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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科72巻10号

2018年10月発行

文献概要

特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著

身体障害者認定基準案によれば2級となる可能性のある5級の糖尿病網膜症症例

著者: 加茂純子1 原田亮2

所属機関: 1甲府共立病院眼科 2甲府共立診療所眼科

ページ範囲:P.1405 - P.1411

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要約 目的:国際的基準であるFunctional Vision Score(FVS)によると,わが国ではロービジョン者が身体障害者手帳を取得できず,盲である人でも5級にしか認定されない。視覚障害の認定基準に関する検討会の2016年8月の認定基準改訂案では,求心性視野障害の偏心に対する対応の項目で「Ⅰ/4eによるイソプタの一部が10°を超えていても,15°以内でありかつ残余面積が中心10°視野と同等かそれ以下であれば,10°以内として判定し,4,3,2級判定へ進めるようにした。」とあった。この案では5級であったものが,今回の改訂案(2017年7月)でⅠ/4eの8主経線の合計が80°以内であれば2〜4級判定に進める案が示された。

症例:73歳,男性.糖尿病歴20年。10年前に他医で増殖期糖尿病網膜症と黄斑症の治療を受けている。今回他科入院中に眼科に紹介された。補助具を用いても読書不能で音声から情報を得るのみであり,障害物に気づかず,転倒することもしばしばであった。視力は右(0.3),左 光覚弁。網膜は黄斑,周辺とも菲薄化し,視野は右眼Ⅰ/4eが耳17°,耳上8°,上7°,鼻上7°,鼻5°,鼻下5°,下7°,耳下13°と8主経線合わせて69°で,80°以内であった。左眼は測定不能であった。現行の規定および2016年の改訂案では5級であったが,2017年の改訂案によると,Ⅰ/2eの加重平均が1.5°となり,2級と認定されることが予測された。一方,Functional Field Scoreは50,Functional Acuity Scoreは59,FVSは30となり,AMA分類では3b極度視覚喪失(盲)と同様の結果となった。

結論:今回の改訂案により,実際の視野障害に見合った等級判定がされる可能性が示された。

参考文献

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2)加茂純子・原田 亮・仲泊 聡・他:Functional Field Score(FFS)とFunctional Vision Score(FVS)から見た同名半盲と輪状暗点のある緑内障.日本ロービジョン学会誌12:69-74,2012
3)日本眼科学会視覚障害者との共生委員会・日本眼科医会身体障害者認定基準に関する委員会との合同委員会:視覚障害認定基準の改定に関する取りまとめ報告書(平成28年8月26日)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000149289.pdf)
4)視覚障害の認定基準に関する検討会:視覚障害認定基準(視野関連抜粋)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000172940.pdf)
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9)加茂純子・原田 亮・仲泊 聡・他:Functional Field Score(FFS)とFunctional Vision Score(FVS)から見た同名半盲と輪状暗点のある緑内障.日本ロービジョン学会誌12:69-74,2012
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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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