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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科72巻2号

2018年02月発行

雑誌目次

特集 眼窩疾患の最近の動向

企画にあたって

著者: 中澤満

ページ範囲:P.141 - P.141

 眼科一般診療において眼窩疾患の占める頻度はさほど高くはない。例えば,一般的な地方の中核施設と考えられる筆者の属する施設では全新患患者のうち眼窩・眼瞼疾患合計で2%程度である。しかし,眼窩に発生する疾患は炎症性疾患,腫瘍性疾患,感染性疾患など多岐にわたり,場合により視神経障害から重篤な視覚障害を起こすことや,高度の疼痛を生じることがあるため,的確な診断に基づく迅速かつ適切な治療が要求されることが多い。かつては診断的治療という大義名分でステロイド療法を続け,なかには効果がみられた例も確かに散見されたが,逆に進行させてしまうということも現実にはみられた。

 近年,日本眼腫瘍学会などが中心となって,IgG4関連眼疾患という病名で統一された眼窩炎症性疾患の病態の理解が進み,治療法に関してもステロイド療法によるコントロール方法が検討されつつある。また,各種の分子標的薬の開発と実用化により悪性リンパ腫への化学療法も効果が得られてきている。さらに,本企画では触れなかったが重粒子線療法などの新しい放射線治療手段の開発と実用化によって,眼窩悪性腫瘍の眼球温存療法なども選択肢に入れられるようになってきた。

眼窩画像診断のコツ

著者: 橋本雅人

ページ範囲:P.142 - P.150

はじめに

 眼窩疾患は,視神経炎に代表される視神経疾患,甲状腺眼症のような外眼筋疾患,あるいは眼付属器から発生する原発性眼窩部腫瘍,副鼻腔から眼窩内に浸潤する続発性腫瘍など多種多彩である。これらの疾患は病変が細隙灯検査や眼底検査などによって見つかるものではないため,診断にはCTやMRIによる眼窩部画像検査が不可欠である。ただし,撮影条件や撮影法が不適切であると知りたい情報が得られず,病変を見逃す可能性がある。その理由の1つに,眼窩部が骨に囲まれた円錐型の小さなスペースであり,その中に視神経や外眼筋,涙腺など重要な眼付属器が密集して存在していることが挙げられる。そのため,眼窩部の画像検査をする際には,それに適した撮影法,撮影条件を選択して行うことが望ましい。

斜視の病態の新知見と画像診断のコツ

著者: 河野玲華

ページ範囲:P.152 - P.158

はじめに

 斜視を対象とした画像解析により,筋円錐から眼球後部が脱臼した斜視,プリー(pulley)の加齢変化による斜視,眼筋支配神経の分枝に対応した外眼筋区分構造と分枝麻痺による斜視,臨床診断と麻痺筋の形態とが一致しない斜視が報告されている1)。本稿ではこれらの斜視のなかから,プリーの加齢変化による斜視(sagging eye syndrome),外眼筋の区分構造と分枝麻痺による斜視について概説し,それぞれの斜視に特徴的なMRI画像所見を供覧する。

眼窩炎症性疾患の病態と診断のコツ

著者: 平岡孝浩

ページ範囲:P.160 - P.168

はじめに

 眼窩の炎症性疾患はさまざまな原因により生じるが,その緊急性や重傷度からまずは眼窩蜂巣炎などの感染性疾患を鑑別する必要がある。また悪性リンパ腫のような腫瘍性疾患を鑑別することも重要である。最近注目されているIgG4関連眼疾患の頻度も比較的高く,その他では甲状腺眼症やWegener肉芽腫のような免疫介在性の疾患も念頭に置かなければならない。

 さらに特発性眼窩炎症は他の疾患を除外したうえで診断される原因不明の炎症であるが,日常診療において一定の頻度で遭遇する疾患であり,特徴的な臨床所見を有するため典型例については押さえておく必要がある。この類縁疾患として原因不明の炎症が外眼筋に限局して生じるものを特発性眼窩筋炎(外眼筋炎)といい,特発性眼窩炎症の亜型として考えられているが,この詳細については前項に譲る。その他,頻度は低いが,サルコイドーシス,抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)関連血管炎(Churg-Strauss症候群,顕微鏡的多発血管炎),真菌・寄生虫感染,眼窩内異物なども鑑別疾患として挙げられる。

