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特集 第70回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著
眼底所見からコレステロール塞栓症と考えられた急性腎不全の1例
著者: 三根正12 力武修一3 江内田寛1
所属機関: 1佐賀大学医学部眼科学講座 2佐賀県医療センター好生館 3佐賀県医療センター好生館腎臓内科
ページ範囲:P.1575 - P.1578
文献購入ページに移動症例:79歳の女性が,腹部大動脈瘤に対するステント手術を受け,術後にアスピリン100mg/日の内服が行われた。1か月後に血清のクレアチニン値が3.1mg/dlに上昇し,進行性の腎機能低下と診断され,眼科に紹介された。
所見と経過:矯正視力は左右とも1.2で,右眼網膜の2か所に動脈枝の塞栓子があった。蛍光眼底造影で血流の途絶はなく,視野異常もなかった。頸部血管エコーで右内頸動脈に中等度以上の狭窄があった。2週後に両眼の網膜動脈に塞栓子が認められ,コレステロール塞栓症が推定された。腎生検では腎硬化症の所見のみがあり,塞栓子はなかった。血清のクレアチニン値は1.1mg/dlに低下し,ステント手術の3か月後以降は網膜動脈の塞栓子は生じなかった。
結論:本症例は,急性腎不全に併発したコレステロール塞栓症であると推定され,眼底検査がその診断に有用であった。
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