購入ページに移動
要約 目的:コレステロール塞栓症と考えられた急性腎不全の症例の報告。

症例:79歳の女性が,腹部大動脈瘤に対するステント手術を受け,術後にアスピリン100mg/日の内服が行われた。1か月後に血清のクレアチニン値が3.1mg/dlに上昇し,進行性の腎機能低下と診断され,眼科に紹介された。

所見と経過:矯正視力は左右とも1.2で,右眼網膜の2か所に動脈枝の塞栓子があった。蛍光眼底造影で血流の途絶はなく,視野異常もなかった。頸部血管エコーで右内頸動脈に中等度以上の狭窄があった。2週後に両眼の網膜動脈に塞栓子が認められ,コレステロール塞栓症が推定された。腎生検では腎硬化症の所見のみがあり,塞栓子はなかった。血清のクレアチニン値は1.1mg/dlに低下し,ステント手術の3か月後以降は網膜動脈の塞栓子は生じなかった。

結論:本症例は,急性腎不全に併発したコレステロール塞栓症であると推定され,眼底検査がその診断に有用であった。

参考文献

1)Flory C:Arterial occlusions produced by emboli from eroded aortic atheromatous plaques. Am J Pathol 21:549-565, 1945
2)新沢真紀・猪阪善隆・守山敏樹:コレステロール塞栓症.総合臨床59:1423-1427,2010
3)Blankenship JC, Butler M, Garbes A:Prospective assessment of cholesterol embolization in patients with acute myocardial infarction treated with thrombolytic vs conservative therapy. Chest 107:662-668, 1995
4)Belenfant X, Meyrier A, Jacquot C:Supportive treatment improves survival in multivisceral cholesterol crystal embolism. Am J Kidney Dis 33:840-850, 1999
5)矢田貝剛・三澤淳子・平川聡史・他:視野欠損を伴ったコレステロール結晶塞栓症の1例.臨皮66:417-420,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?