 本稿では眼窩内に炎症をきたす代表的な疾患の特徴をまとめ,それらの診断のポイントについて解説する。

眼窩腫瘍の鑑別診断のコツ

著者: 笠井健一郎

ページ範囲:P.170 - P.181

はじめに

 眼科の日常診療で眼窩腫瘍に遭遇する頻度は高くない。しかし,眼窩腫瘍は他の眼疾患とは異なり,病変を直接観察できないため病変が増大してから気付かれることが多く,発見時はすでに進行している場合があり,治療開始が遅れることもある。われわれ眼科医には馴染みの少ない疾患であるため,ともすればいたずらに経過観察してしまう可能性も否定できないが,眼窩悪性腫瘍は生命予後に重大な影響を及ぼすことを忘れてはならない。

 したがって,眼窩腫瘍を疑った場合,早期に検査および診断,治療を行うことは眼科医の責務である。早期発見,早期治療を目指すには,何よりも日常診療で眼窩腫瘍を疑って診察する姿勢が大切である。

 本稿では,一般眼科医の先生方が眼窩腫瘍の鑑別診断を行ううえで,知っているだけで役に立つ情報を,専門医の立場からまとめてみた。診療の一助になれば幸いである。

甲状腺眼症の病態と診療のコツ

著者: 石川恵里 ,   高橋靖弘 ,   柿﨑裕彦

ページ範囲:P.182 - P.194

はじめに

 甲状腺眼症は,甲状腺自己抗体に関連した自己免疫性炎症性疾患で,眼窩部が標的となる病態である。甲状腺機能異常が発症の発端となるが,発症後は通常,甲状腺機能とは無関係に変動する1)。甲状腺眼症はその発症初期において,必ずしも特徴的な顔貌の変化や眼球運動障害を認めないため,「甲状腺眼症」の診断に至らず,単にドライアイや眼精疲労などとして経過観察され,治療が後手に回ることも少なくない1)

 甲状腺眼症の適切な治療介入のためには,その病態と臨床像について理解を深めておく必要がある。本稿では,甲状腺眼症の病態,甲状腺疾患との関係,診断・活動性の評価,および重症度に応じた治療について,最近の知見を加えて解説する。

眼窩疾患の内科的アプローチ

著者: 大湊絢 ,   尾山徳秀

ページ範囲:P.196 - P.207

はじめに

 眼窩に生じる疾患は良性・悪性腫瘍をはじめ,リンパ増殖性疾患,炎症性疾患,血管・リンパ管奇形など多岐にわたる。本稿ではこれら眼窩疾患のうち,内服や点滴,局所治療および放射線照射(非外科的アプローチ=内科的アプローチとする)が有効な疾患とその治療法について紹介する。例を挙げると炎症性疾患であれば副腎皮質ステロイドによる消炎が治療の主体となり,悪性腫瘍であれば多剤併用を含めた化学療法や分子標的薬による治療,放射線治療が選択肢となる。眼窩領域に生じる各疾患とそれに対する内科的アプローチ・治療法について述べる。

眼窩疾患の外科的アプローチ

著者: 田邉美香 ,   吉川洋

ページ範囲:P.208 - P.219

はじめに

 眼窩は前頭骨,頰骨,篩骨,上顎骨,涙骨,蝶形骨,口蓋骨の7つの骨より構成され(図1)1),幅40mm,高さ35mm,深さ45〜55mmと狭く奥行きのある空間の中に,眼球,外眼筋,涙腺,涙器などが存在し,その隙間を脂肪組織が埋めている構造である。実際の術野は狭く,目標部位に到達するためにどのようにアプローチするかという術前の計画,および解剖学的知識が非常に重要である。

