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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科72巻1号

2018年01月発行

雑誌目次

特集 黄斑円孔の最新レビュー

企画にあたって

著者: 鈴木康之

ページ範囲:P.13 - P.13

 黄斑円孔は特発性あるいは外傷などによって起こる黄斑部網膜の円孔で,中心視力低下および歪視をきたし,さらに強度近視などで網膜剝離を発症した場合には強い視力障害を起こす疾患であり,1988年に発表されたGassらの報告をはじめとした多くの研究者の検討ならびに光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)の進歩と普及によって,その病態生理に関する理解が近年大きく進展したことは,皆さんよくご存じのことと思う。さらに,さまざまな手術手技の工夫や手術機器の進歩によって,手術成績も大きく向上し,現在,網膜疾患のなかでも手術治療効果がきわめて高い疾患の1つとして,多くの施設で治療が行われている。

 本特集では,黄斑変性に関する最近の知見に関して第一線で研究成果を挙げられている先生方にご執筆を依頼した。上村昭典先生には後部硝子体剝離に際しての硝子体からの牽引を起因とする黄斑円孔の発生機序と病態の進行,そしてGass分類にOCT所見による新知見を加味したIVTS(The International Vitreomacular Traction Study)による新分類,さらに,それぞれの黄斑円孔の特徴や鑑別診断および疫学について解説いただいた。また,近年大きく進歩している手術手技に関し,黄斑円孔の術前術後評価法については馬場隆之先生に,内境界膜可視化のそれぞれの手法の特徴,利点,問題点と手法間の比較については東邦洋先生らに,最近難治性黄斑円孔に対する新たな治療法として注目されているinverted ILM flap techniqueの実際ならびに功罪については加瀬諭先生に,手術予後の向上とともにより患者の負担を軽減する方向に向かっている術後管理の最近の動向については厚東隆志先生に,そして見逃されがちな術後の視野障害の問題点について土屋俊輔先生らに解説いただいている。黄斑円孔の理解ならびに診療に際し,本特集を参考にしていただければ幸いである。

黄斑円孔の病態,分類および疫学

著者: 上村昭典

ページ範囲:P.14 - P.23

はじめに

 黄斑円孔は主に中高年の女性に発生し,中心視力低下をきたす疾患である。その最初の臨床的記載は1870年頃で,主に外傷による黄斑円孔症例の報告であった。当初,変性による中心窩組織の欠失と考えられていた本症は,その後の詳細な臨床的観察や自然経過観察例の積み重ねにより,その発生に硝子体牽引が関与することがわかってきた。黄斑円孔の病態の理解を急速に早めたのが,1988年に発表されたGassら1,2)による黄斑円孔の病態と進展に関する記載である。間もなくして,1991年にKellyとWendell3)が黄斑円孔の手術方法を発表し,黄斑円孔は治療可能な疾患となった。さらに光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)の応用は今まで細隙灯顕微鏡で観察が困難であった微細な硝子体皮質ラインや網膜内囊胞を描出できるようになり,黄斑円孔の病態の解明に大きく貢献した4)。近年のスペクトラルドメインOCT(spectral domain OCT:SD-OCT)による高解像度画像は,さらに詳細な中心窩構造変化の観察を可能にし,本症の発生病態がより鮮明になってきた。本稿では,現在わかっている最新の特発性黄斑円孔の発生病態,黄斑円孔の分類および疫学について概説する。

黄斑円孔の術前術後評価

著者: 馬場隆之

ページ範囲:P.24 - P.28

はじめに

 特発性黄斑円孔は,主として50歳代以降に生じ,歪みと視力低下を主訴とする疾患である。硝子体手術により,黄斑円孔は治療可能な疾患となった。現代においては,小切開硝子体手術,内境界膜(internal limiting membrane:ILM)剝離などの技術進歩や疾患に対する理解の深まりにより,高い精度で円孔閉鎖が得られるようになっている。また,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)の普及に伴い,小型の黄斑円孔も発見が容易になり,黄斑円孔の潜在的な患者数は変わっていないと思われるが,日常診療で遭遇する機会は多くなっている印象がある。初期の小型の黄斑円孔の検出,そして硝子体手術後の機能的,形態的評価は黄斑円孔の診療上,非常に重要である。本稿では,黄斑円孔の術前および術後評価について形態と機能のつながりを中心に解説したい。

