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特集 涙器涙道手術の最近の動向
眼表面(涙液層)再建治療—眼形成によるアプローチ
著者: 渡辺彰英1
所属機関: 1京都府立医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.1530 - P.1536
文献購入ページに移動はじめに
眼表面(涙液層)に対する眼瞼の役割には,瞬目による涙液の分配・排出・ターンオーバーといった動的役割と,瞼縁の涙液メニスカスによる涙液の保持といった静的役割がある。眼瞼は,眼表面と適度な圧力をもって接触し,動的静的に絶妙なバランスで眼表面に分布する涙液量および涙液の質を保っている。したがって,眼瞼について考慮することなく流涙症を治療することはできないほど,流涙症と眼瞼には密接な関係があるといえる1)。
流涙症を引き起こす眼瞼疾患には,内反症や外反症,兎眼症など,眼瞼の形態異常や機能異常によって引き起こされる疾患と,一見流涙の原因となるような眼瞼異常はないにもかかわらず流涙症をきたす導涙機能不全(機能性流涙)に分けられる。前者の眼瞼疾患は,正確な診断と適切な手術によって改善することが多い。導涙機能不全による流涙症は難治であるが,下眼瞼弛緩や眼瞼下垂を伴っていれば,手術によって流涙症が改善する可能性がある。
本稿では,流涙症に対する眼形成的アプローチについて,流涙症を引き起こす眼瞼疾患の手術治療を中心に解説する。
眼表面(涙液層)に対する眼瞼の役割には,瞬目による涙液の分配・排出・ターンオーバーといった動的役割と,瞼縁の涙液メニスカスによる涙液の保持といった静的役割がある。眼瞼は,眼表面と適度な圧力をもって接触し,動的静的に絶妙なバランスで眼表面に分布する涙液量および涙液の質を保っている。したがって,眼瞼について考慮することなく流涙症を治療することはできないほど,流涙症と眼瞼には密接な関係があるといえる1)。
流涙症を引き起こす眼瞼疾患には,内反症や外反症,兎眼症など,眼瞼の形態異常や機能異常によって引き起こされる疾患と,一見流涙の原因となるような眼瞼異常はないにもかかわらず流涙症をきたす導涙機能不全(機能性流涙)に分けられる。前者の眼瞼疾患は,正確な診断と適切な手術によって改善することが多い。導涙機能不全による流涙症は難治であるが,下眼瞼弛緩や眼瞼下垂を伴っていれば,手術によって流涙症が改善する可能性がある。
本稿では,流涙症に対する眼形成的アプローチについて,流涙症を引き起こす眼瞼疾患の手術治療を中心に解説する。
参考文献
1)渡辺彰英:流涙症への眼瞼からのアプローチ.流涙症—完全制覇への道2014年バージョン.眼科手術27:523-528,2014
2)Anderson RL, Gordy DD:The tarsal strip procedure. Arch Ophthalmol 97:2192-2196, 1979
3)Watanabe A, Katori N, Selva D et al:Modified auricular cartilage sling for paralytic ectropion. J Plast Reconstr Aesthet Surg 68:902-906, 2015
4)Kakizaki H, Zako M, Kinoshita S et al:Posterior layer advancement of the lower eyelid retractor in involutional entropion repair. Ophthal Plast Reconstr Surg 23:292-295, 2007
5)Watanabe A, Shams PN, Katori N et al:Turn-over orbital septal flap and levator recession for upper-eyelid retraction secondary to thyroid eye disease. Eye 27:1174-1179, 2013
6)Yokoi N, Bron A, Tiffany J et al:Reflective meniscometry:a non-invasive method to measure tear meniscus curvature. Br J Ophthalmol 83:92-97, 1999
7)Watanabe A, Kakizaki H, Selva D et al:Short-term changes in tear volume after blepharoptosis repair. Cornea 33:14-17, 2014
8)Watanabe A, Selva D, Kakizaki H et al:Long-term tear volume changes after blepharoptosis surgery and blepharoplasty. Invest Ophthalmol Vis Sci 56:54-58, 2015
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