 眼窩疾患の代表的な手術としては,眼窩腫瘍摘出術,眼窩骨折手術,甲状腺眼症に対する眼窩減圧術,眼窩膿瘍切開術,眼窩内異物除去術,涙囊鼻腔吻合術,眼窩内容除去術などが挙げられる。本稿では,そのなかで比較的頻度の高い眼窩腫瘍摘出術と眼窩膿瘍切開術について述べる。

連載 今月の話題

Best 1遺伝子関連網膜症

著者: 上野真治

ページ範囲:P.133 - P.140

 卵黄様黄斑ジストロフィ(ベスト病)は黄斑に卵の黄身様所見を示す常染色体優性の網膜疾患であり,その原因遺伝子はBest 1である。近年,Best 1遺伝子の変異による常染色体劣性ベストロフィノパチー(ARB)という新しい疾患概念が確立された。本稿ではこれらの疾患の臨床所見について概説する。

症例から学ぶ 白内障手術の実践レクチャー・術前編1【新連載】

白内障の種類と視機能

著者: 川守田拓志

ページ範囲:P.220 - P.224

Q 図1のような核白内障では,眼光学的にはどのような変化が起こり,視機能に影響を与えているのでしょうか? 白内障の種類と視機能について教えてください。

蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第23回

ベーチェット病

著者: 豊口光子

ページ範囲:P.226 - P.234

疾患の概要

 ベーチェット病は,ぶどう膜炎を主体とした眼炎症,口腔内アフタ性潰瘍,皮膚症状(結節性紅斑,毛囊炎様皮疹など),外陰部潰瘍の4つを主症状とした難病であり,厚生労働省の認定する特定疾患である。2002年以前の統計では,ぶどう膜炎の原因疾患としての1位の疾患であったが,2002年のぶどう膜炎初診患者の全国調査では第3位(6.2%)となり,平均発症年齢の上昇,症状の軽症化などの傾向が示されている1)。発症年齢は10代後半〜20代前半と若年で発症し,ぶどう膜炎は男性が多く女性の約2倍の発症率である。特に難治性ぶどう膜炎は若年男性に多くみられる。

 発作抑制治療として,コルヒチン,シクロスポリン(免疫抑制薬)に次いでインフリキシマブ(レミケード®),アダリムマブ(ヒュミラ®)などの抗腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)α抗体製剤が承認され高い効果を上げており治療は確立されてきている。しかし,ベーチェット病の診断がつかなければこれらの治療を導入することはできない。ベーチェット病は症候群であるため,ぶどう膜炎の特徴を評価することが重要となってくる。

眼科図譜

Nab-パクリタキセルにより発生したと考えられる網膜内顆粒層の微小シスト様変化

著者: 高橋京一

ページ範囲:P.272 - P.276

緒言

 乳癌の抗癌薬治療の1つとしてパクリタキセル(タキソール®)があり,その副作用軽減のため人血清アルブミンにパクリタキセルを結合させたnab-パクリタキセル(nab-paclitaxel:nab-PTX)(アブラキサン®)が開発され,現在では広く臨床に使われている。nab-PTXの眼科領域での副作用としては,血管透過性亢進を伴わない囊胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema:CME)の報告が散見されるが1,2),今回nab-PTXにより発生したと思われる網膜内顆粒層に局在する微小シストの症例を経験したので報告する。

臨床報告

スプレーガンによる眼窩内気腫の1例

著者: 中谷雄介

ページ範囲:P.239 - P.244

要約 目的:スプレーガンは圧縮空気を噴射する携帯型の装置で,動力源にエアコンプレッサーを用い,トリガーの操作により空気を噴射して,塵やゴミ,水滴などの付着物を吹き飛ばすものである。今回,スプレーガンによる眼窩内気腫を経験したので報告する。

症例:60歳,男性。仕事中,作業着の上からスプレーガンで埃をとるために噴射していたところ,誤って右眼球の中央から耳側にかけて空気をあてた。その直後,右眼瞼,顔面が腫れたため当院を受診した。