内境界膜可視化の手法

著者: 東邦洋 ,   上田高志

ページ範囲:P.29 - P.36

はじめに

 黄斑円孔に対する網膜硝子体手術において,網膜内境界膜(internal limiting membrane:ILM)剝離は術後の円孔閉鎖率向上に寄与する1)。ILMはミュラー細胞の基底膜で,平均2.5μmほどのきわめて薄い透明な膜組織であり,無染色の状況では正確で確実なILM剝離は困難である。このため,種々の染色補助剤によってILMを可視化する手法が登場し,効果が検証されている。歴史的には,Kadonosonoら2)がインドシアニングリーン(indocyanine green:ICG)を用いてILMを染色し,ILM剝離における有用性を報告して以降,ILM剝離の標準的手法として確立された。また,Enaidaら3)が2006年に新しい染色補助剤としてブリリアントブルーG(brilliant blue G:BBG)を報告し,近年ではBBGが用いられることも増えてきた。これら以外にもトリパンブルー,ブロモフェノールブルー,トリアムシノロンなどが染色補助剤として報告されている。本稿では,種々の染色補助剤における臨床,基礎実験を含めた現在の知見について解説したい。

黄斑円孔手術におけるinverted ILM flap techniqueの評価

著者: 加瀬諭

ページ範囲:P.38 - P.43

はじめに

 黄斑円孔は比較的中年に発生する代表的な眼底疾患であり,その治療に硝子体手術を要する。手術としては,可及的硝子体切除,人工的後部硝子体剝離(posterior vitreous detachment:PVD)作製,内境界膜(internal limiting membrane:ILM)剝離,ガスあるいは空気によるタンポナーデが広く施行されるようになり,術後の初回円孔閉鎖率が良好な時代になった。しかしながら,最小円孔径が400μm以上の大型の黄斑円孔や陳旧性黄斑円孔ではこれらの手術治療を行っても,円孔閉鎖が得られず難治性となることが経験される。

 図1に筆者が経験した黄斑円孔非閉鎖の70歳代男性の1例を示す。初診時,stage 3の黄斑円孔がみられ(図1a,b),硝子体手術を検討したものの肝臓癌の治験中で手術を延期した。初診1年後に治療可能となったが,依然stage 3で明らかな円孔径の拡大はなかった(図1c,d)。型通りILM剝離併用の硝子体手術,ガスタンポナーデを行ったが,初回円孔閉鎖はできなかった(図1e,f)。このような症例は,陳旧性黄斑円孔に相当すると考えられ,網膜の伸展は不良化し,難治性となる。

 2010年に報告されたinverted ILM flap technique(法)は画期的な手法であり,このような大型の黄斑円孔に対して初回円孔閉鎖率のさらなる向上に貢献する術式である1)。この術式は,かつての硝子体手術の際にアーケード内のILMを剝離除去する手法ではなく,円孔周囲のILMを全周性に残して翻転し,円孔上に被覆する術式である。大型の黄斑円孔に加えて,ぶどう膜炎2)や網膜静脈閉塞症に伴う二次性黄斑円孔,陳旧性黄斑円孔,さらには黄斑円孔網膜剝離に対しても,良好な初回円孔閉鎖率を得ることが可能になってきている。

 本稿では,誌面の関係上inverted ILM flap 法の評価として,従来のILM剝離との比較,術中および術後評価および本法の適応,課題について述べたい。

タンポナーデ物質の選択と術後体位

著者: 厚東隆志

ページ範囲:P.44 - P.49

はじめに

 特発性黄斑円孔(idiopathic macular hole:MH)は,1991年にKellyら1)が硝子体手術により治療することを報告して以来,「治療できる」疾患となった。本邦では内境界膜(internal limiting membrane:ILM)剝離を併用し,術後数日間の腹臥位とともにガスタンポナーデを行うという術式が標準術式である。一方で近年,術後の患者の身体的・精神的負担を軽減することを目的に,腹臥位の期間の短縮や,滞留期間の短いガスによるタンポナーデを行うなどの試みがなされている。

