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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科71巻7号

2017年07月発行

文献概要

文庫の窓から

『格致餘論』

著者: 安部郁子1 松岡尚則1

所属機関: 1研医会

ページ範囲:P.1110 - P.1114

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 『格致餘論』は元代に著わされた医学書である(図1〜6)。序文には30歳の時に母親が脾を患ったことをきっかけに医学を志し,母の病を薬で治療したと述べられている。どの医者にも治せなかった病を,『素問』を3年学び,さらに医学を2年学ぶことで自らが快方に向かわせたというこの人物こそ,以降の医学に大きな影響を与えた朱丹溪(1281〜1358)である。朱丹溪は名を震亨,字を彦修といい,義烏(現在の浙江省義烏市)の出身。住まいが赤い渓流の傍らにあったことから,門人たちは丹溪翁と尊称したという。その医学は李東垣の「李」と朱震亨の「朱」をとって「李朱医学」と呼ばれ,現代中国医学へとつながりを持ち,わが国にとっても戦国期に取り入れられ曲直瀬道三らによって大きく広められている。

 『格致餘論』という書名は『礼記』大学に理想の政治への初段階として,ものごとの道理を窮めただすことが求められており,これを「格物」といい,また朱子学で知識を窮めて物事の道理に通じることを「致知」というが,こうした言葉から「格致」と名付けたらしい。序文では「古の人は医学を,我々儒者にとっての格物致知の一事とした」ので『格致餘論』としたとある。

参考文献

1)岡西為人:中国醫書本草考.南大阪印刷センター,大阪,1974
2)石田秀実:中国医学思想史.東京大学出版会,東京,1992
3)真柳 誠:「『格致余論』『局方発揮』解題」『和刻漢籍医書集成』第6輯所収.エンタプライズ,東京,1989(http://square.umin.ac.jp/mayanagi/paper01/kakuchikaidai.html)
4)長谷部英一・秦 玲子・上村元顧・他:格致餘論注釈.医聖社,東京,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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