所見と経過:右眼球結膜下の多量の気泡,耳側結膜の裂傷を認め,右上眼瞼,下眼瞼,側頭部,頰部にかけて気腫を認めた。眼瞼,頰部などを触れると捻髪音を認めた。CTで眼窩内側壁骨折を認めた。受傷翌日に結膜裂傷を縫合し,受傷3日目には合併症なく気腫はほぼ消失した。

結論:スプレーガンによる眼窩内気腫の報告では予後はおおむね良好と報告されており,本症例も同様であった。受傷直後は眼瞼が開きにくく,明確に空気迷入口である結膜裂傷を確認できた症例は少ない。圧縮空気使用者と医療従事者はスプレーガンによる眼合併症が起こりうることを認識する必要がある。

眼瞼下垂術後における角膜形状,自覚および他覚視機能の変化

著者: 鄭暁東 ,   五藤智子 ,   鎌尾知之 ,   白石敦 ,   片上匡代 ,   中岡弓

ページ範囲:P.245 - P.251

要約 目的:退行性眼瞼下垂症に対して行った眼瞼挙筋短縮術後の角膜の形状と,自覚的他覚的視機能の変化の報告。

対象と方法:過去2年間に2施設で眼瞼挙筋短縮術を行った退行性眼瞼下垂症45例90眼を対象とした。平均年齢は73.8±6.7歳である。裸眼視力,角膜乱視,全眼球高次収差,コマ収差,球面収差を測定し,術前と術後1か月に眼精疲労についてアンケートを行った。コントラスト感度を波面収差から解析グラフ(MTF)として算出し,area ratioを評価した。

結果:角膜乱視の平均は,術前1.56±0.52D,術後1.29±0.41Dで,有意に減少した(p=0.013)。明所視の全高次収差とコマ収差,薄暮視のコマ収差は,いずれも有意に減少した。MTFのarea ratioの平均値は,術前14.8±4.2%,術後18.6±4.5%で,有意に増加した(p=0.019)。アンケートによる視覚的評価尺度(VAS)では,「肩がこる」「いらいらする」「焦点が合いづらい」などの項目が有意に改善した(いずれもp<0.05)。

結論:高年者に行った眼瞼下垂術後の自覚的および他覚的視機能改善は,角膜形状の変化によると解釈される。これには高次収差とコントラスト感度の改善が寄与している可能性がある。

左視力低下を主訴に眼科初診で発見されたテルソン症候群の1例

著者: 赤羽梢 ,   西塚弘一 ,   桐井枝里子 ,   武田祐介 ,   山田裕樹 ,   小久保安昭 ,   嘉山孝正 ,   山下英俊

ページ範囲:P.253 - P.257

要約 目的:左視力低下を主訴に眼科初診で発見されたテルソン症候群の1例の報告。

症例:46歳,男性。突然の左視力低下を主訴に近医眼科を経て当科を初診した。初診時視力は右(1.2),左(0.3),右眼に斑状の網膜出血,左眼に網膜出血,内境界膜下出血,少量の硝子体出血を認めた。頭部単純CTでくも膜下出血を認め,テルソン症候群と診断した。脳神経外科にて脳動脈瘤クリッピング術を施行された。両網膜出血および左硝子体出血は自然消退し,術後約2か月時には右1.2,左1.0と著明な視力改善を認めた。

結論:神経学的症状に乏しくとも,原因不明の網膜出血および硝子体出血を認めた際にはテルソン症候群の可能性も念頭に置くべきである。

コンタクトレンズ処方における眼底検査の意義

著者: 伊佐敷靖

ページ範囲:P.259 - P.264

要約 目的:コンタクトレンズを処方する際に実施する眼底検査の意義の検討。

対象と方法:2015年4月から2017年3月までの2年間にコンタクトレンズ処方を希望して来院した16,452名を対象とした。男性5,130例,女性11,322例で,年齢は9〜84歳,平均36歳であった。全員に眼底検査を含む眼科的検査を行い,眼底疾患が初めて発見された39例(0.23%)を診療録の記述に基づいて検索した。