 本稿では,タンポナーデ物質の選択と術後の体位制限について概説するとともに,治療成績と負担軽減を両立できる適切なマネージメントについて考えてみたい。

黄斑円孔手術による視野障害

著者: 土屋俊輔 ,   東出朋巳

ページ範囲:P.50 - P.55

はじめに

 硝子体手術の急速な進歩によって手術がより低侵襲となり,より良好な術後視機能が得られるようになってきた。それに伴い,術前視機能が比較的良好な症例に対しても手術適応が拡大される傾向にある。しかし,硝子体手術にはさまざまな合併症があり,それによって視機能障害が生じる可能性がある。術後の視野障害に関して,黄斑円孔術後に視野障害が生じることは,1995年にMelbergらが初めて報告した1)。それ以後,複数のグループがさまざまな原因によると思われる術後視野障害を報告している。視野障害の原因として報告されてきた主なものとして,液空気置換,生体染色,そして内境界膜(internal limiting membrane:ILM)剝離が挙げられる。

連載 今月の話題

27G硝子体手術アップデート

著者: 井上真

ページ範囲:P.5 - P.11

 27G硝子体手術は2010年に発表されてから進歩し続けている。0.4mm径の器具の剛性についてはどうしても限界があるが,硝子体カッターが改良され,周辺器具のバリエーションが増加している。現在の27G手術を取り巻く環境について言及する。

熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第24回

術後の浅前房と高眼圧

著者: 木内良明 ,   植木麻理 ,   谷戸正樹

ページ範囲:P.57 - P.64

今月の症例

【患者】75歳,男性,両眼の開放隅角緑内障

【現病歴】2017年1月の視力は右眼(0.8),左眼(0.7)であった。点眼治療下で眼圧は右眼24〜27mmHg,左眼17〜22mmHgと変動し,視野障害が進行するために同月に左眼,翌月に右眼の線維柱帯切除術が行われた。左眼は強膜弁の縫合糸をすべて切糸して眼圧12mmHgで退院した。術後3週目に再診したところ,硝子体出血を指摘された。右眼はレーザー切糸を5本中2本行った。術後3日目の眼圧が22mmHgにもかかわらず,前房が浅くなり脈絡膜剝離が出現した。その後,右眼は低眼圧になり,経結膜的に強膜弁の縫合が追加された。左眼の硝子体出血と右眼の脈絡膜剝離が持続するため,2017年3月に広島大学病院眼科へ紹介され受診した。

臨床報告

外科的切除後に再発を繰り返した虹彩囊腫の1例

著者: 永岡卓 ,   産賀真 ,   橋本りゅう也 ,   前野貴俊

ページ範囲:P.71 - P.75

要約 目的:術後再発をきたした虹彩囊腫に対し,虹彩全幅切除を施行した症例の報告。

症例:14歳,男性。初診時左眼視力0.4p(1.5×cyl−4.50D 90°),左眼虹彩囊腫は角膜内皮に接触しており,高度の乱視を伴っていた。局所麻酔下で虹彩囊腫切除術を施行した。術後2日目に左眼圧47mmHgと高眼圧をきたした。術後2か月で虹彩囊腫の再発を認め,再度虹彩囊腫切除術を施行した。術後3日目には左眼圧31mmHgと高値を認めた。術後約2か月で虹彩囊腫の再々発がみられた。切除だけでは再発が懸念されたため,全身麻酔下で病変部虹彩の全幅切除を施行した。再々手術後2年が経過しているが,再発はない。

結論:虹彩囊腫に対する外科的切除を行う際にも,再発や高眼圧が起こりうる可能性を考慮し,治療にあたる必要性があると考える。

眼内レンズ2次挿入術後に生じた虹彩捕獲に対する眼内レンズと糸の接する長さを計算した予防手術

著者: 中村充利

ページ範囲:P.77 - P.81

要約 目的:眼内レンズ(IOL)2次挿入術後に生じる虹彩捕獲に対して新しい予防整復手術を考案した。

症例:58歳,男性。IOLの硝子体中への落下に対して,硝子体切除併用IOL毛様溝縫着術を施行した。術翌日に虹彩捕獲を認め,ピロカルピン点眼にて整復するも,すぐに再発し,瞳孔形成術を施行した。その後,レーザー虹彩切開術を施行したが,虹彩捕獲が持続していた。虹彩捕獲の整復目的でIOLと糸の接する長さを計算し,全周に糸の効果が及ぶ手術を行った。術後良好に推移し,虹彩捕獲は術後3年間生じていない。

