臨床眼科71巻9号

2017年09月発行

特集 第70回日本臨床眼科学会講演集［7］ 原著

自動車運転について相談があった視覚障害の身体障害者手帳の該当がない3症例のFunctional Vision Scoreでの評価

著者： 鶴岡三惠子¹ 加茂純子² 井上賢治¹

所属機関： ¹井上眼科病院 ²甲府共立病院眼科

ページ範囲：P.1423 - P.1433

要約　目的：自動車運転の相談があった視覚障害者手帳に該当しない3例のFunctional Vision Score（FVS）の評価を行ったので報告する。

対象と方法：症例1は53歳男性，緑内障。症例2は55歳男性，網膜色素変性。症例3は46歳女性，下垂体腫瘍。FVSおよび，イリノイ州（米国），英国，および日本の運転免許の資格基準で比較した。

結果：症例1はFVS67.4。身体障害者5級相当の視覚障害を認めた。運転は米国で適格あり，英国と日本で適格なし。症例2はFVS54.7。手帳は該当なし。運転は米国と日本で適格あり，英国で適格なし。症例3はFVS77.6。手帳は該当なし。運転は米国と日本で適格あり，英国で適格なし。

結論：運転の不自由さは，FVSや英国の視野規定では実勢に即して評価できる可能性が示唆され，中心暗点の症例ではFVSにより正確に評価できた。

参考文献

1）国松志保：視野と運転免許．OCULISTA 11：54-61，2014

2）青木由紀・国松志保・原　岳・他：自治医科大学緑内障外来にて交通事故の既往を認めた末期緑内障患者の2症例．あたらしい眼科25：1011-1016，2008

3）加茂純子：世界の運転免許の視機能基準から日本の基準をどうしていくか？．眼臨紀2：224-231，2009

4）加茂純子：身体障害認定における視覚障害評価．第1回　日本の眼科82：165-167，2011

5）加茂純子：身体障害認定における視覚障害評価．第2回．日本の眼科82：463-467，2011

6）加茂純子：身体障害認定における視覚障害評価．第3回．日本の眼科82：755-758，2011

7）加茂純子：身体障害認定における視覚障害評価．第4回．日本の眼科82：1069-1072，2011

8）加茂純子：身体障害認定における視覚障害評価．第5回．日本の眼科82：1339-1341，2011

9）加茂純子：身体障害認定における視覚障害評価．第6回．日本の眼科82：1617-1619，2011

10）山梨県視覚障害を考える会（http://mayeyeclinic.sharepoint.com/Pages/VFScountingandoverlay.aspx）

11）加茂純子・原田　亮・宇田川さち子・他：American Medical AssociationのVisual Field ScoreのHumphrey Field Scoreによる静的視野とGoldmann視野の結果の試行．臨眼65：1243-1249，2011

12）Chisholm C：Visual Requirements for driving. DRIVER'S VISION, 40-44 2008

13）英国政府ポータルサイト（https://www.gov.uk/guidance/visual-disorders-assessing-fitness-to-drive）

14）加茂純子・原田　亮・杉浦寅男・他：Colenbrander，Estermanグリッドと日本の身障者視野判定法の比較．眼臨紀5：315-321，2012

15）加茂純子・原田　亮・松本行弘：緑内障のある運転手のBinocular Esterman Score対Functional Field ScoreのThe 25-item National Eye Institute Visual Function Questionnaireへの関連．日本ロービジョン学会誌13：11-15，2013

16）村上美紀：就労年齢におけるFVSとロービジョンケア．眼臨紀7：934-940，2014