結果:39例中,網膜疾患は22例で,黄斑上膜7例,網膜色素変性などの遺伝性眼底疾患4例,黄斑変性3例,網膜裂孔2例,網膜静脈分枝閉塞2例,裂孔原性網膜剝離1例,黄斑円孔1例,高血圧網膜症1例などであった。緑内障は9例にあり,全例が開放隅角緑内障であった。視神経疾患は8例で,緑内障以外の視神経萎縮が5例にあった。

結論:コンタクトレンズを処方する際の眼底検査を含む眼科的検査は,眼底疾患のスクリーニングとして有意義である。

眼瞼と結膜下に発生したカポジ肉腫の1例

著者: 松山育夫 ,   三輪加耶子 ,   畔満喜 ,   保坂直樹 ,   松岡雅人 ,   西村哲哉 ,   髙橋寛二

ページ範囲:P.265 - P.271

要約 目的:AIDS患者の眼瞼と球結膜下に生じたカポジ肉腫の報告。

症例:49歳の男性が3か月前に右眼充血を自覚して近医を受診した。流行性結膜炎と診断され,点眼加療を受けたが改善せず,当科を紹介され受診した。

所見と経過:右眼に強い結膜下出血と充血があり,瞼結膜と球結膜下に無痛性の硬い隆起があった。ベタメタゾンの点眼は奏効しなかった。生検の術前採血でHIV-1抗体が陽性であった。右眼の瞼結膜下の腫瘍を生検し,病理検査でCD31,CD34,D2-40,HHV-8が陽性で,カポジ肉腫と診断した。

結論:結膜炎としての投薬に反応しない無痛性の結膜下に隆起する病変では,カポジ肉腫である可能性がある。

今月の表紙

網膜有髄神経線維

著者: 長谷川裕香 ,   野崎真世 ,   坂本泰二

ページ範囲:P.132 - P.132

 症例は4歳,女児。3歳時健診で左眼の視力低下を指摘され前医を初診した。左眼に網膜有髄神経線維があり,視力不良のため精査加療目的にて当院を初診した。低年齢のため眼底の観察が困難であったが,視神経乳頭周囲から網膜血管上にかけて広範囲な網膜有髄神経線維がみられた。視力は右1.2,左0.09(0.5×−2.75D()cyl−0.50D 50°),シクロペントラート塩酸塩(サイプレジン®)点眼後の散瞳下屈折値は右+1.00D,左−2.50Dと不同視があり,光干渉式眼軸長測定装置(IOL Master®,Carl Zeiss Meditec社)では,右22.43mm,左24.42mmと眼軸長に左右差があった。斜視はなく,両眼視機能は良好であった。眼鏡装用と健眼遮蔽を継続し,初診から4年後の現在,健眼遮蔽を中止後も左眼矯正視力は1.0を得られている。

 眼底写真はKOWA-VX10で撮影した。網膜有髄神経線維は白色の病変であり,眼底写真撮影時に病変部が白とびしやすい。そのためフラッシュ光量を調節し,病変部と正常部のコントラストのバランスを考慮ながら明瞭な画像が得られるよう注意した。また,小児であり固視が動きやすいため,声かけおよび固視灯にて誘導し,短時間で撮影を行った。

海外留学 不安とFUN・第26回

ボストン研究留学記・1

著者: 上田高志

ページ範囲:P.236 - P.237

留学のきっかけ

 私は現在マサチューセッツ州ボストンにあるMassachusetts Eye and Ear Infirmary(MEEI)のAngiogenesis Laboratoryに研究留学させていただいております。

 私はもともと日本での生活が大変気に入っており,留学の希望は強くはありませんでした。しかし,周囲の後押しや年齢的にも今後チャンスが限られるのではないかと思い,留学を決断しました。留学先については,私の場合はいくつかのラボにメールで履歴書と推薦状をお送りして受け入れの可否を伺ったところ,運よくハーバード大学の眼科で網膜の研究室に採用していただけることになりました。