結論:360°全周に糸の効果が及ぶ本手術は効果が高いと考える。

髄膜炎の再燃を複数回生じたVogt-小柳-原田病の1例

著者: 森潤也 ,   宮本寛知 ,   木下貴正 ,   清水美穂 ,   岩﨑将典 ,   柴田有紀子 ,   矢口裕章 ,   水戸泰紀 ,   田島康敬 ,   今泉寛子

ページ範囲:P.83 - P.89

要約 目的:主として髄膜炎の再燃を複数回生じた稀なVogt-小柳-原田病(VKH病)の1例の報告。

症例:16歳男性が近医で無菌性髄膜炎にて加療され,軽快した1か月後に両眼の充血と視力低下で当科を受診した。両眼の虹彩毛様体炎,視神経乳頭の発赤・腫脹を認めた。各種眼科画像検査と髄液検査結果から不全型VKH病と診断した。ステロイド大量漸減療法にてぶどう膜炎は軽快したものの,漸減中に二度の髄膜炎を主体とした再燃を生じ,ステロイドパルス療法にて軽快した。以後18か月後まで,ぶどう膜炎,髄膜炎ともに再燃なく経過している。

結論:本症例ではステロイドの減量が速かったことに加え,ぶどう膜炎よりも髄膜炎のほうが消炎により多くのステロイドを要したため,髄膜炎を主体とした再燃を生じたものと推察した。

広範な感染性角膜潰瘍に対して通常の深層層状角膜移植(DALK)に三日月状のDALKを併施した1例

著者: 小林由佳 ,   山田直之 ,   岩本菜奈子 ,   守田裕希子 ,   園田康平 ,   木村和博

ページ範囲:P.91 - P.99

要約 目的:広範な感染性角膜潰瘍に対し,通常のデザインと異なる深層層状角膜移植(DALK)を行った1例の報告。

症例:40歳男性が右眼の角膜潰瘍で紹介受診した。25日前に右眼痛が生じ,角膜潰瘍と診断された。14日後に他医に紹介され,病状はさらに悪化した。眼痛が発症するころからソフトコンタクトレンズを装用していた。月に2週間,海外に住んでいた。

所見と経過:矯正視力は右0.4,左1.5で,右眼角膜の鼻側上方に浸潤を伴う角膜潰瘍があり,前房に虹彩炎の所見があった。薬物加療を開始したが,角膜潰瘍に下掘れが生じて悪化し,発症66日目に輪部に接する結膜を切除するブラウン手術を行った。さらに悪化したので,88日目に通常のDALKに三日月状のDALKを併用する手術とブラウン手術を行った。術後6日目に角膜上皮の再生が始まり,6週目に上皮欠損は消失した。2年後の現在,矯正視力は0.9で,移植片の透明性は維持されている。

結論:薬物治療に抵抗する広範な感染性角膜潰瘍に,DALKの変法が奏効した。病巣の完全除去が可能で,術後合併症も少ない手技として評価される。

過去10年間の眼球破裂症例の視力予後

著者: 鈴木幸彦 ,   鈴木香 ,   安達功武 ,   工藤孝志 ,   目時友美 ,   中澤満

ページ範囲:P.101 - P.107

要約 目的:眼球破裂症例の手術予後を報告する。

対象:過去10年間の眼球破裂28例29眼を,創の位置から角膜群(7眼),強角膜群(15眼),強膜群(7眼)に分類した。

方法:初回手術は創縫合のうえ,術者の判断で前房洗浄や硝子体手術を行う場合も,初回から眼球内容除去術を行う場合もあった。

結果:術後矯正視力が0.1以上/0.01〜0.09/指数弁以下はそれぞれ角膜群で14%/43%/43%,強角膜群で33%/20%/47%,強膜群で0%/0%/100%であり,いずれも不良であった。

結論:現在も眼球破裂症例の視力予後は不良であり,特に創が強膜後方に及ぶ場合は視力維持が困難で,今後の課題と考えられた。

スタージ・ウェーバー症候群に伴う緑内障に対する線維柱帯切開術の成績

著者: 春田雅俊 ,   竹下弘伸 ,   山川良治

ページ範囲:P.109 - P.114

要約 目的:スタージ・ウェーバー症候群に伴う緑内障に対する線維柱帯切開術の成績の報告。

対象と方法:過去14年間にスタージ・ウェーバー症候群に伴う緑内障に線維柱帯切開術を行った5例5眼を対象とした。2例にはシヌソトミーを併用した。全例が男性で,年齢はそれぞれ3か月,1歳,6歳,16歳,29歳であった。術後13〜161か月,平均76か月の経過を追った。

