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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科72巻12号

2018年11月発行

文献概要

臨床報告

視神経周囲炎による視力低下をきたした甲状腺眼症の1例

著者: 大川隆一1 木村亜紀子1 岡本真奈1 三村治2 五味文1

所属機関: 1兵庫医科大学眼科学講座 2兵庫医科大学神経眼科治療学講座

ページ範囲:P.1573 - P.1578

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要約 目的:視神経周囲炎により視力が低下した甲状腺眼症の1例の報告。

症例:71歳女性に複視が突発した。その翌日から右眼視力が低下し,8日後に受診した。

所見と経過:矯正視力は右0.04,左1.2で,右眼に外転制限があり,内斜視であった。右眼のRAPDは陽性で,右限界フリッカ値は大きく低下していた。眼底に著変はなかった。血液の抗サイログロブリン抗体と抗ペルオキシダーゼ抗体が陽性であった。眼窩MRIで,造影T1強調画像の軸位断で右内直筋の筋腹に高度な肥大と炎症の所見があり,右視神経の周囲に造強効果がある視神経周囲炎があった。冠状断では,右内直筋と下直筋の炎症が眼窩先端部に及んでいた。メチルプレドニゾロンによるミニパルス療法で,3日後の1クール終了時に右矯正視力は0.9に回復し,2クール後には右眼の眼球運動制限も改善した。

結論:本症例での視神経周囲炎は,甲状腺眼症に伴う外眼筋の炎症が眼窩先端部から視神経周囲に波及したと推定される。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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