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特集 涙器涙道手術の最近の動向
眼表面(涙液層)再建治療—結膜へのアプローチ
著者: 横井則彦1
所属機関: 1京都府立医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.1524 - P.1529
文献購入ページに移動角膜上の涙液層は,開瞼を契機とする角膜表面への水分の塗り付けと開瞼後の油層の上方伸展に伴う液層の上方移動を経て完成する1)。しかし,この涙液層の形成過程は,角膜に隣接する球結膜に存在しうる隆起性病変の影響を大きく受ける。それは,球結膜の隆起性病変がその辺縁に異所性の涙液メニスカスを形成するためであり2),メニスカスの陰圧は涙液層の形成過程で液層の水分を菲薄化させて3),涙液層を破壊に導く。その原因となる主な結膜疾患として,瞼裂斑,結膜囊胞(なかでも,リンパ囊胞),結膜弛緩症があり,結膜弛緩症は高齢者に高頻度にみられるため4),あらゆる眼表面に非常によく合併している。涙液層の破壊への影響が大きい隆起性病変の場合は,点眼治療で涙液層の破壊に抵抗するには限界があり,隆起性病変に対する外科治療が必要となる。そして,隆起性病変が除去されて結膜が平坦化すれば異所性涙液メニスカスが消失するため,それによってもたらされていた涙液層の破壊の促進が回避され,涙液層破壊時間(tear film breakup time:BUT)の延長が得られるとともに上皮障害は軽減する。
そこで本稿では,これら3つの結膜病変について,涙液層の異常とその再建の観点から病態と治療を含めながらまとめてみたい。
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