結果:術前の眼圧は21〜39mmHg,平均26.6mmHgであり,最終受診時の眼圧は13〜19mmHg,平均16.6mmHgであった。術後の経過観察中に,線維柱帯切開術,シヌソトミーと線維柱帯切開術,エクスプレスを用いた濾過手術を各1例に行った。

結論:乳幼児期に緑内障が発症し,隅角の発育異常が主な原因と推定される場合には線維柱帯切開術が奏効した。小児期から成人期にかけて緑内障が発症し,上強膜静脈圧の上昇が関与している症例にも,まず重篤な合併症の少ない線維柱帯切開術が推奨される。

臨床ノート

亜脱臼した囊内固定眼内レンズを眼内でのハプティクス固定で整復した1例

著者: 高橋京一

ページ範囲:P.116 - P.119

緒言

 白内障手術患者の高齢化に伴い,偽落屑症候群やチン小帯の弱い症例に遭遇する機会が増加し,挿入眼内レンズ(intraocular lens:IOL)の偏位が起こる危険性が増大傾向にある。偏位したIOLの整復には,いったんIOLを摘出し,その後二次挿入という形で縫着術や強膜内固定を行うという方法が一般的で,IOL摘出の工夫が各種報告されている1,2)。しかしながら,IOL摘出の際のトラブルや乱視の増加のリスクは少なからずあり,特に術前視力の良い症例ではIOL摘出は決断しにくい。今回筆者が行った眼内でのハプティクス固定術は,IOL摘出がないため,合併症や乱視増加のリスクを回避できる1つの手段であり,有益な方法と考えられる。

今月の表紙

先天白内障

著者: 佐藤信之介 ,   下村嘉一

ページ範囲:P.12 - P.12

 症例は21歳,女性。幼少時から視力低下を訴え,近医より当院へ紹介され受診となった。初診時の視力は右0.3(0.4×−0.75D()cyl−2.50D 165°),左0.2(0.8×−1.25D()cyl−1.50D 40°)。両眼の水晶体後囊下に星形の混濁がみられ,水晶体全体に散在する点状混濁も認めた。自覚症状として,授業で顕微鏡をのぞいたときに,星形の影が見えたことがあった。混濁の範囲は,右眼のほうが広くみられた。手術を希望され,初診の翌月に両眼にPEA+IOLを施行。手術後の視力は右(1.2),左(1.2)と経過良好である。

 撮影はTOPCON社製スリットランプSL-D7にNikon社製デジタルカメラD300を取り付けた装置で行った。拡散照明法では,混濁の範囲を把握できるように均一に照明を当て,散瞳後に撮影した。スリット撮影では,混濁の形状がわかりやすいようにスリットの幅を約2mmに広げ,撮影光量を落とした。また,混濁の星形を強調するために背景を消し,倍率を25倍とした。スリット光の角度は,角膜の反射が混濁に重ならないようにやや大きくつけた。

海外留学 不安とFUN・第25回

サンディエゴでの留学生活・2

著者: 赤木忠道

ページ範囲:P.66 - P.67

FUN

●遊び

 サンディエゴには車で20〜30分で行ける距離に世界最大級のシーワールドや動物園・サファリ,LEGOLAND®,水族館などなど,子どもたちと楽しめる施設がたくさんあります。いくつかの施設は,来てすぐに年間パスを購入して何度も足を運びました。日本と違って人気スポットも比較的空いているのでストレスなく遊びに行けます。日本がいかに人口密度の高い国なのかを改めて思い知らされます。

 また,ビーチに行くだけでも十分に楽しめます。サンディエゴの海岸線には綺麗なビーチがずっと続いており,Mission beach,Coronado beachなどは圧巻の風景です。良好なサーフスポットとしても有名です。また,記録的な巨大ブラックバスが過去に釣れていることで有名な湖がサンディエゴにはいくつもあります。魚釣り好きにはたまりません。