Book Review

神経眼科学を学ぶ人のために 第2版

著者: 後藤浩

ページ範囲:P.225 - P.225

 わが国の神経眼科学の第一人者である三村 治 教授の単独執筆による『神経眼科学を学ぶ人のために 第2版』を拝読させていただきました。実は神経眼科関連の本は脅迫観念もあってか,新刊が出版されるたびに中身を吟味することもなく購入する癖があります。これは取りも直さず,神経眼科学が苦手ゆえのせめてもの償い,あるいは抵抗の現れでしょう。本書は,そういった神経眼科を学ぶ気持ちは持ち合わせている,少なくとも学ばないといけないと思っている眼科医や視能訓練士にはうってつけの書籍です。

 まず,第1章の「解剖と生理」は必読のパーツです。ここを読破しただけでも神経眼科学のスタートラインに立てた気分になれます。しかも一般に敬遠されがちなこの解剖と生理に関する解説は,たった18ページに凝縮してくれています! でもやはり,この18ページを理解するのが辛いのも事実です。各論では美しい写真やわかりやすい図がふんだんに使用され,さらに解説は箇条書きを基本としているので,神経眼科学を苦手にしている者には大変ありがたい,読みやすい構成となっています。さらには三村先生が「ココだけは押さえておいてほしい!」と思われたところは文字が強調体になっているので,試験でいうところの“ヤマ”を親切に教えていただいているようなものです。随所に散りばめられた“Close Up”コーナーでは,神経眼科学に関するトレンドのみならず,目から鱗の落ちるようなコメントや情報が満載です。例えば,視神経の走行の特徴とされるWilbrand knee(Wilbrandの膝)なるものは,もしかしたら存在しないかもしれない,などの情報は大変興味深く読ませていただきました。

ENGアトラス—めまい・平衡機能障害診断のために

著者: 山本昌彦

ページ範囲:P.252 - P.252

 この度,医学書院から『ENGアトラス』が出版された。著者は小松崎篤先生(医科歯科大名誉教授)である。

 小松崎先生は,わが国のめまい・平衡障害疾患を牽引してきた先生で,この世界では知らない人はいない。先生は,私の師匠であり恩師である。既に大学を退職されてから20年近くになった今,なぜENG(electronystagmography)なのだろうか。また,このような400ページを優に超える著書のなかに芸術的ともいえる700余枚のENG記録を収録して出版されるエネルギーに,弟子の私は唖然となり,内容を見て二度三度と感激している。

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欧文目次

ページ範囲:P.131 - P.131

ことば・ことば・ことば えとせとら

ページ範囲:P.238 - P.238

 ラテン語が好きかどうかは,個人が各自決めることです。医師国家試験にも外国語は出ません。ところが,それと知らずにラテン語を使ったり,その世話になっていることがあります。

 英語の文章では,etcという略語がよく使われます。エトセトラと発音し,et ceteraを縮めたもので,英語のand othersに相当します。

べらどんな 微量物質

著者:

ページ範囲:P.258 - P.258

 熱力学の何番目かの法則にあるらしいが,ものの温度は下がることがあっても上昇はしない。また,溶媒に溶かした物質の濃度も,外部からエネルギーが入らないと濃くはならない。

 金属でも有機化合物でも,溶液として自然環境に置かれると,しだいに薄められると常識では考えられる。ところがそうではなく,逆に濃縮する場合のあることが水俣病で示された。

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.278 - P.279

希望掲載欄

ページ範囲:P.282 - P.282

アンケート用紙

ページ範囲:P.284 - P.284

次号予告

ページ範囲:P.285 - P.285

あとがき

著者: 坂本泰二

ページ範囲:P.286 - P.286

 去年今年 貫く棒の 如きもの

 高浜虚子の有名な句で,年が改まるとほんの数日前の去年が遠い昔のことのように感じられることを詠んだものです。歳を重ねるにつれ,1年の歩みが早く感じられるようになるといいますが,私にとって去年から今年は,特に早く感じられました。昨年の九州の地震,大学病院の経営問題,新専門医制度など,次から次に新しい問題が起こりその対応に忙殺されたせいでしょう。皆様におかれましては,無事に2018年のお正月を過ごされたと思いますが,今年の旧正月は如月ですから,今月もう一度お正月をお祝いすることができます。ゆっくりと考え,勉強する時間を取りたいものです。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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