臨床眼科72巻11号

2018年10月発行

増刊号 7年前の常識は現在の非常識！—眼科診療の最新標準 3．緑内障 Special Lecture

緑内障のロービジョンケア

著者： 佐藤佑二¹ 奈良井章人² 木内良明¹

所属機関： ¹広島大学大学院医歯薬保健学研究院統合健康科学部門視覚病態学 ²奈良井眼科

ページ範囲：P.192 - P.194

はじめに

　当院では「見えにくくて困っている」「このまま見えなくなるのか，将来が不安でしょうがない」という患者の声から眼科として対応の必要性を感じ，2009年9月にロービジョン外来が開設された。開設から2017年10月までに95名の方が受診し，年々受診希望者は増えている。

　緑内障は視覚障害の原因疾患の1位であり，日本緑内障学会から報告された多治見スタディでは40歳以上の約5％が緑内障である。また，高齢化に伴い，緑内障の発症リスクは高くなる^1）ため，緑内障患者の絶対数は増加傾向にある。一方，緑内障は自覚症状に乏しい疾患であり，緑内障であると気づいていない人も多い。そして自覚のないまま徐々に症状が悪化して最終的にロービジョン外来を受診される方もいる。

　当院のロービジョン外来受診者の原因疾患は緑内障が最も多く（図1），年々緑内障のロービジョンケアの需要は高まっている。

参考文献

1）川崎　良：失明原因第一の緑内障アップデート 緑内障の疫学．脳21 17 4：403-410，2014

2）仲泊　聡：ロービジョンケアとは？．山本修一（編）：専門医のための眼科診療クオリファイ26ロービジョンケアの実際．2-8，中山書店，東京，2015

3）中野泰志：相羽大輔・富田　彩：タブレット端末で利用できるデジタル教科書は拡大教科書の代わりになり得るか？　日本ロービジョン学会誌15：70-78，2015

4）山村麻里子・横山貴子・外園千恵・他：ロービジョン者がタブレット型PCを使用する際の留意点が示唆された2症例．日本ロービジョン学会誌15：S6-S9，2015

5）川瀬和秀：緑内障患者のケア．日本医事新報4811：37-41，2016

6）高橋　広：代表的な疾患とその対応B緑内障．高橋　広（編）：ロービジョンケアの実際 視覚障害者のQOL向上のために．250-253，医学書院，東京，2006

7）Lim NC, Fan CH, Yong MK et al：Assessment of depression, anxiety, and quality of life in singaporean patients with glaucoma. J Glaucoma 25：605-612, 2016

8）斉之平真弓・山下高明・坂本泰二・他：ロービジョン外来受診患者の不安傾向および抑うつ傾向の検討．日本ロービジョン学会誌15：S29，2015

9）斉之平真弓：ロービジョン患者さんへのかかわりかた．③心のケア．大長郁恵・西川雅子（編）：眼科ケア17，78-83，メディカ出版，大阪，2015