Book Review

ENGアトラス—めまい・平衡機能障害診断のために

著者: 加我君孝

ページ範囲:P.56 - P.56

 著者の小松崎篤先生(医科歯科大名誉教授)は,半世紀にわたりめまい・平衡障害の基礎と臨床に取り組んでこられたわが国の神経耳科学の大家であり,小生が研修医の頃からの師でもある。小生は小松崎先生よりかねてから本書を構想していることをうかがっていたが,A4判448ページの大冊の本書を手にして感慨深いものがある。

 脳波は100年,ENGは50年の歴史がある。脳波によりてんかんの大脳皮質の電気現象がわかるようになった。ENGは眼振の記録や異常眼球運動の記録により半規管,脳幹,小脳,大脳の病巣を眼球運動の電気現象として記録することで診断に大きな貢献をしてきた。

日常診療に潜むクスリのリスク—臨床医のための薬物有害反応の知識

著者: 山中克郎

ページ範囲:P.90 - P.90

 上田剛士先生(洛和会丸田町病院救急・総合診療科)は数多くの文献から重要なメッセージを抽出し,わかりやすい表やグラフにして説明してくれる。評者と同様,『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』(医学書院,2014年)を座右の参考書としている臨床医は多いであろう。これは臨床上の問題点に遭遇したとき,そのエビデンスを調べる際に非常に重宝している。

 『日常診療に潜むクスリのリスク』は薬の副作用に関する本である。高齢者はたくさんの薬を飲んでいる。私たちは気が付いていないのだが,薬の副作用により患者を苦しめていることは多い。「100人の患者を診療すれば10人に薬物有害反応が出現する」(序より),「高齢者の入院の1/6は薬物副作用によるもので,75歳以上では入院の1/3に及ぶ」(p.5より)という事実は決して看過すべからざることである。「Beers基準」や「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」は存在するが,高齢者への適切な処方への応用は不十分だ。

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欧文目次

ページ範囲:P.3 - P.3

ことば・ことば・ことば 病気

ページ範囲:P.70 - P.70

 英語を習い始めてから何十年にもなり,難しい言葉はかなり知っているつもりでも,簡単な単語は意外と知らないものです。身近な例としては,魚ならメダカとフナ,花だと牡丹とシャクヤクがそうでしょうか。

 ついでですが,英語でものを書くとき,はじめて知った単語はなるべく避けるのがよろしいようです。諺にある「立てば芍薬,坐れば牡丹」を英語で言うとき,She is a radiant beautyにするか,Every movement adds to her charmsのほうが,ずっと気分が出ています。

べらどんな ppm

著者:

ページ範囲:P.100 - P.100

 効く薬がずいぶん増えてきた。いまでは珍しくともなんともないが,緑内障に対するダイアモックスの効果が1954年に発見されたときは,世界中のすべての眼科医が驚いたものである。

 発見者はアメリカのSaint LouisセントルイスのBernard Beckerである。通院している緑内障患者の眼圧コントロールが急に良くなった。訊いてみると,腎障害があるのでダイアモックスを服用しているという。

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.120 - P.121

希望掲載欄

ページ範囲:P.124 - P.124

アンケート用紙

ページ範囲:P.126 - P.126

次号予告

ページ範囲:P.127 - P.127

あとがき

著者: 下村嘉一

ページ範囲:P.128 - P.128

 このあとがきを書いているのは11月なので,今年もあと残すところ,1か月半です。コートやマフラーが必要となる季節になりました。私が住む堺周辺は現在,紅葉が素晴らしく,歴史的遺産のみならず,近隣には公共施設も多く揃い,つくづく良いところに引っ越した(19年になる)と思います。私事ですが,2018年の3月に近大を退任致します。それに伴い,「臨床眼科」の編集委員も退任し,4月からは編集顧問へ就任致します。

 退任を記念して,ある雑誌に私の専門中の専門であるヘルペスの総説を書きました。医学部を卒業して約40年間ヘルペスとかかわってきたのですが,それを機に最新のヘルペス研究をまとめました。当然のことですが,その研究の発展には目を見張るばかりです。私が研修医になったときは角膜ヘルペスの患者さんは大勢いましたが,アシクロビルが登場して徐々にヘルペスの患者さんは減りました。ステロイドを控えめに使うようになったこともその原因ではないかと考えております。そういえば,アシクロビルを開発したエリオン先生(1988年ノーベル生理学・医学賞受賞)にお会いして握手したのも良い思い出です。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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